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3.歴史は繰り返す。


万年2位(こちらの作品)は週一で頑張って更新します!!







 ――遥か昔。

 この世界には魔王と呼ばれる存在がいた。

 人間と対立し、魔物を操り、全面戦争が起こったのである。しかしその争いは、一人の英雄の手によって終結することになった。

 それは誰もが知る物語。


 アルナが語ったのは、表舞台では語られなかったこと。

 人間側に、魔王側へと寝返った存在があった事実だった。







「それで、リーディン家は裏切り者の末裔――ってこと?」

「あぁ、そうだ。クレファス家と並び立つ騎士の家系だったリーディン家の一部の者はその時、魔王側に情報を流していた。大した内容ではない、けどな」

「そう、だったんだ……」



 歴史学については少し自信があったが、それは知らない事実だった。

 おそらくはアルナが、クレファスに名を連ねるからこそ知っていること。王家に近かった自分にさえも秘匿され、忘れられた記憶だった。


 そして、それこそがクレファス家とリーディン家の禍根。


「本来なら取り潰しになり、没落してもおかしくなかったリーディン家。それが細々と続いたのには、なにか理由があるんだろうけど、俺はそこまで知らない」


 アルナは深く息をついてから、こう口にした。



「ただ、一つ確実に言える。今のリーディン家は――」




 眉をひそめながら。




「その時と、同じ過ちを繰り返そうとしている」――と。











 クラディオは薄暗い一室で一人、椅子に腰かけて窓の外を見ていた。

 そして、小さく笑みを浮かべてこう言うのだ。



「間もなく、我らを不当に蔑んできた者に粛清を――」

「あら、ずいぶんと悪い笑みだこと」

「――む、お前か」



 しかしその時、彼の言葉を遮るようにして割って入る者があった。

 クラディオが振り返ると、そこにいたのはエリオに何らかの手を加えた女性。仮面をつけて、うかがい知れるのは妖艶な口元だけ。

 彼女は彼に向かって笑みを浮かべると、こう口にした。



「自身の娘を使ってまで、復讐を果たしたいのかしら?」

「………………」



 それに、クラディオは黙り込む。

 しばしの沈黙の後に、再び窓の外を見るのだった。



「ふん、貴様には関係ないだろう? 所詮は――」




 そして、相手を蔑むように。




「魔族の女、なのだからな」――と。






 嫌みたらしく。

 しかし、それを受け取った女性は何故か嬉しそうに笑った。



 クラディオはその反応に不快感を露わにしたが、それでも彼女は笑い続ける。静かな部屋の中には、そんな不気味な時間が流れていた。




 


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