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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第9章

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2.クリス。







 少年から見て、カオン・シンデリウスは、鏡を見ているようだった。

 自らが仕えている相手を鏡というのは、多少なりともおこがましいとは思うが、そう感じざるを得なかったのだ。だから、心の底から彼を憎めないのも頷ける。

 カオンは、道を示してもらえなかった少年なのだ。

 そのような人と出会うことができなかった、悲しい末路の一つだと。


「………………」


 遠く離れた場所にて、椅子に腰かけるカオンを眺めて。

 クリスは、そう思った。


 自分には目標となる人がいた。

 マリン・シンデリウスという誰よりも努力し、目標に向かって邁進する、その道を示してくれた少女がいた。だからこそ、いまクリスはこちら側にいる。

 そのことは他でもない、彼が一番痛感していただろう。

 自分はとても恵まれていた、と。


「お嬢様――準備はよろしいですか?」

「え、えぇ……!」


 魔力の高まりを感じ、クリスは恩人たる大切な少女に声をかける。

 いまならきっと、倒れた少女の命を救うことができるだろう。傍らにいる少女――マリンは、それを確信させるほどに、研鑚を積んできた。

 クリスはそのことをいつも、影として見守っていた。

 だから、信じられる。


「では――」


 そして、少年は解呪を行った。

 瞬間に彼の心臓は、何者かに鷲掴みされているかのような痛みに襲われる。

 これはカオンによる『死の呪い』だった。なにかしら、どんな小さなことでも、カオンの思惑に反した場合に発動して命を削るもの。


 クリスの口の端からは、隠しきれない血が流れ落ちた。


「…………!? 貴方、その血は!?」

「気にしないでください、お嬢様。どうということは、ありませんから……!」


 マリンはそんな少年の姿に、大きく目を見開いた。

 しかし、それを手で制して治癒に専念するよう、指示を出すクリス。ここでミスをすれば、きっと彼女の心に大きなトラウマを残しかねないから。

 だから少年は命を削ってでも、己を犠牲にしてでも、意志を押し通した。


 優先順位を付けた。

 彼にとって一番はマリンであり、二番は――。


「けほっ……! けほ!」

「マキ……!」


 そう、マリンの愛する者たち。

 そこにクリスの入り込む隙間は、存在しないのだ。

 息を吹き返したマキを見て、少年は小さく微笑んで思う。


 ――これで良い、と。



「さぁ、それでは……。私の最期の役目を、果たしましょう」



 歓喜に沸くマリンとゴウンを見て、立ち上がるクリス。

 ナイフを手に持って、ゆっくりと主であった彼の方へと視線を投げた。

 まるで、鏡合わせだったカオンとクリス。愛するものを持ったか、どうか。それを喪ったか、どうか。一歩間違えれば、同じ道をたどったであろう二人。


「………………!」




 足を引きずるようにしながら。

 クリスは、その結末へと向かって歩き出した。


 


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