2.道具は道具らしく。
新作も書きましたので、応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_
あとがきより。
「いいか、エリオ。クレファス家だけは、根絶やしにしなければならぬ。そのこと、努々忘れるなよ」
「はい、お父様……」
ある日のこと。
クラディオはエリオにそう語った。
少女の目は死んでいる。光なき眼に、カタナの切っ先を映して、ただ呆然と父の言うことを訊いていた。その姿はまさしく――亡霊。
無感情を貫き、なにかから逃避しようとする娘の姿を見てクラディオはほくそ笑んだ。唐突にその腹部に蹴りを見舞って、倒れ伏すエリオを見下す。
「そのような覇気で、クレファスを殺せるものか!」
「…………!」
うずくまるエリオ。
立ち上がろうとする彼女を、彼は問答無用に蹴り飛ばす。
「いいか、貴様は道具に過ぎない。道具は――」
そして、唾を飛ばしながら叫んだ。
「道具らしく、その役目を果たせ!!」
◆
「ふむ……? ずいぶんと、懐かしい夢を見たな」
クラディオは身を起こすと、そう呟いた。
そこは薄暗く、周囲の様子もまともに見えない彼の寝床。そこにいるだけで精神に支障をきたしそうな空間に、クラディオは平然とした様子で存在した。
そして、ゆっくりと立ち上がり歩き始める。
「さて、そろそろ動かすか? ――クリム」
クラディオは、誰もいない場所にそう声をかけた。
すると、どこからともなく一人の魔族――クリムが姿を現す。彼女は小さく微笑んでから、頷いてみせた。
そのことを確認してから、クラディオはある部屋に足を踏み入れる。
そこには、娘――エリオがいた。
「ほほう、ずいぶんと気が狂ったな」
そして、その様子を見てそう口にする。
嬉々とした声色。そこにあったのは、一種のおぞましさ。
「では、エリオ。今こそ父に恩義を果たせ」
ニッと、口角を歪める。
クラディオは、娘にこう告げるのだった。
「道具は、道具らしく……な」――と。




