第14話「パチンコ騒動の余波」
パチンコ店の中央通路で、仁美と店長の睨み合いが続く。
店内の爆音と電子音が、この異様な空気を妙に加速させていた。
仁美が素早く間合いを詰め、店長の腕を掴む。
「ほら、どうしたのよ? 動きが鈍いじゃない」
そのまま軽やかに店長を転がし、床に叩きつけた。
「うっ……!」
店長が呻き声をあげると、周囲の客たちはざわめき始め、スマホを構える者まで現れた。
(や、やばいって! これ絶対ネットに上がるやつだ……!)
大樹は必死で仁美の肩を叩くが、当の本人は上機嫌だ。
「ほら、次はアンタのターンよ。こういうのは流れでいくの」
「いやいやいや! 俺はやらないからな!」
結局、店員たちが数人がかりで店長を助け起こし、「警察を呼びます」と告げた瞬間、仁美は笑って背を向けた。
「ほら、行くわよ。お開きお開き」
「お開きじゃねぇ! あんなの逃げるに決まってるだろ!」
二人は店の裏口から繁華街の雑踏へと紛れ込んだ。
大樹は息を荒げながら仁美を睨む。
「なんであんなことするんだよ! 仕事関係ないだろ!」
「無駄? バカ言わないでよ。ああいうのはナメられたら終わりなの。裏社会でも表社会でもね」
その夜。
とあるバーの奥、裏社会の情報屋が一枚の映像を受け取っていた。
パチンコ店内で暴れる仁美と、その隣にいる若い男——大樹。
「へぇ……仁美がガキを連れて動いてる、っと」
情報屋はニヤリと笑い、データをとある人物へ転送する。
翌朝。
仁美のスマホに一通のメッセージが届いた。
『次の仕事、条件変更。お前と……その坊やにも来てもらう』
画面を見た仁美は、にやりと笑う。
「ね、大樹。裏社会デビュー、本格的にやるわよ」
「……はぁ?! 俺、そんなつもり——」
「つもりもなにも関係ないの♪」
こうして、パチンコ騒動は予想外の方向へと転がり始めた。




