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第一話 社会の偏見なんてクソくらえ

登場人物

真道しんどう 凪沙なぎさ高校2年生

異能力 侍魂

 普段は不真面目で、自堕落な生活を誇りに思う将来ニート。中学時代剣道の全国大会の優勝経験あり。侍とは程遠いが、いざという時その力を発揮する。





 門司もんじ 心吾しんご高校2年生

異能力 ワープゲート

 毎朝遅刻しそうになる凪沙を起こしに行っている小学校からの親友。まるでおかん。

いつも無茶をする凪沙を能力や精神ともに支えている。が、体力がないため運動は大の苦手。





 守護まもご 麗子れいこ高校2年生

異能力 バリア

 凪沙と心吾の高校での友だち。ネイルバッチバチ、学校でも完全メイクの社交型。だが、ものすごくヲタク。戦闘系アニメのイケメンキャラが推し。





場譜ばふ 影二郎えいじろう高校2年生

異能力 バフ

 凪沙と心吾、麗子の高校での友だち。気弱な性格で自己主張がうまくできない。自堕落だけど自分を確立している凪沙に密かに憧れている。




第一話 社会の偏見なんてクソくらえ


ジリリリリーーー!!!!


けたたましいサイレン音が起き抜けの頭にズキズキと響く。引っ越し記念で選んだ目覚まし時計は、最初は止めるのが楽しかったが、今では煩わしく一番聞きたくない音ランキング一位だ。

大きく伸びをしてからそれを止める。予定通りの起床であったが、朝の仕事は時間通り起きるだけじゃない。俺は心底うんざりしながら隣を見やった。

「・・・」

「おい」

白のタオルケットを深くまで被った物体がもぞもぞと動く、起きるかと手を離してみたがポジションが少し変わっただけで起き上がらない。

 これが愛しの彼女であったら、あぁぐっすりねてるなぁ、かわいいなぁとか思ったりしちゃったりするんだろうが。

この中身が、せめて女であれば・・

「おい!起きろや凪沙!」

声を張り上げて言うと、不機嫌そうに唸り声を上げながら赤紫の頭を少しだけ突き出した。

「・・うるっせぇなぁ、起きてる起きてる」

「起き上がれや、毎度毎度俺にアラーム止めさせるのやめろ」

「いいだろぉ別に、それがお前の役目だ。俺を起こすまでがな」

「ちょっとは自分で起きようと思えよ」

「はい、今思った〜、でも思っただけで起きる理由にはなりませーん」

「しばき回すぞ腐れニート」

まぁ、こんなことくらいでこの男が変わってしまえば明日は槍が降るのだろうが。

というわけで俺は寝る、とさっきまでは顔だけだした状態だったのが完全にタオルケットの中に入り込んで動かなくなる。そのだらけっぷりにイラついた俺は無理やりタオルケットを引っ剥がして、思いっきりカーテンを開けてやった。

「うわっ」

「いい加減目ぇ覚ませ、朝飯作るから」

不服そうな顔で俺を見てくる凪沙はさておき、俺こと門司もんじ 心吾しんごは、この男、真道しんどう 凪沙なぎさと訳あって同居している。

 この言動からわかるように、コイツは自堕落で、生粋のめんどくさがり屋なのだ。そのせいか、大人のいないこの家で、まるで俺は母親のようにコイツの世話をすることになっている。

 おかげで、コイツが目玉焼きになにをかけるのかとか、朝は牛乳を飲まないと落ち着かないとか、いかがわしい本の隠し場所とか。知りたくないものまで知ってしまった。

普通の人間ならたったの1週間で音を上げるだろう。

でも、俺がコイツとの同居をやめないのはお互いに身寄りがいないからなのだ。

「いただきます」

「・・・きます」

ほぼ、なにいってっかわかんないだろってぐらい省略された『いただきます』で食事をとる凪沙をちらりと見てから、ご飯をかきこむ。

低血圧で準備も動作も遅い凪沙のために、あらかじめ準備しておいた制服や、荷物をちゃぶ台の横に置いておいた。もともと開いていない瞼は目の半分を占めていて、今にも眠りそうなのをご飯を口に入れることでどうにか堪えているらしい。そして俺は再度思う、これが女であれば、愛しの彼女であればと。けれど、残念なことに相手は、不真面目で自堕落で可愛げもない騒がしいクソガキ。

