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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第18章

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4.気味の悪い戦い。








 通常の剣であれば、クリムの攻撃を完全に弾き切るのは困難だ。

 何故ならあの一打一打には、魔力が流れているから。しかもそれだけではなく、その攻撃ごとに流れの方向を変えているのだ。

 だから、右へ受け流したはずの攻撃が反対方向に流れたりする。

 アルナが対応できなくても、仕方のない話だった。



「やはり、面白いですね。貴方は!」



 魔法剣によって、魔力の流れを相殺しながら。

 ボクはクリムと相対していた。その最中でも彼女は、嬉しそうにそう叫ぶ。



「人間がここまでの力を持つとは、やはり――」



 そして、すっと息を吸ったかと思えば。



「いいえ、今はまだ時ではありませんね」



 そう、静かに口にするのだ。

 相手の雰囲気がころころと変化するのは、正直やりにくい。それでも、決してついていけない速度ではなかった。

 力は互いに拮抗か、あるいはボクの方が上。

 あとは、いかにして隙を突いてクリムを出し抜くか――!



「――――!」



 それだけ、なのに。

 ボクは一度後方へと跳んで、相手から距離を取った。

 冷静にならなければならない。戦果を焦っては、負ける戦いだ。深呼吸をしながら、そう自分に言い聞かせる。

 クリムはそんなボクを見て、考えを察したらしい。


 くくく、と声を発するとゆっくり手を差し出してきた。



「冷静な判断力、果敢な決断力、状況への対応力――人間にしておくのは、実にもったいない。もしお望みになるなら、こちらの世界に案内しますよ?」

「冗談でも、たちが悪いですよ」

「でしょうね。くくく……!」



 褒められているのに、なぜだろうか。

 素直に受け取ることが、これほどまでにおぞましくおもえたのは。

 相手が魔族だから、というだけではなかった。きっとそれは、相手の底が見えない恐怖心が、ボクの中にあったから。

 感情に揺さぶりをかけられている。


 それに気付いてボクは一度、ゆっくり剣を下ろした。

 そして、クリムに訊ねる。



「貴方たちの目的は、なんですか?」



 すると彼女は、また小さく笑ってから言うのだった。



「さぁ……? 私はあくまで、契約者に協力しているにすぎませんから」

「………………」



 その言葉を聞いて、ボクは再び剣を構えて魔力を流す。

 どうやら対話の余地はないらしかった。

 だったら――。



「あら、どうやら時間のようですね?」

「え……」



 そう思って、足に力を込めた時だ。

 クリムはいきなり殺気を消して、そう言った。



「そちらには、怪我人がいるわけですから。今回はここで手打ちとしましょう?」




 そして、一方的に宣言すると闇の中に姿を消す。

 しかし最後に、彼女はこう言い残した。




「貴方とは、また戦うことになりますね」――と。





 気配が消えてから、ボクは剣を下ろした。

 そしてアルナのもとに駆け寄って、その傷を癒す。






 一つの戦いが終わった。

 しかし、どうにも気味が悪く思える。




「それよりも、いまは……」




 だけど、いまは魔族よりもエリオさんだ。

 ボクはそう思い直して、アルナに肩を貸すのだった。



 


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