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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第12章

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62/211

1.アルナの道が決まった日のこと。







「くは、ギブ! 参った!!」


 ――アルナは思い出す。

 なんでもありの模擬戦において、自分がクレオに完敗した初めての日のことを。

 剣術の才覚では負けることを知らなかった。しかし、クレオの体術に魔法、そのほかにも色々な要素において、アルナは何をとっても及ばない。

 そのことが悔しく、しかし同時に嬉しくもあった。

 自分にここまでの屈辱を与える人間など、今までいなかったのだから。


「……ったく、ホントにクレオはすげぇよな」

「あはは、そんなことないよ。ボクは何をやっても二番だし……」


 汗を拭いながら、素直に相手を褒めるアルナ。

 しかしその相手は軽く笑うと、褒め言葉を社交辞令であるかのように受け取った。この態度に嘘や偽りがないのが、またたちが悪い。

 クレオは本気で自分は大したことがないと、そう思っているのだ。

 そんなことはない。彼は間違いなく、一流だった。


「自信持てっての……あー! それにしても、負けたなぁ!!」


 あるいは、それが分かるのは自分もまた一流だから、なのかもしれない。

 アルナはそんなことを考えながら、その場に転がって天を仰いだ。

 訓練場から見える空は、青く澄み渡っている。


「たまたま、だよ」

「どこがだよ。俺の完敗じゃねぇか」


 そうしていると、クレオもまた隣に転がった。

 あまりに嫌みのない言葉に、苦笑しながらアルナは答える。


「………………」


 そして、ふと考えた。

 いまはまだ、自分たちは学園生だ。

 しかしこの先、卒業後には国を背負って戦わなくてはならない。


「なぁ、クレオ……?」

「ん、どうしたの? アルナ」

「お前さ、学園を卒業したらどうするつもりだ?」


 自分は騎士団に入ることを切望されてた。

 その中で、エキスパートではないクレオのような生徒は、目を向けられない。この王都の選定基準は間違っている。彼こそが真に評価されるべきなのだ、と。

 アルナはそう思って、黙ったままのクレオにこう告げるのだった。


「俺は、お前の下で働きたい」――と。


 そこには、アルナの嘘偽りのない気持ちが表れていた。

 上に立つべき人間が、そこに至るべきだと。クレオは自分以外にも、リリアナやマリンにも認められている。それだけではない。

 すべての分野において、それぞれのエキスパートが認める存在だ。

 なのだとしたら、そんな存在こそが認められ、自分たちを率いるべきだった。


「ううん、それはできないんだよ。きっと、ね」

「…………そう、か」


 だがしかし、クレオにはその気はない。

 いいや、その可能性を考えることすらできないのかもしれなかった。リリアナは国王を説得してくれたが、多くの大臣たちなどは、理解を示していない。

 まだ、時間がかかる。


 そう――この、真の王者たる人物が、自分たちを率いるには。


「よし、決めた!」


 だからアルナは、大きく声に出して決意を固めた。


「え? なにを?」

「いいや、お前はその時まで待っていればいいさ」



 立ち上がって、アルナはクレオに微笑みかける。

 彼は決めたのだ。――自分もリリアナのように、国を内側から改革する、と。



「きっと、いつかお前の力がガリアには必要になる。それは間違いない」



 そのためなら、自分は頑張れる。

 尊敬を抱かざるを得ない、このクレオという少年のためなら。



「だから、その時は手を取ってくれ」



 アルナは、そう考えて笑った。

 いままで理由なく剣を振るってきた彼が、初めて見つけた主君たる人物。その人のためならば、どんなことでも苦ではない。

 まだ自覚のないクレオは首を傾げていたが、今はそれでいい。


 これが、アルナの道を決めた日の出来事だった。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] まさか アルナめっちゃ良い奴だったりする?
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