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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第6章

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2.謎の少年。








「二人とも、ゴウンさんは……?」

「今は眠っていますわ。それでも、傷が想定以上に深くて……」


 リビングに戻ってきたマリンに訊ねると、神妙な顔で彼女はそう言った。


「お父さん……ぐすっ」

「マキ……」


 マキは先ほどからずっと泣いている。

 あの日、決闘の際に負ったそれよりも重体だった。その状態でここまで逃げてきたことが、奇跡であるとも言えるだろう。一命は取り留めたとマリンが説明してくれたが、それでもマキに与えた動揺は計り知れないものに思われた。


「やっぱり、昨日の……?」


 しかし、申し訳ないが今はそこに気を割いている暇はない。

 マキのことはマリンに任せて、ボクは昨日の出来事を思い返していた。声の主はこう言っていた――『かつてシンデリウスを去った者と、その家族を守ってみせよ』、と。つまりはゴウンさんとマキ、この二人のことだった。


「………………」


 しかしそうなると何故、あの声の主はゴウンさんを逃がした……?

 そんな疑問が浮かぶ。言葉の通りにするなら、確実にトドメを刺すはずだった。逃がすようなヘマはをするだろうか。そしてそうなってくると、可能性として挙げられるのは、これ自体がなにかの布石であるということだ。


 ボクはそこまで考えてから、マリンにこう告げる。

 どうやら、来客のようだった。


「少し、外に出てくるよ」

「クレオ……?」

「大丈夫。それより、マキのことをお願いね」


 心配そうにこちらを見る彼女に、そう言って外に出た。

 すると、玄関先に立っていたのは――。


「キミが、昨日の……?」

「あぁ、そうだ。改めて挨拶させてもらおう――私は、クリスという」


 一人の、少年と思しき人物だった。

 闇に紛れるような黒装束に、銀の髪が映えている。

 紅い眼差しだけが覗く覆面をしており、その顔立ちはハッキリとしなかった。小柄なクリスは、恭しく礼をした後にこう口にする。


「ファーシードを廃嫡されし者、クレオ。貴様はシンデリウスを去りし者――ゴウンと、その娘マキを守る。その誓いに嘘はないな?」

「…………どういう、意味だ?」


 違和感を覚えるその言い方に、ボクは眉をひそめた。

 そして問いを返したが、それにクリスが答えることはない。静かに懐からナイフを取り出し、姿勢を低くした。ボクは腰元から、同様に護身用の短剣を出す。

 そこから先は、会話などなかった。


「――――――」

「――――――」


 一息に、互いの距離を詰める。

 刃と刃がぶつかり合い、高い金属音を発した。それを二度、三度、四度――数十回に渡って繰り返し、ようやく呼吸をするように、動きを止める。

 最初の位置に戻り、クリスは笑ってこう言った。


「クククク、面白い。私の速度についてこられるとは……」


 それはどこか、満足しているようで。

 ボクはまだ彼が本気を出していないことに気付いた。


「これならば――」


 次いで、少年は意味深に呟く。

 後半はあまりに小さく、聞き取れなかった。ボクは素性の知れない相手との戦いに、ある種の不気味さを覚える。

 それ故に気を抜くことはなかった。

 だけど――。



「――――今のは!?」



 他に、敵の気配などなかった。

 そのはずなのに――。



「二人の、悲鳴……!?」




 家の中から、たしかに少女たちの悲鳴が聞こえた。



 想定外の事態。

 だが、これがシンデリウスの闇と向き合う、その始まりだった。


 


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