4.エリオの変貌。
2020年8月18日、20時に続きを予約投稿しました。
_(:3 」∠)_
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「くっ、エリオさん! 正気に戻って!!」
「アルナ、アルナアルナアルナァ!!」
黒き一閃が、ボクとアルナに襲いかかる。
血の涙を流しながら攻撃をしかけてくるエリオさんは、明らかに正気ではなかった。声が反響しているように聞こえ、常に手負いのアルナへと突撃する。
その間に割って入りどうにかしのぐが、一撃が尋常ではなく重かった。
防ぐたびに腕が痺れる。
下手をすれば、圧だけでへし折れてしまうのではないか。
そう思うほどの連撃だった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
喉が裂けんばかりに、甲高い声を張り上げるエリオさん。
ボクは必死に呼びかけるが、彼女はそれに応えることはなかった。
「く、そ……!」
相手がエリオさんだから、こちらから仕掛けることもできない。
防戦一方のまま時間だけが過ぎていく。宿の人たちを逃がすことはできたけれど、被害をこれ以上押しとどめることも難しかった。
その最中だ。
ふいに、アルナがこう言ったのは。
「クレオ、俺を囮にしろ……!」
「え……!?」
ボクは突然のことに、思わず呆けてしまった。
ギリギリで攻撃をいなしながら、彼に訊き返す。
「そんな、どうして!?」
「エリオの狙いは俺だけだ。だから――」
――俺を餌にしろ。
彼はまっすぐに、そう口にした。
自分を犠牲にしてエリオさんを倒すのだ、と。
「…………!」
アルナの言葉を聞いて、ボクは逡巡する。
それは確実に悪手だ。もし彼を囮として扱ったとする。そうなったら、命の保証はできない。加えて一歩間違えれば、エリオさんもアルナも、共に失ってしまう。
それだけは絶対に避けたかった。
だけど――。
「くそ、なにか良い策はないのか……!」
こうしている間にも、錯乱したエリオさんの攻撃は続く。
彼女の追撃は次第に威力を増して、ついにはボクの頬を掠めるようになっていた。もう潮時なのだろうか。二人のうち、どちらかを捨てなければならないのか。
そう思った。その時――。
「――――!?」
唐突に、攻撃の手が緩んだ。
そして一定の距離を取り、エリオさんが動きを止める。
彼女は一点をジッと見つめ、明らかな動揺と共に瞳を震わせていた。何を見ているのか、そう思ってボクは視線の先を見る。
するとそこにあったのは――。
「あれは、前に拾った髪飾り……?」
以前、エリオさんの部屋で見つけた装飾品だった。
理由は分からない。だけども、彼女はその髪飾りを見つめて――。
「あ、あああ、あああああああ……!?」
動きを、止めた。
頭を抱えて大粒の涙を流し始める。
両膝をついてうつむき、しかし何かを振り払うように激しく頭を振る。
そして最後には――。
「し、て……」
「え……?」
うわ言のように、ある言葉を漏らして。
「うわっ!?」
周囲に黒い霧のようなものが広がった。
しかしそれも一瞬のことで、次に目を開くとそこには誰もいなかった。
「エリオ、さん……」
ボクはあまりのことに呆然と立ち尽くす。
そして、最後に彼女が口にした言葉を繰り返すのだった。
「アタシを殺して、なんて……」――と。
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