30の異端とその行く末
某王国歴954年。
大陸各国で戦争の音が響いていた。
逃げる者などおらず。己らの国の為に剣を、盾を、杖を取った。
泣く者はいた。
その涙は友の死を悼むもの。あるいは国の独立を得たもの。理由は数多い。
ただ1つ、数多の戦場に1つ。異様な戦争が起きていた。
広大な大地の北に陣を張るのは、全部隊完全なる装備の軍。
対する敵は…………誰1人として重装備などいなかった。
その国が敵を嘲笑うなど当たり前のこと。
なにせ剣をとる者が自国の10分の1いるかいないか。
勝利を確信したその国の王は言う。
「アホな奴らめ。ヒョロガリの魔道士ごときになにができる」
彼の言葉は開戦と同時に覆る。
魔道士が突っ込んできたではないか。
走りながらの詠唱。誰が想像するものか。
魔道士の第1団は戦場を火の海に変え。
第2団は土を隆起させ、敵を貫く。
第3団は氷柱を撃ち込む。
完全なる装備の軍は大半は、焼かれるか、貫かれるか、無様に逃亡するかしか道が無かった。
余裕の笑みを浮かべていた王は無様な背を見せ、自国へと逃げていった。
完全なる装備の軍が、魔道士のみの部隊にぼろ負けするなど、にわかにも信じないだろう。
しかし負けたのだ。彼らは確かに負けたのだ。
逃げ去った王は、後に言う。
「我々にあやつらは倒せないものだった」
後悔などもう遅い。領地を縮小する羽目になったその国は金を、軍を、民を失った。
そしてその10年後、代替わりした王はこう言う。
「無能な父親の仇を討つべく、ハディアを潰す」
こうして、2国間の仲はますます悪くなり2000年以上続いた。