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第12話-風紀委員長と顔を見知る

 頭を撫でるのをやめた後、彼はまっすぐに俺を見て、もうすっかり元気になったようだ。


「あの……冬花さん……その、ありがとうございます」

「あはは、お礼を言われるようなことは何もしてないよ」

「いいえ。私の悩みを聞いてくれただけでなく、私の、この弱さに気づかせてくれて……目標への一歩として克服させてくれたのです。本当に、冬花さんに感謝しています!」

「いやいや……本当に、何もしてないから……え、あ、そうそうだ。もう大丈夫みたいだから、今度こそ風紀委員入ってみよう」

「えー?」


 話が繰り返す前に、俺は話を変えることにした。


「えっと……今からですか?」

「ああ。鉄は熱いうちにって言うだろ。それにどうせ今日やるって決めてたんだし」

「うん……それは……うん」


 渡邊は再び迷いを見せる。しかし、今回は拒絶されることを恐れているからだと気づいた。それなら、俺が手助けできることだ。


「大丈夫。付いて行くから」

「冬花さん……どうして、私のためにここまでしてくれるんですか……」

「あー……それは……その……」


 うん、その理由は絶対に言えない。さあ、考えろおれ!

 いい理由ってなんだ!?


「えっと……だって…………ごめん。本当は、理由なんてないんだ……」

「え?」

「ただ……困ってるお前を見て、カッコつけたかっただけだ……」

「……」


 うん。完全にアウトだな。正直は最善の策って一体だれが言ったんだ……

 「友達になりたいから」にすればよかった。

 痛いが、でも毎回うまくいくんだもんな……

 

 うう……彼を哀れんだ一人だと知ってしまった今、嫌な気分だろうな……


「……あはは、そうですか。ありがとうございます冬花さん、正直に言ってくれて」

「ごめん……お前を見たとき、まず思ったのはこのままほっておけないと……だから、つい……」

「……えへへ、かっこいいですよ冬花さん」

「……え?」


 落ち込んでいるかと思ったら、そうでもなかった。むしろ、すっきりした様子だ。

 彼は立ち上がり、俺に向かって頭を下げる。


「冬花さん、お願いします。私と一緒に風紀委員に来てください!」

「おお! もちろん。最後まで付き合うから」


 勇気を出して、俺たちはついに風紀委員室の前に着く。


「がんばれ、渡邊さん」

「はい、冬花さん!」

「――風紀委員になにか用があるのかい?」

「「え?」」


 さっき聞いた話のデジャヴのように、ノックもしないうちに風紀委員の人がやってきて話しかけてきた。しかし……


「あ、小坂先輩! お疲れ様です!」渡邊は辞儀をして挨拶した。


 今回は、風紀委員長そのものだった。


「ありがとう。君は……そっか。戻ってきたんだな。私の役員どもが君を怖がらせてしまってすまない」

「え? いえー! そんなことないです! 先輩たちは何も悪いことしてません」

「そうか? それを聞いて安心した。ここで立ち話もなんだから、中で話そうか」

「……はい」


 俺たち三人は中に入り、席に着いた。


「私のことは知っているみたいだが、ちゃんと自己紹介しないとな。私は2年の小坂こさか璃咲(りさ)。風紀委員長を務めている。よろしくな」

「はい。1年の渡邊わたなべ友希(ゆき)です! こちらこそよろしくお願いします」

「うーん」


 二人の自己紹介の後、奇妙な沈黙が訪れた。そして、俺は気づいた、彼らが俺を見つめていることに。


「……ん? あ、お構いなく」

「えっと、冬花さん……」

「どう見ても、自己紹介する番だろう、ね1年生くん」

「ええと……NPCは普通、名前はないので……」

「いや。私の知る限り、最近のゲームではほとんどのNPCに名前がついているんだ。名前をつけないと、プレイヤーから手抜きをしているとしか思われないから」

「うう……来た返答が論理的で、はぐらかすすきがない……」

「待っているぞ、冬花さんくん?」


 適当の名前で名乗りたいところだが、すでに渡邊に苗字を言われてしまったからな……仕方がない。


「普通に呼んでください……俺は……同じ1年の冬花とうか宏輝(ひろき)です……渡邊さんの付き添いで来ただけなので、この場にいないものとして扱ってください」

「冬花……宏輝……」

「……」

「? 小坂先輩? 冬花さんにどうかしました?」


 風紀委員長がどこか険しい表情を浮かべながら俺を見ていると、渡邊が聞いた。


「……いや。大したことじゃない。ただ……そう。以前、ある二人の新入生に関して騒ぎがあったのでな」

「うっ……」

「君のことは知っていたが、名前までは聞いてなかった。そうか、冬花宏輝か……すまない、あの時そんなに役に立てなくって」

「え? いや……先輩が謝る必要はないでしょう? ほとんど1年生が絡んできただけだですし……」

「そうか。そう言っていただけて安心した。我々としては、2年生と3年生は何とか対応できたものの……がしかし、さすがに1年生は難しい。この高校に入学したばかりの彼らの気持ちを、最初から冷めさせたくないから」


 おお、これで今まで2年生や3年生があまりちょっかいしてこなかった説明がつく。すでに風紀委員が裏で助けてくれていたんだな……なんてありがたい。


 でも、そっか……2、3年生も悔しいがってたんだ……恐るべし冬花春凪……例外はないのか……


「あ……そうだったのですか……ええ、助けてくれてありがとうございます」

「風紀委員としての務めを果たしただけだ。気にするな」彼女は笑顔で言った。

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