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第15話-一年生のナンバーワンたち

 今日の5時間目は体育だ。体育着に着替えて体育館へ移動した。

 クラスは男子と女子に分かれたが、今日クラスで決まったスポーツ、バスケットボールをすることになった。


 男子は4チームに分かれ、各チーム3人ずつ。

 メンバーは先生によって決められ、今は2番目と3番目のチームが試合をしている。

 もちろん、俺は4番目のチームの一員んだから、俺や他の男子は横で試合を見ていた……


「いけぇ恭司(きょうじ)くん!」

「点を取ってぇ!」

「シュートしてぇ!」


 ――少し苛立ちを感じながら。


 向こうのクラスの女子たちは、男子の試合を見ながら、クラス一のイケメンを応援するように声を張り上げている。

 バスケ選手でもないのに、バスケ選手顔負けのプレーをしている……そのカリスマ性でチームを引っ張り、そして現在彼のチームが得点でリードしている。

 それゆえ、女子の歓声はどんどん上がっていく。


「くそ……またかよ?」

前河まえかわの野郎……」

「まいかいまいかい注目をかけやがって……」


 女子とは正反対に、クラスの男子から嫌われているのは……

 前河恭司。1年生の中でナンバーワンのイケメン……らしい。しらんけど。

 

 今までクラス紹介を気にしていなかった俺でさえ、彼の名前を覚えずにはいられない。 なぜかいうと……

 多くの女子から親しみを込めて呼ばれる彼の下の名前と、多くの男子から悔しいそうに呼ばれる彼の苗字をほぼ毎回……そんな状況で、彼の名前を否が応でも覚えてしまう。


 まあ、わかるけどな。

 男の立場から見ても、悔しいけど、彼は本当にイケメンだ。

 他のイケメンの中でも際立っているように見える彼の外見もあるが……

 彼は頭も良くて、優しくて、そしてただ純粋にいいヤツなんだ。

 イケメンというのは、彼のような男を定義するための言葉だろう。


 男子たちは彼と仲が悪いわけではない。性別や年齢に関係なく、みんな彼と仲良くしているとさえ言える。他人をあまり気にしない俺でもそれがわかる。


 しかし、もちろん……


「パス!」同じチームの男子が前河に向かってパスを出す。

「おお、任せろ」 ボールを受けた前河はドリブルでコートを横切り、相手チームの選手を1人パスする。

「させるから!」しかし、バスケットの近くにいた1人に阻まれ、シュートを打つことができない。


 べたな展開で行くなら、前河は巧みな動きでブロックをものともせずシュートを放ち、何とか点を取る。


 そして……


 そのべたに合わせるかのように、前河はブロックしている相手に向かってドリブルで一歩前に出たフリをした後、代わりに一歩後ろに下がった。これで、もし彼がシュートを打っても、相手がきちんとブロックできない可能性が高くなった。


 そして……


「パス!」

「「「な!?」」」


 イケメンの前河は、そんなべたな展開は無視して、チームのもう一人にパスを出した。相手チームの視線は前河に集中していたため、彼の行動に不意を突かれた。


 これで、ボールを持った選手はブロックされることなく、安心してシュートを打つことができる。


「シュート!」 前河が促すと、味方は落ち着いてシュートを決めた。


 こうして、前河のチームが得点を大きくリードして優勝した。


「「「ヨッシャ!」」」!前河とチームメイトは叫び、ハイタッチを交わした。


「「「きゃぁーー!! 恭司くん!! かっこいいーー!!」」」


 女子の歓声が一斉に大声を出して、入り乱れている。


「「「クソ前河!! この野郎!!」」」


 そして、男子も憎しみ……と尊敬の念を込めて叫んだ。


  まあ、あいつはチームを勝利に導き、チームとしてプレーすることだけに集中していた。 だから、女子がカッコイイとか叫ぶのも、男子が悔しがるのも、すべて正当な反応なのだ。前川は悔しいけど、単純に憎めない本当にイケメンだ。


 そんなことを思いながら、俺はみんなとはまったく違う、ちょっと無関心な気持ちで授業を横目で見ていた。


 まあ、俺には関係ないな。

 だって、俺はあいつとは何の関係もないんだから。

 ……ん? あっ、待てよ……確か――


 その瞬間、俺はあることに気づき、頭痛がしてきたが……


「「「おおお!!」」」


 こちら側の試合が終わると、女子側の試合がヒートアップして注目される。


 俺たち男子の視線は、その魅惑的な姿と生き生きとした技でプレーする冬花春凪 の姿に向けられている。

 俺たちの視線が彼女の方を向くと、女子たちの視線も俺たちの見ている方へと向かった。

 こうして今、聞こえてくるのは女子戦の熱戦の音だけで、クラスのほぼ全員が、誰もが認める1年生No.1の女子に注目している。


「なんというか……さすが冬花だ」


 俺は少し笑い、ただ彼女の姿に魅了されるのを許した。

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