狼さんは王子さまを守りたい
(サティは、私が守るっ!)
レアンは、サイバルを睨みつけた。
鍛錬に励んではいるものの、レアンの体は思いのほか筋肉が付きにくく、現役騎士団長であるサイバルの腕には到底かなわない。
レアンは狼獣人ではあるものの王家の血筋だ。
その獣の血は、祖国において戦士ではなく愛玩に向いているとも言われている。
要は見た目は良いが、獣人らしい力には欠けているのだ。
人族の鍛え上げられた肉体に、何の鍛錬もなしに挑むほどの力はない。
それでも、レアンはサイバルに負け続けるわけにはいかないのだ。
(サティよりもゴツくて可愛くなくなっちゃったけど、その分、私は強くなるっ)
レアンは王子の婚約者だ。
だからといって、その地位にいつまでも居られるとは限らない。
狼獣人であるレアンは、政略結婚のためにサティの婚約者となっているのだ。
(皆に認められて、彼にも愛されて側に居られるのなら幸せだけど……)
獣人排除を目論む勢力の動きが活発になってきた現在、その地位は不安定で危うい。
それに、可愛くなくなってしまったレアンは、自分に自信が持てない。
サティが子犬のようなレアンの容姿を気に入っていたのは知っている。
カワイイ、カワイイ、と、何度も撫でて貰った。
しかし、成長と共に可愛さは失われてしまった。
締まった体は、サティよりも男らしい。
これでは、もう二度とカワイイとは言って貰えないだろう。
(可愛くない私を、サティが愛すのは難しいだろう)
だからって、離れられない。
(愛してくれ、と無理に迫って嫌われるなんて、もっと嫌だ)
レアンにはサティの側に居られない人生など考えられない。
それだけレアンにとってサティという存在は大きいのだ。
(婚約を破棄されるのを待つより、辞退して騎士団へ入団しサティを守るんだ。そのためには、強くならなくちゃ)
婚約者としてダメなら、せめて護衛騎士として側に居たい。
レアンは本気だ。
「ほらほら、狼ちゃん。それで終わりか?」
「……」
サイバルはニヤニヤしながらレアンを煽った。
(大好きなサティの側を離れられないのだから……私は強くなるっ)
「オリャァァァァッ」
気合の声と共にレアンはサイバルに挑んだ。