虚しくなってわざと聞こえるようにため息をついた。 

「あぁ?なんだよ」

「いや、早く食べろよ、それ。また遅刻すんぞ」

「わあっとるわ、飯の食べるスピードくらい自由だろうが、お前は俺の母親か」

「お前のせいで母親代理だわ」

あぁもう、ほんとに世話の焼けるクソガキだ。

 二度目のため息に今度は睨んでくるのをサラリとかわして、洗濯物を洗濯機から取り出す。全部を干し終わったくらいで凪沙が食器を片付けるのが見えた。

「着替えたら行くからな」

「へ〜い」

一応急かすようなことを言ってみたが、準備スピードは亀の歩みほど。 そんな姿にため息をつきながら俺は荷物を取って外に出た。



足元の砂利を踏みしめ、時折吹く風が庭木をサラサラと揺らす。視界の上では今日は快晴と予報された雲一つ無い空が広がっていた。

今日も良い一日になりそうだ。

ガラガラ。

「おい、そこで止まるな、ジャマ」

「お前のこと待っててやったんだよ、つかまた遅刻寸前じゃねぇか」

当たり前のように鍵を閉めない凪沙を睨みつけながら、建て付けの悪い引き戸に鍵を掛ける。

「え〜、また朝から走んのかよ〜」

「てめぇがまったりしてっからこうなんだろうが」

「別にいいじゃねぇか、1限目現国の山田だろ?軽く許してくれるって」

「時間割変更で今日は古典の鬼松だとよ」

「はぁ?!聞いてねぇし!ガチ最悪」

「だから急げって言ったんだ」

「もっと感情込めろよ!」

「これがデフォルトだ!お前が察しろよ!」

「できるかバカ!俺は超能力者じゃねぇ!」

青い葉っぱが茂る夏の街道を2人の男子高校生が時折喧嘩をしながら走り抜ける。

至って普通の日常、しかし。


この国は夜になると姿を変えるのである。


これは夜の闇に隠れて、人の想いの集合体《〈怨嗟〉》と戦う異能力者たちの物語。


奪われたものを取り返す、ただそのために。



暗黒世界でまた会いましょう。





キーンコーンカーンコーン。

「よぉうし、ギリギリセーフ」

「どこがだよ、思いっきり遅刻だわお前のせいで」

1限の始まりのチャイム、それとほぼ同時に扉を開けたために、古典の鬼松は完全に顔が真っ赤だ。

「あんたたち、これで何回目?」

「え、えっと・・」

「んなこといちいち数えてるわけねぇだろ」

「凪沙!」

「真道くん、君が真面目でいい子の門司くんの足を引っ張ってるの、おかげで去年まで無遅刻無欠席が今ではズタボロよ」

「へぇ、可哀想っすね」

「なんですって!」

「おい!・・すんません先生、以後気をつけるんで」

「・・ふふ、門司くんはいいのよ、悪いのは真道くんなんだから」

「・・・」

何かと凪沙に当たりの強いこの女こそ、古典の鬼教師、鬼松由良おにまつゆら。生徒の中でも怒らせてはいけない、嫌われている教師のトップに躍り出るほどの理不尽横暴な先生である。

思春期の奴らが集まる高校とはいえ、愚痴や教師の悪口なんて絶えないが、この鬼松だけは2年に配属された当初から、悪口春の愚痴祭りであった。特に朝は機嫌が悪く、質問に答えられなかった生徒には必要以上に怒鳴りつける。

 気に入っている生徒には良い成績を、気に入らない生徒には悪い成績をつけるらしい。まだ、通知表は返されていないから定かではないが。

特に凪沙は、この年になって遅刻や欠席が増えたせいで授業が遅れる毎に、幼なじみの俺と比べてみんなの前で叱り倒す。勝手にその土俵に出されるのも気に食わないし、凪沙を他の生徒とは全く別のものとして扱うのも俺が鬼松を嫌いな理由であった。

凪沙は変わらず飄々としているものの、こんな状況がもう半年も続いている。

現在も何ら気にしてない態度で席に座る凪沙に見当違いな怒りを必死に抑えながら席に座った。



「はい、今日はここまで」

「気をつけ、礼!」

「「ありがとうございました」」

1限目の修羅場の後、長い授業を経てようやく昼休みである。凪沙は、2限目の時間を全て使って怒られたらしいが、特に気にすることなく俺を屋上へと誘った。

「よーっす、問題児ども」

「ゲッ、麗子」

「あんたも飽きないねぇ、あたしでも鬼先おにせんには楯突かんわ」

腰まである金髪ロングをなびかせながら、ケタケタ笑うギャル。守護まもご 麗子れいこ、隣のクラスで1年の時クラスが一緒になったノリの良いギャルだ、クラスでは何かと人気で気遣いもできるという女の鏡でもある。

「見てたのかよ、助けろや生徒会長〜」

「副会長だわ、そんな権利ないっての」

「チッ、使えねぇな」

「あんたの空っぽな頭より使える自信はあるわ!」

「んだとぉ!」

麗子と凪沙の喧嘩は日常茶飯事、お互い声だけは無駄にでかいのでそれなりに目立つのだが、1年も続いた今ではほぼスルーだ。驚くのは新一年くらい。

ガチャリ。

「あ〜、腹減った」

薄暗い階段を上りきって、扉を開ければ一面に住宅街が広がる視界と上の方に広がる青い空。

 一見してここからの景色は街の住人ならば絶景だろう。


 だが、そんなありふれた景色に紫色のモヤが垂らされている。太陽は紫色の光を発し、不気味に世界を照らしていた。




これが、俺たちが見えている空だ。




異能力者のみが世界の現実を見ることができる。

 

