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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第7章

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1.カオンとクリス。







 カオンはクリスの報告を受けて、ほくそ笑んでいた。

 憎きゴウンに致命傷を与え、手駒であるマリンの回収に成功したのだから。そこにはもはや父親としての顔はなく、歓喜に震える悪魔のそれがあった。

 彼にとってゴウンの死は念願。

 幼少期から比較され続け、謀略の果てにシンデリウスを追い出した後も、彼が存在しているという事実だけで気が狂った。


「く、くくくく――――あ、はははははははははは!」


 暗い広間に、憎悪に支配された男の笑い声が響く。

 人間のそれとは思えないほどに醜悪な声は、聞くに堪えないものだ。それはカオンの前で片膝をつき、頭を垂れる少年にとっても同じ。

 主にバレないように、彼は眉間に皺を寄せた。


 ――クリスの中に、カオンへの忠誠などない。


 ただ今はまだ、その時ではない。

 それ故に、真に愛している者さえも利用しているのだった。


「………………」


 しかし、表情を歪めるのを堪え切れない。

 覆面を外し、その美しい顔を晒したクリスは、血が滲むほど強く唇を噛んだ。そこにあるのは苦渋と言って違いないだろう。

 彼はいま一時とはいえ、愛する少女――マリンを苦しめているのだ。

 それがいかに悔しい選択であるかは、想像に難くない。


「良いぞ、クリス。――下がれ」

「…………失礼いたします」


 ひとしきり笑い終えたカオンは、そう少年に告げた。

 その声を聞いた瞬間に、クリスは今にでもカオンの首を刈り取ってやろうかと、そう考える。しかしそれは出来ない。もし今、手を出せば周囲に控える他の暗殺者によって殺されてしまう。


 クリス一人の力では、覆せない。

 必要なのは、圧倒的な力。それは、一つで良い。

 ただ一人――あの少年が動いてくれれば、形勢は一気に逆転するだろう。


 だから、今は我慢の時だった。

 クリスはその顔から感情を消し去り、踵を返す。そんな彼にカオンは言った。


「くくく――期待しているぞ、クリス」

「……………………」



 少年は答えずに立ち去る。

 人でなしから向けられる期待などに、興味などなかった。彼にとって最も尊いのはある日一度だけ、マリン・シンデリウスから向けられた、笑顔の記憶だけ。


 ただ、それだけなのだから……。



 


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