1.目標。
_(:3 」∠)_
久々に書けたお。
「それじゃ、しばらく待てばいいんだな?」
「うん。数日すれば、呪いを解く薬ができるはずだから」
アルナと少しだけ談笑した後。
ボクは、まだ足元の覚束ない彼を寝室に運んだ。
案外素直にベッドに横になったアルナは、微かに口角を緩める。
「なぁ、クレオ。俺たちが初めて会った時のこと、覚えてるか?」
「初めて、会った時……?」
そして、何の気なしにそんな話題を振ってきた。
ボクは数年前の記憶を必死に手繰り寄せて、一つ頷く。アルナと初めて会ったのは、たしか――。
「それって、学園で鍛錬した時の話だよね?」
王都立学園の鍛錬場。
休日に剣術の練習をしようと、足を運んだ時だった。
足を踏み入れた瞬間に、鋭く木剣を振るう彼の存在に気付いたのである。試験の結果で互いの名前だけは知っていたボクたちは、その日から二人で自主練をするようになった。
気が付けば、日常の一部になっていた。
そんな懐かしい日々のこと。
「でも、それがどうかしたの?」
だけど今、事件となにか関係があるのだろうか。
不思議に思って首を傾げると、アルナはこちらの意図を察したらしい。関係ないさ、と前置きしてからこう続けた。
「あの日から、俺の目標はお前だったんだ」――と。
少しだけ、恥ずかしそうに笑いながら。
その言葉にボクは思わず耳を疑った。
「アルナが、ボクを目標に……、って?」
だって、世界最高の剣士と名高い少年から。
そのようなことを言われるとは、微塵も思っていなかったから。先ほどリーダー云々と言われたことも、どうにも頭の中で引っかかっていた。
だからすぐに、否定する。
「ボクはそんな器じゃないよ。アルナの方こそ、ボクの目標だった」
彼の剣技は、他を寄せ付けない。
まるで太陽のような存在だったアルナに、少しでも触れたくて手を伸ばし続けた。そんな学園生時代のことを思い返す。
でも触れようとすれば、いつも押し返された。
ついぞ届かなかったその頂は、ニッと笑ってこう口にする。
「馬鹿だよな、お前。座学では俺なんかより、何倍も点数取るのに」
「えぇ、馬鹿って――」
「憧れだったんだよ、クレオは。俺にとって」
「……憧れ?」
またも、首を傾げてしまう。
するとアルナは、少しだけ身を起こして笑った。
「あらゆる物事に精通して、俺の持たざるものをたくさん持っている。だからといって、それをひけらかすことなく、真摯に前を向き続ける」
そして、最後にこう言う。
「お前は、変わってくれるなよ? 俺が――」
真剣な眼差しを、こちらに向けながら。
「お前のための道を、作るまでは」――と。
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