 人の憎しみ、怒り、悲しみ、苦しみ。それらはいずれ膨張し、形をなす。それがあの紫色のモヤだ。

 モヤは夜になると一つの場所に集まり怪獣〈怨嗟〉へと進化する。

 そんな奴らを駆逐し、異能力を持たない街の人々を守るのが俺たち、〈5ギルドHOPE〉所属の戦闘チーム『ACE』だ。

戦闘チームは各地に派遣されており、日本列島に位置する7つの塔のうちの5番目に所属している。番数が上がるごとに所属が変わり、戦闘員に渡されるコードの数が少なくなるほど〈怨嗟〉の激戦区に配属されるのだ。しかし、その多くは強異能力者たちのみ。

 俺達みたいなどこにでもいるような異能力者は、こんな小さな町で、〈怨嗟〉を狩ることが性に合っている。望んで昇級しようとは大して思わない。

まぁ、凪沙はどうなのかは知らないが。

俺たちが屋上まで来たのもこの空の状態を見て、今夜の被害を予測するためである。

モヤが地面から立ち上る本数が多ければ多いほど〈怨嗟〉は現れる。今日見える限り、空に染み込んだものを除いて3本、最低でも3体は今夜のターゲットだ。

「うん、どれも焚き火の煙程度の中級サイズだ、問題ない。今日は早く寝れるぞ」

「ほんと?良かった、今日はゆっくり湯船に浸かれそう」

「眠れるっつったって俺たちの目には夜も朝も変わらねえだろ」

「やめろ言うなそれを、虚しくなる」

「お前も同じこと思ってんじゃん」

ヘラヘラと凪沙が笑いながら口に卵焼きを突っ込む。うめぇと呑気に言っているコイツが『ACE』のリーダーとは到底認めたくない。

「あんたがそういう性格だから、いつまで経っても4人集まらないのよ、派遣された戦闘員全員2日も持たなかったわ」

「実力も覚悟も持ってねぇやつに務まるかよ、あれは正当な判断だ」

「何が正当だ、貴重な回復能力者逃しやがって、どうしてくれんだ」

「知らん、価値観が合わない奴と仕事しても面白くねぇしな」

そういう問題じゃないんだが・・

昔っからこういう性格だが、最近になって人への偏見が強くなっている気がする。

「ていうかさ、凪沙のド偏見ムーブで思い出したんだけど」

「偏見じゃなくて事実だし、で、なんだよ?」

「ギルドからもらった戦闘員手当、まだ鬼先に受理されないんだって思って」

「なんでも、うちの担任や校長は認めてるらしいが、鬼松先生は『あんなだらしなくて如何にも嘘で塗り固められたマせた子どもが戦闘員なんて認められません!ハンコなんて絶対に押しませんから!』と毎度喚き散らしているらしい」

「うわぁ、あいつこそ偏見ムーブカマしてんだろ」

ダルぅと腕を投げ出して大の字に寝っ転がった。

「〈怨嗟〉の恐ろしさを知らねぇパンピーが、俺たちの苦労なんか分かるはずがねぇんだよ」

凪沙は右手を目元に乗せて大きく息を吐く、その息には日頃の不平不満、そして少しばかりの疲れが混じったもの。

 現在、絶賛戦闘員もとい異能力者不足のこの日本で、〈怨嗟〉を見ることのできない一般人を守ることは至難の業であり、どれだけ有能な人間が戦場に出ても〈怨嗟〉は増え続けるばかり。それはひとえに、人が持つマイナス感情が増えたことが原因だ。

この国で一番多い死因は自殺と、殺害。

自ら死を選ぶか、選ばされるかの二択、どちらにしろ〈怨嗟〉はそのマイナス感情の大きさに則って生まれる。国がどうにか政策を考えない限りしわ寄せはこちらに来るのだ。

ちっぽけな街だからこそ、〈怨嗟〉は増えるくせに戦闘員チームは一人として増えない。なんならこのわがままお嬢様(=凪沙)のせいで俺たちのチームはいつも一人足りない、典型的な負の連鎖だ。

