3.多面的な評価。
アルナの言葉に、ボクは首を傾げてしまった。
改革とはなんだろう。そして、それが始まったからといって、ボクにいったいなんの関係があるというのだろうか。
もう、ファーシードではない、このボクに……。
「やっぱり、ピンときていない感じだな」
そんなこちらの心情を察したのか、アルナは笑った。
そしてボクの隣に腰かけて、大きく息をつく。昔を懐かしむように視線を上へ向けて、語り始めた。
「俺はずっと決めていたんだ。お前――クレオと出会ってからずっと、この国の制度やしがらみ、考え方を変えてやるってな。個々人の能力は、もっと多面的に評価されるべきなんだ、ってな……」
「…………」
それを聞いて、ボクはさらに分からなくなる。
多面的に評価されるとは、どういったことを示すのだろうか。
悩んでいるとアルナは静かに、急かさないようにして、こう口にした。
「クレオはまだ、自分の本当の評価を理解していない。色んな奴が、それこそその道のエキスパートたちが、お前のことを認めているんだ。今はまだ腑に落ちないし、信じてもらえないだろうけどな」
――まずは、俺を信じてほしい。
彼は真剣な眼差しで、ボクに向かってそう告げた。
「アルナを、信じる……か」
それを受けて、繰り返す。
もちろん彼のことを信じていないわけではない。
だがしかし、自分の力をみんなが認めているなんて、考えられなかった。だってボクはずっと2番手で、父にはいつも叱責されて、ついには見捨てられたんだ。
そんな自分が……?
「まぁ、考える時間が必要だよな。好きなだけ時間をやるから、決心がついたら俺の家を訪ねてくれ。その時に、より詳しく話す」
「アルナ……」
言って、世界最高の剣士は去っていった。
ボクはその後姿を見送る。そして、眉をひそめるのだ。
「一人じゃ、決められないよね。こんな大切な話……」
これはきっと、引き受ければ冒険者ではいられなくなるかもしれない話だ。
だから、慎重に選択しなければいけない。だとすれば、仲間のみんなに相談して、意見を聞いた上で判断しなければ。
そうでないと、大切な仲間に失礼だろう。
「よし! でも、後ろ向きになる必要はないよね!」
だが、暗い考えはそこで断ち切った。
前向きに考えよう。そうすればきっと、なにかが見えてくるはずだった。
「あれ、どうされたんですか? クレオさん」
「あぁ、キーン。ちょうど良かった。話があるんだけど――」
そんなタイミングで帰ってきたキーン。
ボクはひとまず、彼に意見を求めることにするのだった。




