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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第13章

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1.来訪者。






「ふぅ、今日はこれくらいにしておこう」


 エリオは滝の前での、一日の鍛錬を終えて帰り支度をしていた。

 クレオにはまだまだ及ばない。だが、それでも少しずつ前進している実感はあった。無理矢理に霧の中を進んでいたような、以前とは大きく違う。

 いまはもう、曖昧な目標ではない。

 クレオという、身近に手本とできる素晴らしい人物がいた。


「それに、少しでもいいから恩を返したいから……」


 彼のことを考えて、ふと自然にそんな言葉が漏れる。

 無意識に出ていたそれだったが、だからこそエリオの本心だろう。彼女はクレオという少年を、素直に尊敬していた。いつも輝いて見える、彼のことを。

 もしかしたら、それはエリオにとっては初めての感情かもしれなかった。


「ふふ。いや、それではマキに悪いな」


 そこまで考えて、気持ちを切り替える。

 少女に戻りかけた心を、剣士の心に入れ替えるのだ。

 自分はいまの関係で十分だと、嘘偽りなく、そう思っているのだから。


「さて、それじゃ――」


 ガリアに帰ろう。

 そう思って、荷物を抱え上げた。その時だった。



「こんなところにいたのか――エリオ」

「――――――!?」



 心臓をわしづかみされるような、そんな聞き覚えのある声がしたのは。

 エリオは声のした方を振り返った。すると、そこには一人の男性が立っている。短い赤の髪に、青の瞳。東方の国で着用されている衣服に袖を通していた。

 腰には剣を携え、腕を組んでいる。


「お前は、自分の立場を分かっているのか?」


 エリオを知る初老の男性は、まるで呆れたようにそう口にした。

 いまの彼女の在り方を責めるように。


「時間がない。いつまでも、好き勝手に生きられては困るのだ」


 そして、淡々と逃げ道をふさいでいく。

 対してエリオは瞳を震わせて、明らかに動揺している。

 狼狽える少女の、その感情には興味がないらしい。男性はあまりに冷たく失笑し、一歩、また一歩とエリオに迫ってきた。

 抵抗のできない相手に、剣を振り下ろすかのように。


「お前は、自分の役割を果たせ。分かったな?」

「………………」


 最後は、彼女の肩に手を置いて。

 静かな口調でそう言った。




「分かり、ました――」




 エリオは、泣き出しそうな声で答える。

 その表情はもう、先ほどまでのエリオのそれではない。




「――――――お父様」





 以前のエリオ、そのものだった。



 


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― 新着の感想 ―
[一言] エタってる…
[良い点] 面白くて一気に読めちゃいました( ̄▽ ̄)bこれからも頑張って下さい( *´艸`)
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