そんな俺達への手当ぐらいて安く受け入れてくれたっていいじゃないか。

口には出さないが、俺だって不平不満は溜まる。

 なんでか、あの教師に気に入られているらしい俺は、どれだけ遅刻しようが、凪沙だけに反省文を書かせる。

 不公平と偏見だけでできたクソババアなのだ。

「まぁでも、理解者は増えてきている。実際馬鹿な連中が〈怨嗟〉の存在を否定して襲われた事件があったおかげで、その存在が周知され始めたからな」

「その処理をしたのは私たち異能力者だけどね」

「・・俺たちを否定してくる奴らは時代の波においてかれた奴らだけだよ」

「それが近くにいるのが問題なんだろうが」

何を言っても屁理屈ばっかりが返ってくる、先程凪沙のことを肯定するような発言をした俺だがうざったい。

「気休めはいらねぇ、俺の道を邪魔する奴らは助けてやらねぇ、俺はそう決めてんだ」

くすんだ空を見上げたままそう宣言する凪沙、そんなあいつを麗子は頬杖をつきながら俺と交互に見て、ため息をついた。

「まぁ、うちのチームのリーダーは凪沙なんだし、自由にさせましょ、あ、beREALきた」

「そーだそーだ、俺がリーダーで王者なのだぁ〜」

「何が王だ、よくてじゃじゃ馬娘だろ。お前が異能力者の王なんざ死んでもごめんだわ」

「性別まで変えんなバカ。つか、俺のどこがじゃじゃ馬なんだよ」

「逆にわからねぇのか、リーダーだからって自惚れんなアホ」

「うっせお前がアホ」

「黙れクソガキニート、土に還れ」

「言いすぎじゃね?!」



バタンッッ!!



「よ・・ようやく見つけたっ・・・」



屋上の扉が突然開け放たれ、一斉にそちらを向くと、話題の鬼教師、鬼松先生が息を切らしながらこちらを睨みつけていた。

「真道さん・・、よくも、よくもこの私から逃げましたね・・」

「・・・凪沙、お前何した」

「いや・・反省文は放課後やるって言ってこっちに来ただけ・・」

「それが許されないのよ!あなた、遅刻したことをあれほど叱ったというのに、反省の色が未だ見えないようね!」

まぁ、凪沙に50分間説教を垂らしたとて、5分の会話ですら音を上げるアイツのことだから、耳に入ってすぐに外に出て内容など一ミリも覚えてないだろうに。

「だぁかぁらぁ!さっきから言ってんだろ!俺は異能力者で戦闘員なの!昨日もせっせと市民の皆々様のために働いたから遅れたんだって!」

「まだそんな妄想話をするつもり?あなたのくだらない世界観にはもう愛想がつきました!」

鬼松はピンヒールを床にたたきつけながら、ビシッと凪沙を指差す。

「それにあなた、意味のわからない手当てなるものを先生に渡してましたよね?あれは賄賂ですか?ずるして遅刻を正当化しようとするなんて、どこまでも卑しい子」

「はぁ?あれはれっきとした手当書だよ、校長すら認めてる戦闘員手当をなんで一端の教師のお前が認めねぇわけ?」

「当たり前でしょう!あなたみたいな人が、国家公認の戦闘員だなんて認めないわ!」

「まぁ、たしかに。凪沙は戦闘員なんて柄じゃないわよねぇ」

「おい麗子、口はさむな。余計なことがまた変にこじれて・・」

「第一、〈怨嗟〉なんてものがこんな小さな町にいるわけがないじゃない!あなたが憧れで作り出した幻覚よ全部!」

「じゃあなんのためにこの町の教師は暗黒帰宅を義務付けられたんですかねぇ?」

「ふん!労基が制度を改正したとかなんとかでしょ?この話とは関係ないわ!」

違う。断じて違う。

暗黒帰宅義務は、〈怨嗟〉に襲われる大人を減らすために作られた国きっての防衛網だ。どれだけ小さな町であろうと、関係なく現れるために、国からの指示で町も対応しているのだ。日本人の労働時間において暗くなる前の帰宅は早すぎるが、そうでもしなければ、〈怨嗟〉に襲われ、骨すら残らないだろう。しかし、その法律が制定されて早2年、早急すぎる法律制定により、〈怨嗟〉の脅威というものを一般市民は知らないのである。

そう、鬼松のように。戦闘員を馬鹿にする輩は少なくない。

「はっ、意味わかんね。先生は朝のニュースをみないほど忙しいのかよ、今日も今日とてバカどもがその存在を死を持って表してくれたじゃねぇか」

「あら?ネット社会において、メディア全てを信じるなんて時代遅れにも程があるわ」

それはこっちのセリフだ。何も知らないくせに。

そんな愚痴を胸に納めながら、二人が言い合うさまを傍観する。

ふと、鬼松が俺の方を向いてフフッと笑った。

その笑顔があまりにも庇護的なもので、さらに胸の苛立ちが増していく。

「とにかく、あなたに反省した様子は見えないわ、今回は妥協して反省文は放課後にしてあげますが、そのかわり、3枚から5枚に追加です」

「なっ?!意味わかんね、生徒指導担当じゃねぇくせに決めんじゃねぇよ!」

「問答無用よ!あなたみたいな人はこれぐらい教育してあげないと、感謝しなさい!社会に出たらこんなことないんだからね!」

でしょうね、あんたみたいな勘違いのわがまま社会人はこの社会機構の中で生きれないと思うし。今でもなんで教員ができてるのかがわからない。

言いたいことは言えたのか、勝ち誇ったような顔をして鬼松は屋上を出ていった。

「クソが!」

苛つく・・とその場に座り込むと、ガシガシと頭をかく。

心底ウザったくて仕方がないんだろう。あんな大人の横暴論を振りかざされて、こちとら命がけで必死に戦っているというのに、その苦労を否定された。ましてはただの妄想だと馬鹿にされる。これが社会の現実だというのはわかっていても、いざ直面してしまうとどうにも納得できない。

