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虎牢関入門

 とりあえず、虎牢関に向かうために、道案内役と思われる兵士と合流する。呂布の馬の扱いは素晴らしく、力まずに足を動かす出来る。


 「虎牢関は、ここから少ししたところにあります。着いたらすぐ戦場になるかもしれません心の準備はよろしいですか?」

 「当たり前だ。さっさと行くぞ」


 東門についてすぐに兵士と合流して洛陽を発った。この姿になってからは、何時間走っても疲れることはないので改めて馬の持久力の高さに驚いていたのだが、前を走る兵士の馬が少しづつ速度を落としていることに気づいた。


 「お前は、何ともないのか?」

 (何のこと?)


 前の馬を見ながら呂布が僕に聞いてくる。


 「長時間移動しても疲れないのか? 前の馬もそうだし、洛陽に行くまでに乗った馬も、長時間移動したら走るスピードが遅くなってくるものだが、お前はそんな感じしないんだよな」

 「それは僕も思っていたことなんだ。董卓を乗せた時も、長時間移動したにも関わらず、全く疲れる気配がないんだよね」

 「そうか」


 それ以降呂布は話さなくなった。前に乗っている兵士を見据えて。


 ***


 (ここが虎牢関か)


 洛陽を発って数日かけて虎牢関に着いた。あたりを見渡すと紫色の鎧を着た兵士達が何万人かいる。あれ全てが董卓軍の兵士だろう。辺りをうろうろしていたら、一人の髭の生えた人が呂布に近づいてきた。


 「呂布様、虎牢関に着いたのですかな」

 「お前誰だ?」


 そこら辺にいる兵士とは、違うオーラを感じる。この人が董卓軍を動かしている人なのだろうか。


 「申し遅れました。私の名は李儒と申します。董卓様の軍師にして虎牢関における董卓軍の指揮を任されている者です。以後よろしくお願いします」


 そう言って李儒と名乗る男は呂布に頭を下げる。呂布は、その挨拶を無視して、辺りを見渡す。


 「どうなさいましたか呂布様」


 呂布の様子を不思議そうに見守る李儒に対して呂布は、何かを急いでいるようだ。


 「おい! ここらに敵はいないのか? どこを見渡しても董卓の兵士しかいないぞ」


 虎牢関に着いたらすぐに戦える。そう思っていたようだが実際に着いてみると、董卓軍の兵士しかおらず、近くで戦場が起こっている雰囲気ではない。さっきからきょろきょろしていたのはそれが原因なのだろう。


 「なにをおっしゃっているのですか。呂布様の役割はあそこに見える門が破られるまでは、ここで待機をしておくことです。もし破られますとこちらに敵が流れ込んできますので、その敵をここで食い止めておくのがあなた様の役割です」


 李儒から聞かされる作戦は、ほんの数日出会った僕にでも分かるくらいに呂布には、その作戦は不満が出てくることくらい。


 「なんだと、俺を戦場に出させないだと? ふざけるな! 董卓といいお前といいなぜ俺を、戦場に出させないんだ」

 「そうおっしゃいましても、もう決めたことですから。諦めてください」


 落ち着かせようと周りの兵士たちが呂布を囲うように隊列を組む。その手際から、李儒が仕組んだものだと明らかだ。

 門の方をちらりと見る。門は固く閉ざされており、武器で攻撃したところでびくともしないだろう。門を破壊する兵器がないと壊せないだろう。そう思っていたのだが呂布は、手に持っている武器を振り回し、怒声を上げる。


 「お前らがそのきなら俺は、無理やりでもここから出るぞ。俺と戦いたくない者はさっさと道を開けろ!!」


 その威勢にビビったのか隊列を組んでいた兵士たちが一斉に隊列を崩して呂布の目の前から消える。


 「お待ちください呂布様。あなたがいなくなればここをどう死守するのです」


 それでも李儒はあきらめずただ一人呂布の前に立つ。


 「この門を通さなければ良いのだろう。簡単なことだ、目の前にいる敵全てを討てばいいのだからな」


 その言葉を聞いて辺りがざわざわしている。李儒から聞かされた作戦は、この門が破られたら呂布と兵士たちで、一斉に攻撃をして敵を食い止めつつ後ろから別動隊を進行させて、挟み撃ちにするのが李儒の考えた作戦だろう。

 だが呂布は、この門に一人も入れることはないから安心しろと言っている。呂布の自信ある言葉を聞いてようやく李儒は呂布の目の前から立ち去り横を歩く呂布にお辞儀をする。


 「もしこの門が破られでもしたら、袁紹殿は洛陽へと進行するでしょう。そして董卓様の首を、討ちとりに行くおつもりです。そのようなことになったらどうなるか、あなた様でもさすがにお分かりになるでしょう。私の指示を無視して勝手に暴れまわる獣として、董卓様に報告しなければならなくなります。どうか、今一度お考えよ」


 最後の忠告だろうと思われる李儒の声は弱弱しいがどこか説得力がある。


 「ふっん、くどいぞ」


 その指示にも従わず呂布は馬の横を蹴って門へと進む。門の近くには、門番と思われる兵士が二人立っており、辺りを警戒している。


 「今から戦場に出る。門を開けろ」


 右手に持っている武器を横に振る。風で地面の砂が舞う。門にいる兵士は、呂布を見て驚いている。


 「お待ちください呂布様、今この門の外には敵の兵士が沢山おります。この門を開けてしまったら……」


 兵士が最後の警告をしてくる。こうなることを李儒は分かっていたのだろう。


 「李儒から戦場に出る許可は取った。だから何も心配するな」


 そう聞いた兵士は門にかかっている元栓を外す。顔には緊張が浮かび上がっている。


 「この先は、とても危険です。特に劉備三兄弟にはお気をつけてください。黄巾の乱で活躍をした武将でして、一人一人の力もそうですが特に三人でのチームワークがすごくて、さすがの呂布様でも危険でしょう」


 脅しのつもりだろうが呂布にはそんなものは通用しない。むしろ余計にやる気にさせている。

 二人の兵士が大きな門を両手でゆっくり開けている。中からは聞こえにくかった声がどんどん大きくなる。外にいる兵士は、想像していた数よりも多いかもしれない。

 この世界にやってきて戦いはあったが、戦場に出るのは初めてだ。戦場に出るからには、勿論命を失う覚悟を持たなければならない。この世界で死ねば僕はどうなっていくのだろう。頭の中が急に不安でいっぱいになる。そこに優しく撫でるように背中から手が置かれる。


 「何も心配することはない。お前は、優秀な馬だから死ぬことはないだろう。それに俺もここで死ぬつもりはないからな」


 自身がある声に僕も緊張がほぐれた。門が完全に開かれると目の前には、董卓の兵士たちが大群の敵の兵士たちにやられているのが見える。呂布は門からゆっくりと馬を歩かせて大群の兵士たちに向かっていくのだった。

 


 


 

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