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呪われた将軍閣下は目覚める(ブルマ)

作者: さや

女性向けではない事だけは確かです。


「将軍閣下…!!」


度重なる魔族との戦闘の末、ついに私は魔王を倒した。

けれど何たる事か、死の間際に魔王は私に呪いを掛けたようだ。恐らく私は死ぬのだろう。

遠ざかる意識の中、部下たちの私を呼ぶ声だけが聞こえた。




思えば私は侯爵家に生まれ、次男という立場故にある程度の自由を許されていた。兄に何かあった際に対応出来るように領主としての心構えも学んではいたが、自由に出来る時間は多かった。

私は学問はあまり得意ではなかったが、体を動かす事は好きだった為剣術や体術に力を入れた。鍛えれば鍛えるほど強くなるのが楽しかったのだ。

騎士学校に入り更に私は武術に惹かれていった。

武術は肉体だけではなく、瞬時の判断力や思考が必要だった。それは学問のように覚えれば良いというものではない。物覚えがあまり良くなかった私は、思考力を養う事にも繋がると言ってより一層、武術を追い求めた。

その結果、王国騎士となり、武勲を重ねていき将軍にまで登り詰めた。

だがしかし、1つ問題があったのだ。


『早く結婚しなさい』


両親から届く釣書の数々。

そう、私はただただ武術だけを追い求めた結果、女性との交流は一切なかった。

両親たちは「どこかの王子と言っても信じてしまいそうな程の美しい顔」と私を言うが、女性陣からは遠巻きに見られてばかりだった。

故に私は両親からの釣書の相手と会うのが怖かったのだ。交流した事もない生物とどう相対して良いのか分からない。

だったらまだ魔族や魔物たちを相手に剣を振るう方が余程良い。

そう思い両親からの話を放置していたのだが。


『胸がな……こう、ふわっとしててだな…』

『脚だな!脚を晒すのははしたないと言われるだろう?だからこそ普段は見えない脚が…』


同僚たちの女性の話を聞けば聞くほど、私の中で何かが膨らんでいた。

何かだ。あくまでも何かである。

だが、聞くだけだった為に、魔王の呪いで部下たちの声を聞きながら、こう思ってしまったのだ。



「女性に触れたかった」、と。









目が覚めた時、私の周囲は騒がしかった。

この声は……恐らく女性たちの声だろう。甲高い声で笑うのが聞こえる。

女性に触れたかったという想いから、死の間際に女性たちに囲まれる夢でも見ているのかもしれない。


「ちょっとユカ、はみパンしてるって〜!」

「え、ちょっとまって!」


聞いた事の無い単語ばかりが聞こえる。

はみパンとはなんだろうか。

私はゆっくりと目を開けた。


(っ!?)


ここは何だ!?どういう事だ!?

目の前に広がる光景は、若き女性たちが脚を!脚を晒しているではないか!

見た事もない白い服に、黒……紺色だろうか、まるで下着のような物だけを身に着けた女性たちが脚を晒して笑っているのである。

ふと気付くと、私は何か引っ張られる感覚を感じ取った。


「これでなおった?」

「一応はみパン直ってるけど、今日のパンツ灰色とか!高木くんに見られていいパンツにしなさいよユカ!」


………なるほど私は気付いてしまった。

私の全身に伝わる、温かな体温。僅かに香るのは何の匂いだろうか。柔らかな肌は、私を隔てる1枚の布の向こうに。


(私は、女性へ強い憧れを抱くばかりにこのような下着に生まれ変わるという夢を見ているのだな…)


女性たちに私の声は届かないようだ。まあ届いても困るのだが。下着が言葉を発しては女性たちも困るだろう。


「行くよユカー!」

「はーい!」


どうやら私はユカと呼ばれる少女に穿かれているらしい。

このユカという少女……なかなかに張りのある臀部をしている。そして、その、あれだ。

なるほどこれが、そういった部分の香りか。なるほど。

今、私が人の体をしていなくて良かった。

いくら武に一筋だったとはいえ、そういった事にもちろん興味は大いにあった。なのでああそうだ、人の体だったら私は恐らく、一部分が誠に大変な事になっていただろう。


「準備運動ー!」


ほう、準備運動か。

どうやら彼女たちは運動をするらしい。全員同じ服装だ。

となるともしや今私は、運動に適した服になっているのだろうか。

いやしかし何ともまあはしたない服なんだ!けしからん!だがそのけしからん服になった身としては感謝しかないがな!

少女たちが広場を走り、汗ばみ、しっとりと……しっとりとした感覚が……なるほど……本当に、人の身でなくて良かった。そしてこの匂い、嫌いではない。




私はその日から、少女の臀部を布1枚隔てて包み込む存在となった。




毎日が幸せだった。

「せんたくき」とやらには慣れなかったが、日光浴は気持ち良く、そして「たんす」とやらの中も居心地は良かった。

何より、臀部!臀部だ!張りの良い臀部を包み込みながら、同じような姿をした少女たちを見つめる日々!

どうやら私は、学業に勤しむ少女たちが運動時に身に着ける「ぶるま」とやらになっていたらしいのだが、そのぶるま、というものは非常に良い!時折見える下着!伸びる脚!臀部!臀部だ!全部臀部が最高だった!

しっとりと汗ばんだ少女の臀部!そして秘めたる場所!

大変……大変良かった…!




