第15話「殺気の色」
静かな部屋の中、仁美はナイフを手にしながら大樹をじっと見つめていた。
「なあ、なんで俺を弟子にしたんだ? ただの素人じゃないか」
大樹の問いに、仁美はクスリと笑う。
「…殺気の色が似てたからよ」
「殺気の色?」
仁美は軽く指を振り、語り始めた。
「殺気ってのはオーラみたいなもんでね。人間の心の奥底にあるものが色となって見える。あたしはそれが見えるのよ」
大樹は目を丸くしたが、嘘だとは思えなかった。なぜなら、自分の中の澱んだ感情が時折まざまざと感じられたからだ。
「赤は冷酷な奴の殺気。まるで燃える炎みたいに強くて、相手を焼き尽くす。そういうのはたいていプロの殺し屋ね」
仁美は目を細める。
「黄色は快楽で殺す奴。殺すことが目的で、楽しんでるの。そういう奴は厄介だけど、見極めは簡単」
「じゃあ、俺は?」
「青よ」
突然、仁美の声が低くなった。
「青はね、社会への不満や怒りを抱えてる奴の殺気。恨みや憎しみが渦巻いてて、それを相手にぶつける。あんたはそれをまとってた」
大樹は胸が詰まった。
父への複雑な感情、そして自分を取り巻く世界への閉塞感。すべてが青く冷たい波のように心を染めていた。
「だから、あんたには殺し屋の才能がある。才能っていうよりも、むしろ運命かもしれないね」
「運命……か」
仁美はナイフをテーブルに置き、肩をすくめた。
「そういうわけであんたは既にあたしの所有物<モノ>逃げられないってことよ。」
大樹は少し笑みを浮かべた。
殺気の色が分かった今、少しだけ自分の居場所が見えた気がした。




