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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第20章

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94/211

1.目標。

_(:3 」∠)_

久々に書けたお。







「それじゃ、しばらく待てばいいんだな?」

「うん。数日すれば、呪いを解く薬ができるはずだから」



 アルナと少しだけ談笑した後。

 ボクは、まだ足元の覚束ない彼を寝室に運んだ。

 案外素直にベッドに横になったアルナは、微かに口角を緩める。



「なぁ、クレオ。俺たちが初めて会った時のこと、覚えてるか?」

「初めて、会った時……?」



 そして、何の気なしにそんな話題を振ってきた。

 ボクは数年前の記憶を必死に手繰り寄せて、一つ頷く。アルナと初めて会ったのは、たしか――。



「それって、学園で鍛錬した時の話だよね?」



 王都立学園の鍛錬場。

 休日に剣術の練習をしようと、足を運んだ時だった。

 足を踏み入れた瞬間に、鋭く木剣を振るう彼の存在に気付いたのである。試験の結果で互いの名前だけは知っていたボクたちは、その日から二人で自主練をするようになった。


 気が付けば、日常の一部になっていた。

 そんな懐かしい日々のこと。



「でも、それがどうかしたの?」



 だけど今、事件となにか関係があるのだろうか。

 不思議に思って首を傾げると、アルナはこちらの意図を察したらしい。関係ないさ、と前置きしてからこう続けた。



「あの日から、俺の目標はお前だったんだ」――と。



 少しだけ、恥ずかしそうに笑いながら。

 その言葉にボクは思わず耳を疑った。



「アルナが、ボクを目標に……、って?」



 だって、世界最高の剣士と名高い少年から。

 そのようなことを言われるとは、微塵も思っていなかったから。先ほどリーダー云々と言われたことも、どうにも頭の中で引っかかっていた。

 だからすぐに、否定する。



「ボクはそんな器じゃないよ。アルナの方こそ、ボクの目標だった」



 彼の剣技は、他を寄せ付けない。

 まるで太陽のような存在だったアルナに、少しでも触れたくて手を伸ばし続けた。そんな学園生時代のことを思い返す。

 でも触れようとすれば、いつも押し返された。

 ついぞ届かなかったその頂は、ニッと笑ってこう口にする。



「馬鹿だよな、お前。座学では俺なんかより、何倍も点数取るのに」

「えぇ、馬鹿って――」

「憧れだったんだよ、クレオは。俺にとって」

「……憧れ?」



 またも、首を傾げてしまう。

 するとアルナは、少しだけ身を起こして笑った。



「あらゆる物事に精通して、俺の持たざるものをたくさん持っている。だからといって、それをひけらかすことなく、真摯に前を向き続ける」



 そして、最後にこう言う。



「お前は、変わってくれるなよ? 俺が――」




 真剣な眼差しを、こちらに向けながら。




「お前のための道を、作るまでは」――と。



 


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