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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第5章

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3.闇からの声。








「二人とも、無事に帰れているかな?」


 ボクは途中までマキとマリンを送り届けて、宿へと向かって歩いていた。

 すっかり日の落ちた王都。しかし、酒場などが多いこの地区は、活気にあふれている。まだ未成年なので酒は飲めないけれど、見ているだけで楽しかった。


「ファーシードの家にいたら、まず関わることのなかった世界だよなぁ」


 ボンヤリと、赤ら顔の男性が踊っているのを眺めつつ。

 そんな、少し前の自分と今を比べてみた。勘当された時はどうなるかと思ったが、好きに生きようと決めた現在となっては、ちっとも怖ろしくない。

 むしろ毎日が新鮮で、輝いて感じられた。


 それは、きっと今のマリンも同じ。

 だけれども、ボクには少しだけ気になることがあった。そして――。


「…………どなたですか? さっきから、ボクをつけているのは」


 もう一つの懸念材料。

 ほんの少し喧騒から離れた場所に差し掛かった時、ボクは暗がりからこちらを見てくる人物に声をかけた。路地裏の入り口付近。そこから、乾いた声がした。


「よもや、気付いていようとは、な」

「それは、気付きますよ? 一週間ずっと、監視されているんだから」

「ハハハハハ――面白い。私の隠密行動を察知するとは、良い目をしている」


 それは、おそらくは女性のそれ。

 でもハッキリとしない。認識阻害の魔法でも使っているのだろうか。もしかしたら、路地裏にいるというのも、こちらの勘違いかもしれなかった。


 その気になれば、それを破ることもできる。

 けれどもそれ以上に、ボクはその人物に訊きたいことがあった。


「目的は、ボク――ではない、ですね? おそらくは、マリン」

「クククク。なるほど、頭も回るらしい」

「彼女に、何の用ですか?」


 それはその本来の目的、そして理由。

 違和感があったのは、一週間前からだった。マリンがボクのもとを訪れたあの日から、この人物の視線が時折に感じられたのだ。

 しかし、襲ってくる様子はない。

 そのため今まで泳がせていたのだけど……。


「教えられないな。――ただ、一つ言えることがある」

「言えること……?」


 首を傾げると、声の主は面白そうにこう言った。



「貴族ではなくなったお前はもう、シンデリウスには関わらない方が良い」



 まるで、こちらを嘲笑うように。


「それは、どういう意味ですか?」

「ファーシード家から廃嫡されし少年よ、命が惜しければ大人しくしていろ。なにが起きても、手出しをするな。もし、なにかすれば――」


 一度そこで言葉を切って。



「お前の命は――ない」



 ハッキリと、そう告げた。

 ボクはそれを受けて、しかし恐怖心は抱かない。


「………………いえ」



 むしろ、こう宣言した。



「もしマリンや、それ以外の仲間に手出しすれば――」




 ほんの少し、怒りを孕ませて。




「ボクは、貴方たちを許しません」――と。




 遠くの喧騒だけが、その場を支配した。

 数秒の間を置いてから、それは不意に掻き消される。



「アッハハハハハハハハハハ! 愉快、愉快愉快愉快!! ――面白い。面白いぞ、クレオ! この私の忠告を無視するだけでなく、切って返すか!!」



 声の主の哄笑とも取れる笑い声。

 ボクは眉間に皺を寄せ、それを聞いていた。

 すると次第にそれは収まり、声の人物は最後にこう口にする。



「ならば、見せてもらおうか……」



 それは、ある種の犯行予告。

 宣戦布告と、そう思えるものだった。



「かつてシンデリウスより去った者と、その家族を守ってみせよ」



 


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