表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第15章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/211

2.もしもの話。







「え、あの赤髪の女剣士さんの名前?」

「はい。一番に助けていただいたのに、お礼を言えていないので」


 宿のエントランスで雑談をしていると、不意にリナがそう訊ねてきた。

 ボクはとくに警戒することなく答える。



「あの人は、エリオさんだよ」――と。



 すると、びくりと少女の肩が弾んだように見えた。


「エリオ……」


 そして、何か思うようにして繰り返す。

 リナのそんな様子に、ボクはさすがにおかしいと思って首を傾げた。


「どうかしたの?」

「い、いえ! なんでもありません! ただ――」

「……ただ?」


 なので訊ねると、どこか沈んだ表情で彼女は言う。



「もしも、ですよ?」



 意を決したように。



「クレオさんは、自分の仲間が誰かの仇だとしたら――どうします?」



 そう、こちらを試すようにして。

 彼女の言葉にボクは逡巡し、顎に手を当てて考え込む。しばしの間を置いてから、その中でもこれしかないだろう、というものを選んだ。

 そして、慎重に言葉を探して伝える。


「まずは、理由を聞くかな。どうして罪を犯したのか、ってね」

「………………」


 リナはボクの話を黙って聞く。


「そして、それが取り返しのつかないことなら。一緒に手を取り合いたいと思うんだ。仲間って、そういうものだと思うから」

「それじゃあ、もし――」



 だが、そこで彼女は口を挟んだ。

 一つ息をついてから、まっすぐにこちらを見て言う。



「あのエリオさんが、私の姉を殺していたとしたら……?」――と。



 悲しい目だった。

 ボクはそんなリナの目を見つめ返して、頭を撫でる。そして、



「大丈夫だよ。仮にそうだとしても――」



 最大限の笑顔で、告げる。



「――エリオさんは、理由もなく人を殺める人じゃない」




◆◇◆




 ――私には、正直分からなかった。

 憎い感情があるのは確かだ。唯一の肉親を奪われた憎しみは、耐えられぬもの。

 それなのに、どうしてだろうか。私には彼女があの時、泣いていたように見えたのだ。涙は流さず、淡々とした口調だったにもかかわらず。


 あの人は、泣いていた。


 姉の亡骸を抱きしめながら、深い悲しみに包まれていた。


「お姉ちゃん……」


 形見として渡された、かんざしを見る。

 安っぽい装飾だが、とても大切な姉の生きた証明だった。


「本当は、なにがあったの?」


 私はそれに問いかける。

 街の中でふと立ち止まって、空を見上げた。

 もしかしたら、私はまだ何か大きな見落としをしているかもしれない。



「話してみよう、エリオさんと……」



 踵を返す。

 そして今一度、彼女と話すために宿を目指すのだった。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