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2.クレファス家とリーディン家。









 ――ボクがエリオさんを探しに出ようとしたその時だ。

 予想だにしない来客があった。



「……よお、クレオ。少しだけ時間、いいか?」

「アルナ!? そのケガは、いったい……!?」



 その人物というのも、ボクの学友であったうちの一人。

 彼――アルナ・クレファスは、片足を引きずりながら宿に入ってきた。当然ながら、周囲の視線が彼に集まる。ボクはそれから庇うようにして、アルナに肩を貸した。すると、かつての学友はどこか自嘲気味な笑いを漏らしつつ、こう口にする。


「まったく、クレオには情けないところばかり見られるな……」

「え……?」

「気にすんな。少し、昔を思い出しただけだ」


 こちらが首を傾げると、アルナはまた笑った。

 そして小さく――。



「ここは人が多すぎる。お前の泊ってる部屋、良いか?」



 そう、頼んできた。

 ボクは頷いて、彼のことを部屋へと連れていく。

 するとそこには異変に気が付いたのだろう、キーンたちがすでに集まっていた。彼らは傷だらけのアルナを見て、どこか難しい表情を浮かべる。


「大丈夫だ、クレオ。ここからは自分で歩ける」

「あ、うん」


 それを察してか、アルナは小さく耳打ちをして背筋を伸ばした。

 大きく息をついてから、みんなにこう挨拶する。



「俺の名前はアルナ・クレファス。昨晩――」



 神妙な声色で。



「エリオ・リーディンの襲撃を受け、退けた者だ」――と。







「クレファス家と、リーディン家の因縁について……?」



 ボクの部屋に入って、アルナをベッドに寝かせた時。

 彼はおもむろに、そう口にしたのだった。


「あぁ、そうだ。クレオも知っているだろう? 俺の家系――クレファス、そしてリーディンは、長年争い続けてきた、ってことを」

「…………うん」


 こちらの問いかけに、天井を見上げながらアルナは答える。

 頷き返すと、視線だけで他のみんなを見やってから話し始めた。



「ここにいる全員、無関係じゃない。仲間のことだからな……」



 静かな口調で。

 どこか、御伽噺を始めるかのように。




「時は今から、千年以上前に遡る。そう――」




 とても大切で、非常に根深い因縁の物語を。




「英雄が魔王を打倒した、その時代の話だ」――と。



 


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