しかし、そんな日々もある日突然終わりを告げた。

ある日から私は少女にたんすにしまわれたまま、取り出されなくなったのだ。

しまわれる前に彼女は「もうじき卒業か」と呟いていた。

卒業したら穿かれなくなってしまうらしいが、死の間際の夢で見るにはとても良い夢だった。私のブルマ生も終わりだ。

そう思い、私は意識を手放した。




(……ん?)


たんすにしまい込まれ意識を手放したはずの私は、何故か突然目を覚ました。

眠りから目覚めたような感覚だ。


「まさかこんな物が需要あるとは…」


私の目の前には妙齢の女性が1人。

板のような物を持ち、私を板越しに見つめていた。


「えーっと…『当時物です。箪笥の中にしまい込んでいたので、箪笥の匂いがします。希望があれば洗濯してからお送りします』、っと……変なコレクターって居るもんだねぇしかし」


状況が把握出来ないものの、目の前の女性が私を身に着けていた人物にとてもよく似ている事だけ分かった。

少しふくよかな彼女はきっと母親なのだろう。


「あ、もう買われた。話聞いた時はまさかと思ったけど……取っといて良かったー!発送準備しよ」


彼女は私を何かに包み始めた。

これはどういう状況だ?

私は混乱したが、うっすらと聞こえる会話から、どこかに送られるらしいという事だけ分かった。

そして私は恐らく荷車か何かに乗せられたのだろう、数日が経ち、受け取り先へと届いたようだ。

封が開かれ、目の前に居たのは。


「お……当時物の毛玉付きブルマーきちゃあ…」


頭頂部が寂しいふくよかな壮年の男だった。


「ひぇ……30年前の着用済みブルマ……レア物……何で今ブルセラショップ無いの…って思ったけどネットで手に入るとか胸アツ…」


私を手に取り男は匂いを嗅ぎ始めた。

いや待て待ってくれ気持ちが悪いぞこれは!


「ああ……箪笥の奥深くにしまってあったすえたような匂いぃ……はふ、最高…」


よだれ!よだれが!付いている!

男は何故かズボンを脱ぎ始めた。


「たか、ぶる!」


昂らないでくれ!頼む!

私を手に持ち、男は私へと毛にまみれた脚を通して……待て待てどう考えても無理だ!!やめてくれ私は貴様のような輩の臀部は包み込みたくないんだ!!!!





臀部に触れるか触れないかの所で、私は意識を失った。






「やめろおおおおお!!!!!」


咆哮。

叫ばずして何としようか。

蘇る男の臀部、脚の毛の感触。


「か、閣下…!」

「皆!閣下が!閣下が!目を覚ましたぞ!!」


絶望から目覚めた私を囲んでいたのは、部下たちだった。


「閣下は5日間目を覚まされなかったのです!王宮魔術師も手立てが無いと言うし魔王の呪いは強力なのかと思いましたが……5日で目を覚まされるとはさすがは閣下!」

「我らが閣下は魔王の呪いすら5日で打ち消してしまうほどの存在だった!」


私は目を逸らした。

目を覚ましたきっかけは毛むくじゃらの脚をした男の臀部であって、私の強さではないのだ。

部下たちは喜びながら私に告げる。


「陛下が、閣下が目を覚ましたら何でも褒美をと!」

「どのようなものでも良いそうですよ!異国の姫であろうと望むのならばと…!」


部下たちの言葉に私は1人、考え込んでいた。






そして訪れた謁見の日、陛下は私個人にに爵位を授ける事を告げた後、私の望みを問う。

私は声高らかに告げた。


「臀部に自信のある女性との婚約を!ドレスに隠れて見えない部分に自信のある女性を!」


そうだ、この世は臀部だ。

恐らく私が元より女性との交流があればあのような事態にはならなかったのだ。死んでから後悔しても遅い。

ならば今!ここで臀部を宣言せずしていつするというのか!

陛下は一瞬戸惑った顔をしたものの、すぐに「国中……いや、他国からも臀部に自信のある女性を集めよう」と仰った。

有り難い話である。




そうして集められた女性の中から、私は1人の女性と出会った。

彼女は男爵令嬢であったが、男爵と平民の女性の間に生まれた少女だった。他の令嬢たちが恥じらう中、「臀部の大きさ、張りなら自信があります!」と私に積極的に告げてきたのだ。

何度か逢瀬を重ね、そしてドレスの内を見せてもらい、至高の臀部だと思った。






「閣下は本当に臀部が好きですねぇ」

「貴女の臀部以上の臀部を私は知らない。何よりも優れた臀部だ」


形に弾力、手触り、大きさ……全てが完璧な彼女の臀部を愛した結果、子宝にも恵まれた。

そして私が仕立て屋に依頼して出来上がった「ブルマ」とやらが庶民の間で流行し、一部貴族の間でも、「夫婦仲が久しぶりに盛り上がった」と話題になった。




こうして、私は今とても強く思う事がある。



「魔王に、私から感謝を」


魔王の呪いが無ければ私はブルマで目覚める事も、臀部に目覚める事もなかっただろう。

感謝する、魔王……




ブルマと臀部に目覚めさせてくれた魔王よ、もし死後の世界で会う事があるのならば、感謝とブルマと臀部の話を聞いてくれ。




魔王「そんな呪いじゃなかった」

妻になった令嬢「魔王、臀部に目覚めさせてくれてありがとう」


どのジャンルにするべきだったのでしょうか。

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