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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第8章

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2.マリンを繋ぐ鎖。







「マキ、どうし…………て?」

「マリンさんは、ほんの少しだけ臆病さん、なのです」


 自身のナイフが幼い少女を貫いたことを覚り、マリンは喉を震わせた。

 そんな彼女に、少女は小さく笑いかける。頬を優しく撫で、震える瞳に慈愛の光を湛えて。痛みがあるはずなのに、そこにあるのはマリンへの慈しみだけだった。

 そして、少女――マキは、こう口にする。


 そっと、微笑んで。


「大丈夫なのです。もっと、みんなを信じて……」


 直後にマキは崩れ落ちた。

 父の腕の中で、苦しげな表情を浮かべながら。



◆◇◆



「――マキっ!!」


 ボクは三人のもとへと駆け寄って、腰を落とした。

 マキの受けた傷は深い。止めどなく血が溢れだしており、ゴウンさんの負ったそれよりも、致命的であるというのはすぐに分かった。

 とっさに治癒魔法を施すが、それでも気休め程度。

 すぐに視線を持ち上げ、呆然と立ち尽くすマリンに声をかけた。


「マリン……! 早く、マキへの治癒魔法を!!」

「え…………?」


 するとようやく我に返ったのか、彼女は息を呑んだ。

 そして、自らの手に付着した少女の血を見て、大きく肩を震わせる。


「わたくし、は……また……!」


 また――。

 また、逆らえなかった。

 その場にへたり込んだマリンは、瞬き一つせずに大粒の涙を流す。


「分かっているのに……!」


 ボクは彼女の呟きの意味を知っている。

 彼女の中にある呪術は、その大半がカオンへの恐怖を根源とするものだ。同時に、自分は認められていないということへの恐怖。

 そのロジックをすべて、クリスから聞いた。


 つまるところ、マリンは寄る辺なきことが恐ろしいのだ。

 聖女としてしか自分は認められていないと考え、カオンの生み出したそれに縛られ、奴に逆らうという選択肢が取れなくなっている。


 そして、それはマリン自身も分かっていた。

 己の弱さを。あまりに不安定な、その心の在り方を。


「わたくし、は……!」


 だから、自らを責める。

 普段の強気な態度は、それの裏返しで。

 周囲を遠ざけ、拒絶されることを拒絶して、泥沼になっていく。


「マリン――」



 でも、ボクは知っていた。

 だから、こう声をかけるのだ。



「大丈夫だよ」――と。



 それは、無条件の肯定だった。


「え……?」


 それにようやく、反応を示した彼女の目を見る。

 ボクは、静かに微笑みかけた。


「安心して。ボクは、マリンが頑張っていたのを知ってるから」

「クレオ……?」


 小さな細い手を取って伝える。



「みんな、知ってるんだ。マリンは――」



 それは、当たり前のこと。

 だけども、今まできっと誰も、彼女に伝えなかったこと。



「マリンは、一人じゃないから」




 己を孤独と勘違いしている少女。

 己を孤独と思い込まされている彼女に、それを解く一言を。



「クレ、オ……?」

「さぁ、終わりにしよう? マキのことは、任せたよ」



 口を開けたままのマリンの肩に触れ、ボクは立ち上がった。

 そして、カオンに向き直る。



「カオン・シンデリウス、ボクはお前を許さない。許せるはずがない」


 そのままに、真っすぐ感情をぶつけた。

 すると奴は可笑しそうに笑って、こう言うのだ。



「マリンは用済みだ。三文芝居にしては、面白かったぞ?」

「………………」



 ボクは短剣を手にして、言葉なくカオンを睨みつける。

 静かな時間が、そこには漂っていた。


 


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