3.親友であり、姉妹。
ちょっとだけキツイ展開。
明日以降で挽回します。
「わたくしは、一人じゃない……?」
クレオの背中を見ながら、マリンは小さくそう呟いた。
それは、思いもよらない言葉。自分は誰にも認められていないと、そう思い込んでいた彼女には、まるで信じられないものだった。
それでも、他でもない彼――クレオの言葉だ。
マリンの中で、彼への信用は一線を画している。
「みんなを、信じて……」
次いで浮かんできたのは、親友である少女の言葉だった。
マキはどんな思いでこう言ったのだろう。いまも生死の境を彷徨っている彼女は、自分のことを親友だと言ってくれた彼女は、どんな思いで……。
「わたくし、は……!」
強く歯を食いしばった。
胸の奥底にある呪縛から解き放たれようと、マリンは必死になる。
「一人じゃ、ない……!」
そしてもう一度、そう口にした時だった。
なにかが、聖女の皮を被せられた普通の少女の中で、弾け飛んだ。
「ゴウンさん、少しどいて下さいまし!」
「お、おう……!」
――迷うのは、後でも良い。
ただ、いまは動かなければ絶対に後悔する。
「謝罪は後で致します。ただ、少しだけ猶予を下さい……!」
マリンはそう言って、マキへと治癒魔法を施した。
淡い光が幼い少女を包み込む。自分は決して、本当の聖女ではない。それでも治癒魔法に関しては、人一倍の努力を積み重ねてきた。
その理由は何だったか。
たしか、幼い日にクレオが転んで怪我をしたから、だったか。
「マリン、さん……」
「マキ……?」
そう考えていた時だった。
マキが、薄らと目を開けてこう口にしたのは。
「マリンさんは、僕のお姉ちゃん、だったですね……」
「マキ、喋らないで……!」
「すごく、嬉しいです。僕ずっと、お姉ちゃん欲しかったですから」
「お願い、お願いだからもう何も……!」
マリンはマキの手を取る。
「えへへ……。でも今はちょっと、眠たいですね……」
「え……?」
その次の瞬間だった。
「マキ……?」
幼い少女。
彼女の可愛らしい義妹であり、親友の手が。
「うそ、ですわよね。マキ…………?」
――スルリと。
まるで、細かい砂のようにこぼれ落ちたのは……。




