3.獣人族の少女――リナ。
「助かってよかったね、えっと――」
ひとまずの戦闘を終えて。
ボクたちは、助けた獣人族の女の子と話していた。
「はい! 私の名前はリナといいます!」
「そっか。助けられて本当に良かった」
リナと名乗った少女は、やや大げさに頭を下げる。
獣人族の子の年齢はいまいち分からないけれど、見た目としてはマキと同い年ぐらいだろうか。小柄な身体に、少し大きめな弓を背負っている。瞳の色は金で、くりくりとした輝きが印象的だ。顔立ちはどことなく大人しい。
矢筒の中身は空になっていた。
おそらくは魔物に放って失くなってしまったのだろう。
「それにしても、どうして一人でこんな場所に?」
「あ、あはは。本当はもっと浅い階層で腕試しをしようと思っていたのですけど。迷っているうちに、どんどん奥に入ってしまった感じでして……」
「なるほど。迷子、というわけだな」
リナの言葉に、少しだけ笑いながらキーンが言った。
「キーンさん、その言い方は少し意地悪です」
するとそれにマキが、やや頬を膨らせながら反応する。
同い年くらいの女の子が相手だからだろうか。キーンは思わぬ牽制に、少しだけおどけた表情を見せた。ボクは二人のやり取りを苦笑いしつつ聞いている。そうしていると、不意にエリオさんがこう提案してきた。
「クレオ。とりあえず、この子を街に連れて帰らないか?」
「そうですね。そうしましょうか」
ボクはそれに賛成して、ひとまず来た道を戻ることにする。
その途中で、道の端に光るものを見つけた。
「これは……?」
「あ、それは私のです!!」
拾い上げると、それは特殊な髪留めのようで。
即座にリナが声を上げた。どうやら、逃げ回っている間に彼女が落としたものらしい。手渡すと少女はホッとした表情で、それをポケットの中に仕舞い込む。
目を細めて見つめる様子から、とても大切な品だというのが分かった。
「危なかった。これ、お姉ちゃんの形見なんです」
「……そっか。見つけられて良かったね」
「はい! ありがとうございます!」
見つめていると、リナはそう話してくれる。
それなら、なおのことここで発見できてよかった。
ボクは「次は落とさないようにね」と、一言かけてから歩き出す。
「姉の、形見……」
他のメンバーも、気にしない様子でついてきた。
だから気づかなかった。
「そうか。彼女は、あの子の……」
エリオさんだけが、しばしその場に立ち尽くしていたことを。




