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第十話 スマッシュと採取


「それで、さっきからなにをしてんのですかい?」

「植物採集ですよ。使える植物を採取して売ろうと思ってまして」


 俺がそう伝えると、ぽかーんと口を開けて固まったスマッシュさん。


「ん? もしかして薬草採取の為にあっしらを?」 

「はい、そうですね。この山までは自分一人では絶対に辿りつけないので、護衛依頼を……と」

「わっはっは! 只の護衛に俺達を頼むたぁ、たまげたな! ルインよぉ、そりゃ過剰護衛ってもんですぜ。あっしらみたいなパーティじゃなくても、薬草採取のためにコルネロ山に来るくらいなら、護衛はFランクパーティに任せるもんなんですぜ?」

「あっ、そうなんですか。実は初めて冒険者ギルドで依頼を出しまして、知らないことだらけだったので、確実なパーティに依頼したいなって気持ちがありまして……」

「なるほどなぁ。笑っちまいましたがそう言うことならまあ、あっしらに頼んだのは正解かもしれんですなぁ。金に困ってないならって前提の話はありやすが」


 実はお金には困ってるんです……とも言い出せず、とりあえず黙って足を動かす。

 移動で足も痛いしもう少し採取したら今日は止めにしようと思っていたが、今のスマッシュさんの言葉で内心かなり焦りが出て、お陰で少し気合いが入った。


「ここら辺で大丈夫です! ありがとうございます」

「お礼なんていらないですぜ。近くにいる魔物から避けるってだけの簡単な仕事でさぁ。……それよりもルインの仕事っぷりを見せてもらってもいいですかい?」

「もちろんです。スマッシュさんに近くにいて貰えれば、魔物にもすぐ気づけますし」


 こうしてスマッシュさんに後ろを任せて、俺は再び鑑定と採取を手際よく行っていく。

 最初は生えている植物の鑑定に少し手こずっていたが、かなり要領は掴めてきたため、治療師ギルドで鑑定していた時の半分くらいのスピードくらいでは、既に鑑定できるようになっている。

 

「おいおい、なんじゃそりゃ! 適当に草を放ってるんですかい?」

「いえ、ちゃんと薬草とか使える植物だけを判別して採取してますよ。実は、治療師ギルドでこう言った植物の選別を仕事でやっていたので、植物の選別作業には慣れてるんです」

「そうは言ってもよぉ……流石におかしな速度ですぜ?」

「雑草の裏に隠れてる薬草とかを一瞬見逃しちゃうので、これでもまだまだ遅いくらいですよ。本当ならもっとスピードを上げたいんですけど、ミスするのが一番駄目ですからね」

「うーん……ここまで来るたぁ、エリザとはまた違った天賦の才ってやつでさぁね」


 後ろで立っているスマッシュさんと会話をしながらも、手と脳の動きは一切止めない。

 治療師ギルドで働いていたときを思い出し、流れ作業のように植物の仕分けと採取を並行して行っていく。

 実際に治療師ギルドでは、大きな袋に詰められた植物の鑑定を一日20時間とかやらされていたからな。

 こんなのは、もはや慣れた作業だ。


 スマッシュさんに見られながら作業を行うこと約2時間。

 魔物から避けるために少しの移動を挟んだりもしたが、無事にここら辺の採取も終わった。

 未鑑定の植物はなかったが、薬草と魔力草の他に上薬草3本とエンジェル草2本の収穫ができた。

 今日だけでもう金貨1枚と銀貨3枚分は採取できたはず。


 午前中は移動していたことも考えれば十分な数だし、この調子ならもしかすれば明日いっぱいで、一応の目標である金貨4枚分の植物を収穫できる計算になる。

 非常に順調ではあるのだが、やはりダンベル草は希少なのか見つからなかったな。

 雑草も一本一本、丁寧に鑑定していたんだけど。


「スマッシュさん。これでここら一帯も終わりました! 護衛ありがとうございました」

「いやいや、あっしも良いものを見させてもらいましたぜ。それと先ほどの言葉を撤回させてくだせぇ」

「先ほどの言葉……ですか?」

「過剰護衛って話でさぁ。てっきり護衛費を考えると赤字になると思っちまってたんですが、この速度で採取できるならぁ、俺らの護衛費なんて余裕で払えやすからね」

「わざわざ撤回なんてしなくていいですよ。私のスキルをご存知なかったんですから。実際に今日は、スマッシュさんの言葉を聞いて頑張った節もありましたし」


 やはりスマッシュさんは律儀な人だな。

 口調はちょっとおかしいし、アーメッドさんを呼び捨てにしてよく怒られているが、根が良い人なのだろう。

 俺とスマッシュさんはそんな他愛もない会話をしながら、二人が待っているであろう先ほどの開けた場所へと向かって戻っていく。

 

 ほのぼのとした会話を続けていたのだが、先ほどの広場へと近づくにつれて何処か不穏な空気を感じる。

 と言うより、来た道を戻るに連れてどこか血なまぐさい臭いが漂っているのだ。

 俺は警戒して即座にスマッシュさんの方を向くが、肝心のスマッシュさんはなんともない様子を見せている。


「こらぁ、エリザが起きてますぜぇ。魔物への警戒はいらんですが、エリザへの警戒はしておいてくだせぇ」


 警戒している俺に、そう注意喚起をしてきたスマッシュさん。

 ……アーメッドさんへの警戒って、一体何をどう警戒すればいいんだ。

 そう思いながら拠点としている開けた場所に近づくと、先ほどまで平穏だった原っぱは真っ赤な血で染まっていた。



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