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4.剣術と体術。







 決闘が行われるのはギルドの前だ。

 そこには多くの民衆が押しかけており、一部ではお祭り騒ぎになっている。聞きかじったところによると、ギルドでの揉め事はこうやって決着をつける、というのが通例らしかった。手荒だな、という感想を抱くのはボクが元々、貴族だったからなのかもしれない。


「逃げずにきてくれたこと、感謝するよ。――クレオくん」

「当然ですよ、エリオさん」


 ギルドの前にある円形の広場。

 そこに出ると、すでにエリオさんは臨戦態勢に入っていた。剣を抜き放ち、それを日差しにかざして、輝きに目を細めている。

 ボクはそんな相手に対して、一つ礼をしてから正面に立つ。

 すると、細身の剣士はこう言った。


「ふむ。どうやら、作法を知っているところから見るに、キミも元貴族だった、というところかな? クレオ――名前は聞いたことはないが……」

「ははは、それはお互いに。勝ったら分かることですよ」

「なるほど、な。どうやらキミにも理由というものがあるらしい!」


 正面に剣を構え、ニヤリと笑うエリオさん。

 綺麗な中性的な顔立ちに、その笑みは映えていた。

 ボクはそれに呼応するようにして、剣を抜き放ち構える。仲立ち人であるギルド職員が、それを互いに準備良しと判断したのか、こう宣言した。



「それでは、これより決闘を開始する! ルールは魔法以外ならば何でもアリ! ――それでは、始め!!」



 そうして、火蓋は切って落とされる。

 最高の剣士を目指す相手との、一騎打ちが始まった。





 剣技による実力は伯仲、といったところだった。

 あちらが打てば、こちらはそれを防いで反撃をする。それの繰り返し。剣の速度は互いにだんだんと上がっていき、そこで繰り広げられるのは、なかなかにハイレベルなものになっていた。しかし、ボクはこれより速く、強い剣を知っている。


「ずいぶんと余裕がありそうじゃないか、クレオくん」

「いえ、これでも必死ですよ……?」


 鍔迫り合いの中。

 互いに息がかかりそうな距離感で、ボクたちはそう言葉を交わした。エリオさんもきっと、同じことを感じているのだろう。そう思った。

 この人もまた『彼の剣』を知っている。

 どうしても越えられなかった壁――それにぶつかった者同士。ボクはこのエリオという人物に、ある種の共感を抱いていた。


「エリオさんの剣技は、とても綺麗です。流れるようでいて柔らかい。しかしそれでいて、同時に決して折れない意思を感じられます」

「それは、ありがたい。我はずいぶんと褒められたことがなかったからな」

「でも、綺麗すぎるんですよ」

「なに……?」


 だからこそ、分かる。

 これは型にハマりすぎた剣技、だということを。

 芸術的であり強い、しかしながら戦いという分野において、それは稀に余分な要素となり得た。つまりはそこに、弱点がある。


「つまり、がら空きなんですよ!」

「が、は……っ!?」


 ボクは僅かに空いた隙間から、エリオさんの腹部に蹴りを喰らわせた。

 たしかに綺麗な剣技はそれだけで価値がある。しかし、戦いにおいては勝利した者にこそ価値があった。ボクはそれを知っている。

 『アルナ』――かつて超えられなかった相手との戦いの中で、いかにすれば、それに勝利することが出来るのかということを。


 すなわち、剣術に体術を組み合わせること――!


「く、そ……!」


 エリオさんは苦悶の表情を浮かべながら、最小限の動きで剣を振りかぶる。

 しかし、そこにもどうしようもなく隙が生まれるのだ。ボクは相手の懐に潜り込んで、今度は肘を捻じ込む。すると骨が軋む感触が伝わってきた。

 ここまでくればもう、この戦いの趨勢は決している。

 ボクは最後に、自身の剣を振るってエリオさんのそれを弾き飛ばした。


「これで、決着――ですね?」



 歓声が沸き起こる。

 膝をついたエリオさんは、唖然とこちらを見上げていた。


 


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