3.リーディン家の過去。
「すみません、クレオさん……」
「いや、いいよ。ここまできたら、決闘は避けられないんだから」
翌日――ボクは、ギルドで剣の手入れをしながらキーンと話していた。
相当に反省したらしい彼は、何度も頭を下げている。しかしながら、それはもうどうでも良いことだった。ボクには一点だけ気になることがあるのだ。
それを確かめたくて、エリオさんとの決闘を受けた。
一番は戦わずに確かめることだったのだけど。
「ねぇ、キーンは――リーディン家って、知ってる?」
「リーディン家、ですか?」
作業の最中に、ふとボクはキーンに問いを投げる。
するとエルフの青年は、首を傾げながら考え込んだ。そして数秒後に、左右に振る。
「すみません。私はそういった家系に詳しくなく……」
「ううん、それは仕方ないよ。だってリーディン家はもう、取り潰しになってるんだから。知らなくて当然なんだ」
「取り潰し、ですか……?」
「そそ、取り潰し」
ボクは剣を仕舞って言った。
「数年前のことなんだけどね? ――騎士の家系だったリーディン家。元々小さなところだったけど、ある時にね、とある一族と対立があったんだ」
少しだけ目を細めて。
ここから先は、あまり語られない悲しい現実だった。
「名門――世界最強との呼び声高い、クレファス家。そこと小さな諍いがあってね、最後は決闘をすることになった。その時に戦ったのが……」
「もしかして、エリオさん、ということですか?」
「互いに、次世代の代表を出す、という条件だったらしいからね」
これは、ボクが貴族だったから知っている情報だ。
リーディン家とクレファス家――両家の対立の歴史と、その結末を。果たしてリーディン家はクレファス家に敗れ、取り潰しが決まった。
エリオという名前に聞き覚えはないが、家名からして間違いない。
あの人が世界最高の剣士を目指す理由はきっと、そこにあるのだった。
「それをどうして、クレオさんが気にしてるんですか?」
「ん、えっと。そうだね……」
一通りを話し終えると、キーンが不思議そうにそう訊いてくる。
ボクは不味いな、と思いながら、こうはぐらかした。
「ちょっとだけ、知り合いが関係してる話だから、かな……?」
そう言うと、その知り合いがどこかでクシャミをしたような気がした。
想像して思わず苦笑い。ボクは立ち上がって、キーンに向かって言うのだ。
「それじゃ、行こうか! ――エリオさんの旅を終わらせてあげよう!」
それは決意の言葉。
一つの悲しみに終止符を打つための、決意の言葉だった。