1.
覚えているのは白い一面の光
突然の浮遊感
そしてゆっくりと落ちていく・・・・・・。
ゴンッ!!!!!!
脳天に突き刺さる衝撃の後、一瞬視界が真っ白になった。
「いっ・・・・・・。」
ダメだ。目がチカチカする・・・・・・。
うっすらと目に涙をためながら、僕は起き上がることができないでいた。両手で頭をかかえながら、いまだ記憶が混乱している僕をあざ笑うように、目の前に晴天が広がり、きょうもなんだかいい天気だ。
まとまらない頭で空を見上げていると、視界に誰かが入ってきた。 僕付きのメイドのリーシャだ。
リーシャは心配そうに僕の顔を覗き込み、強打した後頭部にそっとふれた。
「コブになっています。早く冷やさないと。」
ゆっくりと僕を起こしてくれた。
ぼく・・・・・・・・?
オレはこんなに小さな手だっただろうか?
オレはぼくだっただろうか??
すべてが曖昧ではっきりしないまま、ふと視線を上げると、もう一人の少女がいた。10歳くらいだろうか。真っ白のレースがふんだんに使われた、可愛らしいドレスを身にまとっているが、その身から出ているオーラが半端なく恐ろしかった。
「ねえ・・・さま・・・。」
無意識に動いた口から出た言葉に、少女は嫌悪感をあらわにした視線を向けてきた。赤褐色のまっすぐな髪を、いらだだし気に手でもてあそびながら、何かを言いたそうにしている。。
あぁ、そうだ。僕は姉さまに物凄く突き飛ばされた。不意打ちで。受け身すら取れずに頭からこけたんだった。
「本当に何をやっても愚図ね。そんなこけ方をするなんて。」
「姉さまが突き飛ばしたくせに・・・・・・。」
瞬間姉さまが物凄い顔で僕を睨んだ。アメジストのような紫の瞳に憎悪が浮かぶ。たった一言でそんなに怒る?と思いながら、そういえば初めて姉さまに口答えしたなと思い返した。ねえさま手を振りかぶる。僕はぶたれることを確信した。
ぼくは身を守ろうとしたんだ。いつものように。
両手で頭を守ろうとしたんだけど、なぜか、勝手に体がうごいた。僕の手は、そのまま振り上げた姉さまの手をつかみ、思い切り外側にねじり上げた。
「!!!!」
あまりの出来事に誰もがうごけないでいた。リーシャも、姉さま付きのメイドも、もちろん僕も。
手を背中にねじり上げられた姉さまは、びっくりしすぎて声もあげられないようだ。
ぼくは、姉さまの手を今はなすと、待っているのは死だけだと確信した。冗談ではなく。
おもいだした。
それは僕ではなく俺の記憶。