第1章 1話 退屈な毎日の終わりは突然に
主人公である石川達也(無職)が大企業者社長である同姓同名の石川達也に転生してしまう物語である。
東京の狭いアパートでの達也の日々は、繰り返しのルーティンと退屈で満たされていた。
彼の生活は、かつては充実していたかもしれないが、今では無職のレッテルと長引く就職活動の失敗が彼を苛んでいた。
達也は、社会から取り残された感覚と、どこか自分自身に対する失望感を抱えていた。
彼の唯一の逃避は、安い酒と、夜の街のほんの少しの活気だった。
達也は自分が何者かになれるかもしれないという希望を完全には捨てていなかったが、その夢を追う気力もほとんど残っていなかった。
日々の不満は徐々に彼の中で溜まり、彼の心を徐々に侵食していった。
運命の夜、達也はいつものように酒を飲みすぎ、街の喧騒の中で自分の孤独を忘れようとした。
しかし、その夜は何かが違った。酔いが深まるにつれて、彼は些細なことで口論になり、それがすぐに取り返しのつかない暴力へと発展した。
達也が感じたのは、突然の衝撃と、それに続く無限の闇だけだった。
彼が次に目覚めた時、達也はもはやその退屈で不満に満ちた世界にはいなかった。
新しい身体、新しい人生が彼を待っていた。
しかし、彼がこの新しいチャンスをどう生かすか、その答えは彼自身の中にしかない。
達也が目を開けると、大きな部屋にいた。
「ここは、、、。オフィスか?」
達也はボソッと呟いた。
「何を仰ってるんですか?」
若い女性の声がした。
声の方向を確認すると、彼の前には、秘書らしき女性が立っていた。
「石川社長、役員会の時間ですが、どうかされましたか?」
女性が淡々と質問する。
(か、会議だと、、、。やばい、状況が読み込めない。そもそもこの人誰なんだ、、、。ってまてよ!社長?俺社長なの??とりあえず無難に対応しないと!)
「いや、どうもしてない。ただ考え事をしてただけだ。」
達也は無職の時に練習していた、イケおじ用語を咄嗟に話した。
その日の役員会では、達也は自分がどれほど場違いかを痛感する結果となるのである。
部屋に入ると、すでに取締役たちが彼を待っており、彼の座る社長席が空いている。
達也は席に着くと、手元にある資料に目を通し始めるが、数字とグラフが彼にはまったく意味をなさない。取締役たちの期待に応えられる自信がない。
「石川社長、先月の売上についてご説明いただけますか?」と、取締役の一人が質問する。
(この人たちは俺の部下なのか?部下なら適当答えも一旦大丈夫なのか?どうする俺!!)
達也は緊張で言葉を詰まらせた。
彼は急いで資料をめくり、先月の売上に関するページを探した。
数字を見ても、彼にはどう評価すればいいのかわからない。
しかし、何かを言わなければと感じ、彼は深呼吸をしてから口を開いた。
「ええと、先月の売上ですね。ここに示されている通り、我々は少し挑戦的な目標を設定していましたが、それにほぼ近づいたと言えるでしょう。今後は、さらに…」
達也はその場の雰囲気を読みながら、なんとか適切なコメントを続けた。
彼の回答がどれほど会議に参加している人々を納得させたかはわからないが、少なくとも、彼は最初の会議を乗り切ることができた。
会議が終わり、秘書が近づいてきた。
「石川社長、お疲れ様でした。私は佐藤優子と申します。何かお手伝いできることがございましたら、いつでもお知らせください。」
「うん、頼りにしてるよ。」
達也はイケおじ語で答える。
そして内心はなぜ自己紹介をしてきたのか疑問に思うのであった。
違和感を感じると同時に達也はこの新しい世界で、彼女が頼りになる最初の味方かもしれないと感じるのであった。
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