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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第10章

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2.新しい家族、繋がれた未来。







 ――クリスの死から数週間が経過した。

 世間で騒がれるのは、カオン・シンデリウスの死だけだった。その裏にあった一人の少年による恋物語など、知られるはずもない。

 加えてマリンも、そのことを多く語ろうとしなかった。

 それでも今日、ボクたちは一つの墓前に立つ。


「お別れは、済んだの?」

「えぇ。わたくしもやっと、心の整理がつきました」


 ボクの仲間全員とゴウンさん、そしてマリン。

 目の前にあるのはクリスの眠る場所。シンデリウス家の裏庭に、ひっそりと作られた墓には綺麗な花が供えられていた。

 順番に祈りを捧げ終わった。

 その最後を務めたマリンの目は、ほんの少しだけ潤んでいる。


「もう少し、ゆっくりしても良いのに。家のことも大変だったのに……」


 そんな彼女を見て、ボクは思わず言った。

 シンデリウス家の当主は死んだ。それはすなわち、マリンが家督を継ぐということに他ならない。様々な手続きや、国王陛下への謁見。

 それらをこなすのに必死で、考える時間があったか分からない。

 だけどマリンは、静かに首を左右に振った。


「いいえ。これで、いいのですわ」


 そして、ボクの顔を見て笑みを浮かべる。


「きっとクリスも、わたくしが泣いているのを見たくはないと、そう思いますの。せっかく彼が未来を与えてくれたのですから」

「マリン……」

「それに、わたくしのガラじゃないですから!」


 言って彼女は、大きく伸びをした。

 これで一区切りだと、そう言うようにして。


「もちろん、クリスのことは生涯忘れることはありません。それでもわたくしは、だからこそ前を向かなければなりません!」

「……そっか!」


 最後に、それを聞いてボクも安心した。

 頷き返してチラリと、傍らにいる一人の少女を見る。それはマリンの妹――。


「マリンさん、お疲れ様なのです!」


 マキ、だった。

 今まで我慢してきた言葉を、柔らかい笑みに乗せて告げる。

 受け取ったマリンも、彼女の気持ちを理解している。微笑み返してその頭を撫でた。今この時、二人は本当の姉妹になったのだろう。

 ボクには、そう思えた。


「ねぇ、マキ? それに、ゴウンさん――提案がありますの」

「提案なのです?」

「どうしたっていうんだ?」


 次にマリンが、そう切り出す。

 マキとゴウンさんは、不思議そうに首を傾げた。

 そんな二人に向かって、シンデリウス家新当主はこう言う。



「わたくしと、この家で、共に暮らしませんか……?」――と。



 家族になってほしい、と。

 それは、今まで家族の温もりから遠かった、一人の少女の願いだった。


「マリンさん……!」


 断る理由など、ない。

 そう言わんばかり、マキはすぐにマリンへと抱き付いた。

 ゴウンさんはそんな娘の様子を見て、ただ静かに、そして優しく微笑む。



「ありがとう、ございます……!」




 木漏れ日の差す、シンデリウス家の裏庭で。

 一つの家族が誕生し、一人の少女の顔に愛らしい笑みが生まれた。



 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「わたくしと、この家で、共に暮らしませんか……?」 ある意味、この一言を心から口にする為に、数週間かけて心の整理をつけた…のかもしれないですネ。
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