4.一方その頃。
「それで、ダン・ファーシード公爵。なにか弁明は?」
「いや、ですね。リリアナ様――私めは公爵家の取り決めに従っただけで……」
――一方その頃。
ファーシード家では、ちょっとした事件が発生していた。
現在、当主であるダン・ファーシードは、一人の少女に詰問されて視線を泳がせている。というのもこの少女の正体、実は王都ガリアの王女であった。
その名もリリアナ・ガリア・アリテンシア。
桃色の短い髪に、金色の瞳をした美少女。少しばかり小柄で子供っぽいところが、また愛らしく思える彼女であるが、怒りに目を吊り上げる今の姿は鬼の如く。
そんなリリアナは、煮え切らない様子のダンに怒りをぶちまけた。
「この痴れ者! クレオを勘当するとは、何事ですか!?」
その内容というのも、彼が息子であるクレオ・ファーシードを勘当したこと。そして、この王都から彼のことを追い出したという事実についてだった。
王家と公爵家という間柄、そして同い年ということもあって、王女とクレオは仲が良かったのだ。そんな彼が自分の知らないところで、そんな目に遭っていれば怒って然るべきというところ。しかしながら、彼女にはそれ以外にも思うところがあるらしく、強く爪を噛んでいた。
「いいですか! すぐに、クレオがどこへ行ったのか捜索しなさい! もし、それが出来なければ公爵家は――」
そして、その感情のままにこう告げる。
「取り潰しです!!」
ダン・ファーシードはそれを聞いて青ざめ、大きくうな垂れるのであった。
◆
リリアナは城に戻って、そのまま自室に閉じこもった。
そしてベッドに突っ伏してしまう。
「はぁ……。本当に、誰も分かっていません」
少女はぼそり、そう呟いた。
大きな落胆が彼女の中に、渦巻いている。どうして、他の者はクレオのことを認めようとしないのか、と。たしかに魔法学において、クレオは2位であり、リリアナが首席を獲得していた。王女でありながら王宮魔法使いとしての地位も与えられている。
しかしそんな少女からしても、クレオという少年は別格だった。
なぜなら彼は――。
「まぁ、しばらく待つとしましょう。ですが、忘れたとは言わせません」
リリアナはおもむろにベッドに腰かけながら、そう言った。
窓の外を見て息をつく。昔を思い出しているようであり、同時に瞳には、明らかな対抗心を燃やしていた。
「あの日の約束、守ってもらいますからね。――クレオ」
王女のその言葉を聞いた者はいない。
しかし、聞いたところで意味など分からなかっただろう。
それは彼女とクレオだけの秘密であり、重要な約束事だったのだから。
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