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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第8章

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4.彼にできる、唯一の。






「嘘ですわ……! こんな、こんなことって――」

「おい、マキ! 起きろ!! 目を覚ましてくれ!!」


 マリンとゴウンは取り乱す。

 最愛の少女は全身からその力を失って、だんだんと冷たくなっていくのだから。

 何度揺すっても、マキが目を覚ますことはなかった。事実が事実として突き付けられ、二人の心の中に大きな動揺を生んでいく。


「マキ、マキ…………!」


 ようやくできた親友だった。

 ようやくできた家族だった。


 一人の少年しか見ることが出来なかった彼女にとって、かけがえのない存在。そんな少女の命がいま、失われつつある。

 焦りを隠せないのは父であるゴウンも同じだった。

 彼にとっても、一度失ってしまった、大切な人との宝物。


「ナキ、マキを助けてくれ……!」


 だから、願うのだ。

 亡き妻に向けて、頼むから助けてくれ、と。

 だが、その祈りも儚く。刻一刻と時間だけが過ぎていく。そう、思われた――。



「お待たせ致しました。お嬢様……」



 その時だった。

 一人の少年の声が聞こえたのは。


「貴方は……?」

「私の名前など良いのです。いまは、その少女に治癒魔法を……」


 その少年は、ふらつく足で近寄ってくる。

 虚ろな目をしながら、それでも確かな目的を持って。


「で、でも……。マキはもう……!」

「諦めるなんて、お嬢様らしくありません。人一倍努力をしてきた貴方が、ここで諦めてしまっては、いけませんよ……」


 ふっと綺麗な顔に微笑みをたたえて、少年はこう続けた。


「それに、ほら――その少女の命は、まだ消えていません」


 傍らに膝をついて、マリンの手をマキの胸に当てながら。

 すると彼女の手に伝わってきたのは、本当に微かな鼓動だった。それはすなわち、マキの心臓がまだ、動きを止めていないという証拠。

 ハッとした表情になり、マリンは少年を見た。


「これ、は……」

「いまこの少女は、呪術による仮死状態にあります。私が貴方のナイフに施したそれによって、治癒では届かない場所に命を置いている」

「な、なぜそのようなこと……!?」


 語る少年に、思わず声を荒らげる。

 すると彼は本当に柔らかく微笑んでから、こう言った。


「私は、貴女に誰かを殺してほしくはなかった。その手を汚してなどほしくはなかったのです。だからせめて、反抗にならない範囲で力になりたかった」


 ――この呪術は、私ができる唯一の手助けです。


 マリンはそれを聞いて、息を呑んだ。

 この少年は、自身の過ちを未然に防いでくれていたのだと、理解して。


「この少女の傷は深い。呪術で仮死状態を保っているうちに、治癒魔法で傷をふさぐのです。その後に呪術を解けば、きっと大丈夫……」

「わ、分かりましたわ……!」


 マリンは少年から説明を受け、魔法を使おうとして。

 しかし、その前にふと、手を止めた。


「あの、貴方のお名前は……?」


 それに対して、少年はまた優しい笑みを浮かべてこう答えるのだ。



「名乗るほどの者ではありませんよ、お嬢様……」――と。



◆◇◆



 ボクは周囲に注意を払った。

 カオンは目の前にいる。それでも、もっと警戒しなければならないのは、そんな彼を守るように存在している暗殺部隊だ。

 直感が告げている。

 この暗殺部隊は、外に構えていたような奴らより、何倍も強いということを。


「…………いや、違う」


 この感覚は、違った。

 決して彼らの身体能力が優れているわけではない。

 しかし、その暗殺部隊から感じられる力は、一回り上だった。少し考えてからボクは、その正体に気付く。


「呪術、か……」


 それは、カオンの呪術によるものだと。

 その者たちの意識を完全に奪い、身体の限界を超えた動きを可能とする。当然ながら、そんな動きをさせられた人間は壊れてしまうだろう。そうなればきっと、捨てられる。ボクも多少は呪術に覚えはあったが、これほどまでのことはできなかった。


 いいや、もっと正確に言えば、してはいけないことだ。

 この男――カオンの倫理観は、壊れている。


「さぁて、まずは踊ってもらおうか!」


 そんな外道は、そう声を上げた。

 すると暗殺部隊が信じられない速さで、こちらを取り囲む。



「――ショーの始まりだ!!」



 そして高らかな宣言が、響き渡った。


 


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