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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第15章

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1.エリオの記憶。








 ――あの子を手にかけた感触は、今でも鮮明に覚えている。

 肉を貫く生々しい音に、心臓を鷲掴みにされたかのような気持ちも。呼吸は止まって、目の前で起きたことを理解するのに時間がかかった。

 ガクリ、と身体をこちらに預けた少女。

 そんな彼女から出た言葉は、さらにアタシを苛める。



「私は、エリオさまに会えて良かったです」



 死の間際に、掠れるような声で少女はそう言ったのだ。

 そっとアタシの頬に触れた手は、撫でるようにしてからこぼれ落ちていった。

 熱が失われていく。大切な親友の、姉妹だとさえ思った少女から、生気が失われていった。呼応するようにしてアタシの身体からも、熱という熱が消えていく。


 ――あぁ、覚えている。

 忘れるはずが、なかった。

 忘れられるはずがなかったのだ。



 そう、彼女の名前は――。





「――――――セナ」


 エリオが目覚めると、そこにあったのは宿の天井。

 そして、何かを掴むようにして彼女は腕を伸ばしていた。口にした少女の影を掴み取ろうとしたかのように。エリオは、ただ手を伸ばしていた。


 涙が流れていた。

 しかし、彼女はそのことに気付かない。

 気づいていても、拭うことさえ忘れていたかもしれない。


「久しぶり、だな。――セナ」


 噛みしめるようにして、少女の名を繰り返す。

 まるでエリオには、セナという名の女の子の姿が見えているかのようだった。



「貴方の妹に会ったよ。とても明るくて、元気な子だった」



 ――セナに、そっくりな。

 そこまで口にして、口を噤むエリオ。


「アタシはやっぱり、許されない。戦わなければ、ならない」



 そして、次に口を開いた時。

 エリオの瞳からは感情が消え去っていた。




「アタシは――我は、ただ一つの剣」




 身を起こして、窓の外を見る。

 一羽の小鳥が羽ばたく。それを、彼女はただただ見送っていた。




 


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