「いやぁ、あれはないわ鬼先、言ってることがわがままにしか聞こえないんですけど」

「だな」

なんでこんなやつに俺は気に入られて、贔屓されてるんだろうか。凪沙は、気持ちの悪い言い分でまくし立てられているのに、俺だけ守られているようで。

それでも、凪沙は俺に対して文句の一つも言わない。

俺が悪くないことは分かりきっているから。

だから毎回のように謝っても、しつこいと一蹴されていつものように笑うのだ。

鬼松みたいな、社会の偏見の権化みたいなやつは本当に嫌いだ。

俺の幼馴染を無遠慮に傷つけるから。

「おい、凪沙」

「わかっとるわ、気にしてないし」

「そうじゃなくてな」

そろそろ、この春から始まった理不尽を解決したい。

「ギルドに言おう、手当は戦闘員にとって正当な権利だろう?それを侵害されたんなら、抗議できるはずだ」

「・・・」

「ギルドも国家公認の専門機関になって全国に司令塔が完備された、それも大々的に発表されたし、自衛隊との合同体制も築けてる、アイツが勝手に認めてないだけだ」

「心吾、あんた・・」

「・・・、第一、俺たちは学生。なのに労働してる時点でおかしいんだ、これくらい認めてくれても」

「無駄だろ」

「はぁ?」

俺の話を聞く中でだんだんと顔をうずめていった凪沙は腕の間から気だるげにこちらを見て言った。

「あの女が、見知らぬ人間、しかも俺が連れてきたギルド職員を信じると思ってんのかよ」

「それは・・」

「でもさぁ、さすがにあれはないっしょ、悔しくないの?」

「知るか、苛つくけどほっときゃどうせ飽きるだろ」

「半年も続いてんだぞ!そんな執念深いやつが今になって辞めると思ってるのか!」

「そうカッカすんなよ、ガキじゃねぇんだし」

「あのなぁ!」

「とにかく、気にすんな、たかが反省文、帰宅部の俺からすれば、ちょっと帰るのが遅くなるだけだっての」

お前は悪くない。

そう言って肩を叩いた凪沙は振り返ることなく、その場をあとにした。

「あ〜あ、行っちゃった」

「チッ、もういい。あんなやつ知るか」

イライラする、なんでアイツはこうなんだ。いつもいつも人のことばっかり・・

俺はどっかりと屋上に座り込むと、無言で弁当をかき込んで教室に戻った。

その途中凪沙と目が合ったが、特に会話はせずに放課後を迎えた。





カチ、カチ、カチ。

閉静とした教室の中で時計の針の音だけが響く。窓から差し込んでいた夕日は空の下側まで沈み、光はもう届かない。教室の中心で凪沙は1人、原稿用紙の4枚目まで書き終えた。

今日は短縮の時間割で6限であったにもかかわらず、誰もいない教室で黙々と原稿用紙に向かう姿は誰もが目を疑うだろう。

時刻は6時44分、ちょうどよく、空は暁に染まっている、いい時間だ。

「うし、行くかぁ」

鬼松からは5枚目の半分以上でなければ認めないと言われたが、凪沙にはやることができた。というより、元よりあった仕事を取り掛かる時間だ。

最初真面目に書いていたが途中から飽きて一人しりとりをしていた原稿用紙を教卓において、教室を出る。

梅雨終わりの6月の空、街灯いらずの通学路を通っていた凪沙は、沈みゆく紫色の太陽へと思いを馳せた。




「全く、なんなのあの子は」

凪沙が教室を出るおおよそ30分ほど前、鬼松は何時までも真面目な文を出さない凪沙に呆れ返って「書けるまで教室から出るな!」と叱責した後、日没までの時間を考え帰ることにした。というより、職員室を早々に閉めると言い出した教頭により帰らざる終えなかった。

お気に入りのバックから愛車の鍵を取り出しエンジンをかける。特に興味もないバラエティーの音が聞こえてようやく仕事が終わったと自覚できた。教員なるものはどうも疲れる、ああいう迷惑な生徒がいればもっとだ。

