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第17話「青のゆらぎ」
刹那、部屋が戦場に変わった。
仁美のナイフが閃き、最前列の護衛の首筋を裂く。返り血を浴びても彼女は一切の表情を変えない。
大樹はとっさに後退するが、すぐ背後に回り込んだ別の男に腕を掴まれる。
「落ち着け。俺たちは敵じゃない」
耳元で低い声がささやく。
「藍影会に来れば、君の復讐はすぐ叶う。女の下で消耗する必要はない」
一瞬、胸の奥で何かがざわつく。
——父親を、自分を地獄に落としたあの男を殺せるかもしれない。
仁美と過ごす日々では、まだそのチャンスすら遠い。
「何考えてんのよ!」
怒声が飛び、目の前に仁美が割り込んだ。
彼女は掴んでいた男の腕を捻り折り、容赦なくナイフを突き立てる。
「……っ!」
大樹の喉が鳴る。肉を裂く音と血の匂いが鼻腔に広がった。
「ボサッとすんな、大樹! やるか、死ぬかよ!」
仁美の瞳は鋭く、大樹を射抜く。
藍影会のリーダー格の男が、戦いの合間に余裕の笑みを浮かべる。
「君が選べ、青い殺気の少年。俺と来るか、その女と心中するか」
仁美の背中が視界を覆う。
血まみれになりながらも、彼女は一歩も引かない。
大樹は拳を握りしめた。
選択肢は二つしかないはずなのに、心はなぜか一つの方向に傾いていた——。




