3.アルナの敗北、クレオの魔法剣。
クリムの攻撃は変則的。
予想もしない方向からの、魔力による斬撃を加えられていた。
現状最高の布陣として、ボクは後衛としてアルナを援護。しかし彼の剣技をもってしても、クリムのことを完全に捉え切ることはできなかった。
「ちっ……! まるで蛇みたいに、ウネウネと……!」
ボクの治癒魔法で傷を癒し、相手との距離を測りながらアルナは言う。
まさしく彼の言う通りだった。クリムの魔法による斬撃は、蛇のように少年騎士の首を刈らんとする。一撃喰らえば致命傷。
それと分かる鋭さで、アルナを追い詰めていた。
「人間にしては、なかなかにやりますね。面白い……!」
しかし、真に恐ろしいのはクリムが手加減をしていること。
彼女は端々にそう言っては、攻撃に緩急を加えてきた。ボクの防御魔法でしのいではいるが、少しでも気を抜けば幼馴染の首は刎ねられる。
魔族との戦い。
それは、今までの戦いとは一線を画すものだった。
「でも、そろそろ本気を出してくださいませんか?」
「なに……?」
その最中だ。
クリムが突然に、動きを止めたのは。
「前衛には使えない剣士が一人。後衛の援護ナシなら、とっくに私の魔法でその命を奪われているはずなのに……」
彼女はボクをじっと見つめた。
アルナなど、世界最高の剣士と名高い少年には目もくれず。
ボクはその言葉の真意をあまり汲み取れなかった。なぜならこの布陣が、現状の最高到達点だと、そう考えていたから。
だが、それを間違いであると指摘するように。
「邪魔です、そこの雑魚は……!」
「なっ……!?」
「アルナ!!」
一瞬の出来事だった。
クリムの攻撃が、アルナの胴を捉えた。
少年騎士もなにが起きたのか分からない、そういった表情でうずくまる。
「大丈夫、アルナ!?」
「悪いなクレオ、ちょっとばかし油断した」
駆け寄って傷を看る。
幸いなことに、それほど深くはなかった。
だけど、血の量が多い。無理に動けば開いてしまうだろう。
「これで分かりましたか? そこの剣士」
「…………へっ」
クリムの見下した視線に、乾いた笑いで応えるアルナ。
だがすぐに、彼はボクを見て言った。
「クレオ、たぶん勝てるのはお前だけだ」――と。
そして、こちらの背中をトンと押した。
「アルナ……?」
「お前は認めないだろうけどよ、俺はクレオが世界で一番だと思ってる」
そう、言って。
振り返るとそこには、いつもの意地悪な笑みがあった。
ボクはそれを受けて決意を固める。幼馴染であり、剣技における目標とする相手にこう言われて、それを否定するなんてボクにはできなかった。
「分かった。この人倒したら、すぐに手当てするから」
「あぁ、早めに頼むぜ……?」
そう口にして、壁に背を預けたアルナ。
ボクはクリムに向き直った。
「お待たせしました」
「あら、礼儀正しいのですね」
そして、一言謝罪してから剣を構える。
真っすぐな戦いでは、アルナにも至らないボクの剣技だ。
だとすれば、この窮地を切り抜けるには――。
「やはり、そうきますよね……!」
――これだけだ!
構えた剣から、炎が巻き上がる。
魔法剣――それは、剣技と魔法を修めたボクにできる、アルナを超えるための一つの手段だった。