まだまだ若いからあんな事が出来るのかしら。私が若い頃はあんなのはいなかったのに。

「かわいそうな子」

きっと子の親もそうなのよ、ろくな生き方してないんだわ。だからあんなにひねくれてるのね、ますます苛ついてきた。

でも、今日は金曜日。お酒を飲めるチートデイよ!早くお店に行って買って帰らないと。

鬼松は上機嫌に車を走らせ、目当てのお店に入った後、数本の缶ビールと日本酒を一升買って帰路を急いだ。


「すみませーん」

ふと最近気づいた家への近道を見つけ、何気なく走っていると赤い棒ランプを横にふる警察官が鬼松の車を止めた。

「なんです?」

「すみませんねぇ、こっから先通行止めなんです、怨嗟が確認されたとギルドから要請が入りまして」

「はぁ?怨嗟?」

「はい、お手数おかけしますがこちらの道で大通りまで・・」

「ふん!今日の朝までこんなのなかったわ、どうせインチキなんでしょ?」

「はい?」

今までの人はおとなしく言うことを聞いてきたのだろう、しかしそうはいかない、せっかく冷えてるお酒がぬるくなってしまう。

あの生徒と同じく、頭のおかしいやつに絡まれたと鬼松は収まっていたはずの怒りが再燃した。

「あのですね、この道でモヤが発見されたんです、ギルドからの正式要請なんですよ?」

「そもそもギルドって何よ、はぁこういう日に限ってなんでこんな頭のおかしい人と絡んじゃうのかしら私」

呆れたように息を吐く鬼松に、警備員は困ったような笑顔でもう一度注意を促す。

「ギルドとは国に認められた〈怨嗟〉対策連盟です、ここに所属する戦闘員からの命でここを封鎖させてもらっているんですよ、ご理解ください」

「そんなの知ったこっちゃないわ、ほらどいてよ!」

「うわぁ!?」

鬼松はしつこく迫ってくる警備員を威嚇するように車を発進させ、隙を見計らって走り去った。

「あーあ、こりゃまた増えるなぁ」

「先輩!俺結構真面目に説得しましたよね!」

「したした、あのおばさんが悪いんだよ」

「社会の偏見、ですねぇ」

「だな」


そんな警備員の苦労などつゆ知らず、鬼松はようやく邪魔者がいなくなったことにせいせいしていた。

あと5分もすれば家に着く、お酒はどれもぬるくなってないだろうから早く開けて飲みたい。

切実な想いとは裏腹に全ての信号に引っかかっていずれも時間は刻一刻と過ぎていく。

次こそは、!

法定速度を少しオーバーしながら信号に近づくも前の車と同じく止まってしまった。


前に車がいる、なぁんだやっぱりあの人たち警察の中の狂信者だったのね。良かった、やっぱり〈怨嗟〉なんていないのよ。

頭の片隅でもたげていた少しの不安が解消されて、心置きなく酒が飲めると思った矢先。

信号が青になっても、前の車は動かない。鬼松は不審に思って何度もクラクションを鳴らしてみるものの動く気配はない。

なんなのよ、もう!今日は厄日なの?!

鬼松の苛立ちは今までの積み重ねで一気に爆発した。文句言ってやる!

怒り任せに扉を閉めて前の青い車の窓を強めにノックする。

「あの!すみません!青になってるんですけど?!」

「・・・」

しかし、返事はない。さっきから変な匂いもするし、夜だというのに街灯はついてないのと同然なほどあたりは暗い。

どうして?前はこんなに暗くなかったのに。

現在は初夏、梅雨の時期に入ろうとする季節、夜になれば蒸し暑くなってくるのに、今は手先が震えるほど寒い。


その不気味さにようやく気づいたとき、鬼松の視界は付近を広くとらえた。


変な匂いはだんだんと焦げ臭く、ガソリンのような匂いで、近くには横転したパトカーが。


街灯の光が届かないのは自分の上付近を何かが覆っているから。


鬼松はゆっくりと上を向く。




黒い化け物が、ニヤリと笑ってこちらを見ていた。





「イヤァァァッ!!!」



甲高い悲鳴を聞いてもなお、化け物はにやりと笑ったまま鬼松の方へ手を伸ばしてきて、後退りしながら必死に逃げようとした。


しかし、明らかに走ることには適さないピンヒールで来たのが不運だった。

図ったようにヒールが折れ、コンクリートの地面に倒れ込んでしまった。

ハッとなって後ろを向く、化け物は転んだ鬼松を嘲笑うように声を上げながらこちらに迫る。

「イヤッ、来ないで、!」

「オマエ、ウマソウ、ウマソウ・・・」

お願い、誰か


助けてっ!









「みーつーけた」

 

ドコォォォン!!


