呂布洛陽に帰還する
洛陽に逃げ帰った、董卓は屋敷の中で美女と戯れながら、酒池肉林をしていた。
「がははは、ここまでくれば儂は安全じゃ」
酒池肉林を楽しんでいる董卓は、民たちから税収を取り上げ、自分勝手な政治を行っている。そのためか、民たちは皆やせ細っているのに、董卓には、その面影がひとかけらも感じられない。この董卓を権力者としての光景に耐えかねない民の何人かは、屋敷の周りを囲み暴動を起こしたが、それらすべてを董卓軍の兵たちが武力で抑えこんでしまい、民たちは、さらに貧しい生活を強いられるようになる。そこで立ち上がったのは、袁紹、袁術らを盟主としてさらに、黄巾の乱で名乗りを上げた、劉備、曹操、孫堅らも招集した反董卓連合を結成し、董卓を討つべしと立ち上がったのである。
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パカ、パカ、パカ
誰もいない茂みの道を馬で駆けて着いた先は、立派な城門に囲まれている都が見える。ここが、董卓のいる洛陽だろう。トップスピードで飛ばしたから馬に疲労が見えるが、立ち止まることなく、洛陽の入り口に向かう。洛陽では門番が4人いて、入口に2人、見張り台の上に2人で見守っている。
「あ、呂布様どうされたんですか?」
入口にいる門番の一人が不思議そうに呂布を見ながら語り掛ける。
「董卓に用がある。さっさと開けろ!」
呂布の迫力ある声を聞き、董卓に確認しないまま門の扉を開ける。一部の門番はひそひそしていたが、そんなことには気に留めず、呂布は入口を潜り抜けて、洛陽の奥にある屋敷に足を運ぶのだった。
洛陽の中は、多くの民が出歩いているが、皆がやせ細った老人や女ばかりである。若くて力のある男は、董卓の軍に配属され、若くて美しい女は董卓の所有物になる。それがここでの決まり事だ。
董卓のいる屋敷まで歩いていると、呂布に顔を合わせないためか、すれ違うたびに下を向いて歩く。呂布の威圧感に押されているのか、またはそれ以外か……
洛陽では、ひときわ目立つ屋敷に着く。この屋敷の中に董卓がいるだろう。
(……)
屋敷に入ろうとした所、不意に声が聞こえた気がするが、呂布はいち早く董卓に会うため、屋敷に駆け込んだ。
屋敷内は、見た目以上にそこまで大きくはなく、董卓の笑い声が屋敷内まで響いているので、見つけるまではそこまで苦労しなかった。
「おい!董卓!」
董卓は呂布の声を聞いて驚いた顔をしている。
「呂布よ、何故お前がここにいる」
「お前が洛陽に逃げたって聞いてな、それよりも、他のものに戦わせてお前はここで何をしている?」
呂布の素朴な疑問に董卓はあたかも当然のように呂布と話す。
「これを見て分らぬか、酒池肉林をしている」
呂布は苦笑いを浮かべながらも、拳を強く握り、董卓に対するイライラを抑え込もうとしている。
「董卓様。大変でございます!」
董卓軍の紫色の鎧を着た伝令役の兵士が、慌ただしい声で、董卓のいる部屋まで駆け込んできた。
「なんだ? 騒がしい奴め」
董卓は、邪険に思いながらも、目の前にいる兵士の声を、肉を食いながら耳を傾ける。
「華雄様が討死になさいました」
目の前にいる兵士のその一言で、董卓は、手に持っている肉を地面に落とし、その目は、怒りと焦りの両方が浮かび上がっている。
「なんだとー!!」
屋敷中に響いたその声には、驚きが込められている。
(ほう、あの華雄を倒した者がいるのか。なかなか楽しめそうだな。)
それに対して、呂布は不気味な笑みを浮かべている。
「おい、華雄を倒した奴の名前はなんだ?」
「はっ、華雄様を討死にさせた者の名は。関羽と名乗っていました」
華雄を倒した者の名を聞き、にやけが止まらなくなった呂布。それに反して董卓は、自分の目の前にいる呂布に恐怖すら感じている。
「関羽は今どこにいる?」
「ここから東側にあります虎牢関にて、軍を進めている状況です」
「なにー!!」
虎牢関。その言葉を聞いた瞬間、董卓は今、自分がこんなことをしている場合ではないことを、ようやく知ることが出来た。
「おい!董卓。俺を虎牢関まで連れていけ」
呂布は荒々しく董卓に詰めよる。その場にいた兵士も呂布の迫力に圧倒されたのか徐々に後ろに下がっていく。
「ええい、なに馬鹿なことを言っている呂布よ。あいつらは、俺の命を奪いに来ているのだ。何故儂が、虎牢関まで行き、命を差し出しに行かにゃならんのだ。虎牢関には、お前ひとりで行け」
董卓は呂布に焦ったのか、護衛に付けようとはせず、戦場に行くよう指示した。呂布は、その言葉を待っていたかのように手に持っている方天画戟を上で振り回す。
「分かった、虎牢関には俺だけで行こう。そこのお前。虎牢関まで案内しろ」
部屋から退出しかけていた兵士が、呂布に道案内を頼まれたので、嫌な顔を浮かべながらも小さく頷いてから呂布についてくるよう促す。
「董卓。お前が乗っていた赤い馬、戦場に行かないやつが使ってもしょうがないだろう。俺が使うからな」
兵士の後をついていこうとしたところ。赤い馬の事を思い出した呂布は、赤い馬を董自分が乗ることを背を向けながら告げる。
「なにバカなことを言っているんじゃー。あれは儂のものだ。お前みたいなやつが使えるはずもない」
董卓の皮肉じみた声に無視をする呂布に、苛立ちを感じた董卓は呂布を止める言葉を探した。
「もしも虎牢関を抜かれたりしたら、お前が気になっている貂蝉がとうなるか、理解しているか?」
貂蝉という名を聞いて、呂布は一瞬歩みを止めたが、董卓の事を振り向くことはせず、再び歩みを進める。
前にいた兵士は、呂布の顔を見ようとはしないが、この時の呂布は、今にでも董卓を殺そうと考えてるくらい、呂布から不気味なオーラが出ていると感じさせるくらいに。




