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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第11章

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2.アルナへの思い。







「はぁ――――――ッ!!」


 エリオさんが剣を振るう。

 洗練された、という表現が最も正しいと思われる一閃。ダンジョンの最深部付近にいる魔物も、彼女の剣術の前にはなす術もなかった。

 肉を切り裂かれた魔物は断末魔の悲鳴を上げる。

 魔素へと還ったそれを見て、ボクはひとまず息をついた。


「お疲れ様、エリオさん」

「ん――あぁ、クレオもお疲れさま」


 声をかけると、エリオさんは汗を拭いながら笑顔を見せる。

 中性的ながらも整ったその顔に浮かぶ、あまりに眩しい表情。出会った頃の思いつめた色は薄れており、純粋な性格が出てきているように思えた。

 そのことが垣間見えて、ボクは素直に嬉しくなる。


「それにしても、本当にエリオさんの剣術は素晴らしいですね」


 だから、思ったことをそのまま口にした。

 すると一瞬だけキョトンとして、彼女は照れたように頬を掻く。


「素晴らしい、か。ありがたいけど、アタシはまだ――」


 そして、自嘲気味にそう言った。

 ボクはエリオさんの頭の中に浮かんだのが、誰か分かった。


「…………」


 それは、世界最高の剣士と名高いアルナ。

 彼とは同じ学年だったのだが、一度も剣術で勝つことはできなかった。無軌道とも思える剣筋に、しかし的確な一撃。芸術的と、そう言ったら良いのかもしれない天性のそれは、見る者を魅了し、惹き付け、虜にするものだった。

 才能がすべて、ということは思わない。

 しかしながらアルナの剣術は、圧倒的な才能を感じさせるのだ。


「ねぇ、エリオさん?」


 そしてエリオさんも、その剣を見た一人。

 その力の前に心を一度は砕かれ、闇の中を歩いた経験の持ち主だった。

 だからこそ、ボクはいまの彼女の胸にある思いを知りたい。そう思った。


「アルナのこと、いまはどう思っていますか?」


 こちらから、この話を振るのは初めて。

 いいや。もしかしたら、話題として出るのも初めてだった。


「……アルナ、か」


 面食らったようにしてから、顎に手を当てて考え込むエリオさん。

 数秒の思考の後に、彼女はこう言った。



「いまはもう、比べるのをやめたよ。アタシは、アタシだからね」――と。



 そこには、少しだけ遠慮のような。

 迷いに近い何かがあるようにも感じられた。

 でも剣術に対して、少なくとも以前のような歪んだ感情はもっていない。そのことだけは、ハッキリとする言葉だった。

 ボクは安堵して、自然と笑む。


 よかった――と。

 だって初めて出会った時のエリオさんは、いまにも何かに押しつぶされてしまいそうなほど、追い詰められたような表情をしていたのだから。


「それじゃ、帰りましょうか!」


 そのことを確認できたのが、今日の一番の収穫だった。

 ボクは一つ頷いてからそう宣言する。




 エリオさんの、剣の道。

 それはきっとここから、またまっすぐ伸びていくのだろう。




 この時のボクは、それを信じて疑わなかった。

 そう、あの人が王都にやってくるまでは……。


 


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