突如、隣を通った声と風が何かとぶつかった。

ゆっくりと目を開ける。

 目の前には我が校の緑のブレザーが見える。

「探しましたよ、鬼松せーんせ♪」

「し、真道くん!」

「まさか、先生がバカどもの二の舞になりそうになるとは、メディアは信じるもんですねぇ?」

ニヤリと腹のたつしたり顔が、今はものすごくかっこよく見えた。

「どうして、、というか探してたって、、」

「そのことはまぁ、追々に」

凪沙はライダーキックを食らわせた化け物、〈怨嗟〉を再度見る。

車と一体化したその体はウゴウゴと揺らめき、蹴られて凹んだ部分を真っ黒な手で押さえながら睨みつけてきた。

「パトカーは2台、4人は喰ったか、この様子だとまだ食ってそうだけど」

凪沙は、ハァとため息をつき、スクールバッグの中からスマホを取り出すと鬼松の方にバックを放り投げた。

「痛っ!」

「それ、持っといてください、邪魔なんで」

「だとしても渡し方があるでしょう?!」

「化け物を目の前に、ものを丁寧に扱う時点でバカっしょ」

あっけらかんと笑う凪沙は手首をひらひらと振りながら化け物の前へと近づく。

手に携えたスマホを顔の前で構えた。


「コード 057 真道凪沙 MODE Exchange」


そう唱えるとともに、スマホの画面をタップする。

その瞬間、凪沙に赤い光がまとった。

真っ赤な光は炎のように大きく、風のようにあたりを渦巻く。

一気に燃え上がった光は音を立てて弾けた。


凪沙を包みこんだはずのその中から、見覚えのない青年が現れた。


黒のパンツに、黒のタートルネックのノースリーブ、ピック付きのチョーカー。そして、肩を出して着ている赤い線の入った黒いパーカー。

赤紫の長髪がゆらゆらと揺れる。


「チーム 『ACE』リーダー 刹那せつな、見参」


先ほどとは打って変わったその容姿、しかし発する声は未だ幼い。目の前の人物が凪沙であることはわかるのに、鬼松は驚きを隠しきれなかった。

『リーダー刹那、Exchangeを確認。シンゴからの出陣連絡から10分ほど遅れています、回線を繋ぎますか?』

「構わねぇアイツなら俺を見つけるのに2分もくわねぇさ」

『承知しました、戦闘を開始してください』

機械的な音声から、凪沙は指を鳴らし、刀を出現させる。〈怨嗟〉に向かってにやりと笑うと、黒いブーツを履いた足に力を込めて跳躍した。

「オマエ、オレノコト、、ナグッタ、、ユルサナイ、、オレモ、、、

オマエノコト、ナグル!!」

〈怨嗟〉の細い腕は中心で渦を巻き、屈強な剛腕に様変わる。それは一直線に凪沙へと放たれた。

「危ない!!」

とっさに鬼松は叫ぶ。

しかし、凪沙は眼前に迫った拳を捉えると、ゆっくりと刀を引き抜く。

「 流派入刀りゅうはにゅうとう 」


凪沙の周りに、バチバチと火花が散る。


「『一の太刀ひとつのたち』」


肘を前に突き出し、秒速で刀を振るう。

視界を覆い隠すほどの黒い拳はその一太刀で黒い塵へと化した。


「グギャァァァァ!!!」


腕を失い、もがき苦しむ〈怨嗟〉に凪沙は追い討ちをかける。

前方へと進んだ余韻を弾みに変え、膨らんだ腹の部分へと十字に切り刻んだ。

「ーーっ!!」

一瞬、鬼松の視界で繰り広げられた抜刀劇はその一言に尽きる。

声にならない悲鳴をあげて、〈怨嗟〉は溶けるように地に伏した。

紫色のモヤを出しながら消えていく〈怨嗟〉の中から複数の腕が出てきた。

「ぷっは!!ハァ、、ハァ、、」

「大丈夫すか?」

出てきたのは凪沙の予想通り、警察の制服を着た警察官4人、全員が丸呑みされていた。

「あ、あぁ、助かったよ」

「生まれて直ぐに人を食えなかったんでしょう、噛み砕くような知能もなかったみたいですし」

「不幸中の幸いか、ありがとう。流石は〈ギルド戦士〉だ」

「その呼び方は恥ずいんでやめてもらって」

「ギルド、戦士?」

「ん?あぁ、先生はメディアなんて信じないから何も知らないんでしたね」

厭味ったらしく言う凪沙に顔をしかめながら、言葉の続きを待つ。

「ギルド戦士っていうのは、こうやって〈怨嗟〉を狩る人達のことっすよ、俺たちが言う戦闘員ってやつです、戦闘員は全員異能力保持者で、俺自身もさっきは能力を使って〈怨嗟〉と戦ってたんす、能力因子がこもった攻撃じゃないと、すぐに修復されちゃうんで」

