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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第9章

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3.呪術の根源。







 立ち上がったカオンと向かい合って、ボクは呼吸を整えた。

 周囲に倒れる暗殺部隊の人々を見回して、彼はどこか感心したように言う。


「ほう……? 私の暗殺部隊相手に、手心を加える余裕があるようですね。どの者も、傷は負っているものの致命的なものではない」

「この人たちに罪はありません。裁かれるべきなのはカオン、貴方だけだ」

「ふふふ、たしかにそうでしょう。しかし――」


 堪え切れない怒りを見せるこちらに歩み寄りながら、腰元に携えたレイピアを抜き放つカオン。怪しい笑みを浮かべたままに、彼はこう続けた。

 手に持った細い剣に指を当てて、魔力を流し込みながら。


「果たして落ちこぼれ程度に、私を殺せるでしょうか?」


 口にしたカオンは剣を払った。

 直後に感じたのは、あまりに禍々しい気配。呪術特有の魔力が、ボクの方にまで漂ってくる。這うようにして流れるそれは、まるで足を毟り取ろうとしているように感じられた。そこに至って確信したのは、このカオンの呪術が他に類を見ないほど、強力であるということ。


「一つ、教えて差し上げましょう。呪術の仕組みというものを……!」

「くっ……!?」


 ボクは即座に身体強化の魔法を使用する。

 それとほぼ同時、カオンはレイピアを杖のように振るった。するとまるで、空間を裂くような黒い波紋がもの凄い速度で迫ってくる。

 横に跳んで回避。

 標的を逸したその波紋は、霧の如く消え去った。そう思った。


「甘いですよ? ――すでに貴方は、私の術中にある」


 だが、カオンがそう言った後。

 ボクの背後に、先ほどの波紋が出現した。そして同じように、この身を切り裂かんとする。次は回避しようにも遅すぎた。



「ちっ……!」



 少しだけ右腕を掠った波紋。

 またも霧散したが、ボクは自分の身体の異変に気付いた。


「なんだ、これ……!?」


 視界が歪む。

 目をこすっても判然としなかった。

 瞬時に毒かと思ったが、解毒の魔法は効かない。これはきっと、身体に害をもたらす類のものではなかった。

 だとしたら、人間のどこに影響をもたらすのか。

 ボクは少し考え、やがて答えを導きだした。


「……これは、精神汚染?」

「くくく。その通り……」


 身体的ではない怠さが、全身を覆い尽くす最中。

 カオンはにたりと笑った。


「呪術とは精神を蝕むもの。そして、その根源たるは――」



 そして、こう言うのだ。



「憎しみや劣等感といった、負の感情なのですよ」



 今までに出会ったことのないレベルの呪術の使い手。

 そんな彼の瞳には、どこの誰よりも鈍い光が宿っていた。


 


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