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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第7章

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6.自由からはほど遠く……。

風邪から復帰しました。

ご迷惑をおかけしました<(_ _)>







「ほらほらほらほら! どうしたんだい、兄さん!! 自慢の剛腕で、マリンのことをへし折れば済む話じゃないかぁ!!」

「くそ、このゲス野郎が……!」


 顔を伏せながらも、的確に急所を狙ってくるマリンのナイフ。

 それを回避しながらゴウンは舌を打った。広間に響き渡るカオンの耳障りな甲高い声を聞き、思わず我を失いそうになるが、彼は必死にこらえる。

 ここで手を出せば、それこそ以前と同じ道をたどってしまうから……。


「お父さん……!」

「マキは下がってろ! ……カオンの呪術のせいで、マリンは見境ねぇからな」

「そんな……」


 ゴウンの言葉に、マキは息を呑んだ。

 十中八九、彼の見立ては正しい。マリンを突き動かしているのは、呪術による精神汚染に他ならなかった。それは恐怖による束縛であり、支配。

 舞うようにナイフを振るう度、マリンの目元からは雫が跳ねていた。

 意思に反する故に、泣いているのだ。


「マリンさん……!」


 父に襲いかかる彼女を見て、マキは口元を押さえる。

 しかし、数秒の間を置いた後に、勇気を振り絞ったようにこう叫んだ。


「マリンさん――」



 それは、昨日のこと。

 マキに向かって、消え入るような声で誓ったこと。



「貴方は、もう迷わないのではなかったのですか!? 自分の意思で前に進みたいって、言っていたではないですか!! マリンさん、貴方は――」



 それを、声を大にして言うのだ。




「もう、自由になれるはずなんです……!!」




 胸の前で拳を握り締めて。

 大粒の涙を流しながら、マリンに訴えかける。


「ほう、自由――か」


 だが、それに応えたのは彼女ではなかった。

 カオン・シンデリウス――すなわち、すべての元凶。



「この家を出て、お前を認める者がどれだけ減るか分かっているのか? なぁ、そうだろう――」



 ニタリと笑って、彼はマリンをこう称した。



「『偽りの聖女』よ」――と。




◆◇◆




「そんなこと、あってたまるか……!」


 ボクは一人、シンデリウス家の広間を目指して、一直線に駆けていた。

 気は急いていく。無理矢理にそれを抑えつけてみるが、それ以上に湧き上がってくる感情があった。

 それは他でもなく――怒り。


「カオン・シンデリウス――お前は、どこまで外道に堕ちる……!?」


 シンデリウス家現当主への、これ以上ない怒りだった。

 マリンのことだけでも、今までにないほどに怒りを感じたというのに。先ほど相対したクリスから聞かされた話は、さらにそれを底上げした。



「死の呪い――呪術の中でも、禁忌とされるものを……!」



 クリスの身にかけられていたのは誰もが畏れ、禁じた術。

 簡単に言えば、自身に逆らった者の身体を蝕み、死に至らしめる術だった。クリスは己の意思に反して、カオンの指示に従っていた傀儡に過ぎない。

 いいや、傀儡なんて生温い。

 それはそう、道具以下の扱いだった。


『私は後から追いかける。少しばかり、命令に反し過ぎた……』


 少年はそう言って、その場に崩れ落ちた。

 ボクは彼が呼吸をしているのを確認してから、広間を目指して走り出す。小さな会話で、クリスという少年の想いを受け取った。


 だからこそ、ボクは怒りに震える。

 純粋な人々の心を弄び、利用し、捨てる彼のやり方に……。



「カオン……!」



 そして、ボクは見た。

 その男の歪んだ微笑みを。

 だが、それより前に視界に飛び込んできたのは――。







「マキ……!?」



 少女――マキがその身で、マリンのナイフを受け止めている姿。

 ゴウンさんの腕の中に崩れ落ちていく、その姿だった。


 


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