「な、なるほど」

「そして、戦闘員は基本、チームで行動をする。俺や心吾、麗子みたいにな」

「え?!門司くんもなの?!」

「あったりまえでしょうよ、あいつの遅刻やら公欠やらが増えたのもこれのせいだし。まぁ、能力が芽生えたのは今年の春からだけど」

「余計な情報まで言うな」

凪沙の真横から拳がゴツンと落ちてくる。ネオン系の水色の光が円を作り、そこから手が伸びていた。

円は手がどんどん出てくるにつれて、人形のサイズとなり、心吾と麗子が顔を出した。

「いってぇ!!」

「自業自得だ。ったく勝手な行動ばっかしやがって、誰がカバーすると思ってんだよ」

「しかも、司令局員にまで迷惑かけちゃって、どうせ到着通知もオフにしてるだろうって、わざわざ教えてくれたのよ。心吾が怒るのも無理ないわよ」

「うるっせ!〈怨嗟〉は狩ったんだ、それでいいだろ!」

「だから行動する前に一報をだな・・」

「人命救助の途中でどうやって連絡するってんだよ」

と、鬼松の方を指さして俺に言う。

たしかに、鬼松は怪我をしてないし、なんなら凪沙のスクールバッグを抱きしめて、しおらしく立っているくらいだ。

「俺は、襲われてる鬼松先生を守るために戦ったんだ、人の命は最優先事項、それがギルドでの決まりだろ」

「あんた、そんなに鬼先のことリスペクトしてないでしょ」

「させてくれなかったの間違いだよ」

鼻高々と語る凪沙に俺と麗子はため息をつく。

「怪我はありませんか、鬼松先生」

「ええ、大丈夫よ。門司くん」

どうやら、お得意の『いい子ね』が出ないくらい怖かったらしい。顔は俯いたままこちらに目を合わせようとしなかった。

一応病院に、と口を開こうとしたとき。

「ごめんなさい!!」

鬼松は勢いよく頭を下げた。

くるくるに巻かれた髪を揺らしながらさらに続ける。

「あなたたちのこと、わかってなかった。いや、分かろうとすらしてなかった、こんな危険なことを、まだ子供なあなたたちがしていただなんて」

「なのに、私は身勝手な理由であなたたちを苦しめてしまった。特に真道くんには強く当たっていたと思うわ、ほんとにごめんなさい」

俺は唖然とした。

あの鬼松が、あの偏見の権化、理不尽の塊、不平等大明神の、あの鬼松が。

自らの過ちを謝ってきた、だと、、?!

サッと凪沙の方を向けば、この状況を嬉々としているのかニヤッと笑った。

「じゃあ、今まで俺の単位をわざわざギリギリにしてるのも、戦闘員手当てを認めないのもやめてくれますよね?」

そんなことまでしてたのかこのおばさん。

「もちろんよ、命を助けられたんだから、それくらいするわ」

「今までの行動も反省させてちょうだい」

そして、救急車が到着した後に、鬼松はまた頭を下げると、救命士の手を借りながら乗り込んで去っていった。



「凪沙」

「なんだよ」

「この事を予測して動いたのか?」

「まぁな」

先ほど倒したのがちょうど最後の〈怨嗟〉だったために、ギルドへ報告した後俺たちは帰路についていた。

「でも、流石にやりすぎだったんじゃない?かなり怖がってたわよ、鬼先」

「別にいいじゃねぇか、わざわざ時間をかけて反省文を書いたり、あいつの金曜日のルーティーンまで調べ上げた俺の努力の結晶だよ」

コイツ、相当根に持ってたんだな。

最強のめんどくさがり屋の凪沙が、計画的に物事を進めるなんて1年にあるかないかだ。たった半年しか経ってない今、それを見れるとはある意味のラッキーだ。

多分、あの道を鬼松が通ることまで凪沙は把握済みなんだろう。検問の警備員にも連絡を入れていたのか、一人走っていった鬼松のことをおいかけなかった、と合流する前に連絡をもらった。

「正直スッキリしたのは事実だが、万が一間に合わなかったらどうするつもりだったんだ?」

「そんときはそん時だ、ああいうのは痛い目を見ねぇとわからねぇの。だからわからせてやった、ただそんだけだ、それに・・」

「心吾が、俺のことを助けようとしてくれたから。応えなきゃダメだろ?」

「っ!」

お前、そんなコト思ってたのか。

俺の気持ちは、こいつにちゃんと届いていた。あのとき、俺の心配を振り切ったのは、自分でこの事態を解決するため。

「ありがとな、心吾」

「・・まぁな」

「え?え??心吾もしかして照れてるぅ?」

「うっそ、心吾アンタ照れてんの?」

「うっせ!こっち見んな」

こんな変化球が来るなんて、思ってもみないだろ普通。

ほんのり火照った顔を妬ましく思いながら足早に歩く俺に二人は楽しそうに笑いながら続いた。




「ま、ほんとはただの仕返しだけど」



「「は??」」



その後、凪沙に制裁の一手が落ちたことは言うまでもない。

この小説をお選びくださりありがとうございます!

初投稿のお話は、無気力でめんどくさがり屋な凪沙くんのハチャメチャ日常みたいなのをイメージして描きました!

これからもこのシリーズを続けていきたいと思ってますので、よろしくお願いします!!

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