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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第4章

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4.一方のマリンさん。







「こんなところでは、死ねませんわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」


 マリンは走っていた。

 ダンジョンの中層付近の只中を、死に物狂いで走っている。そこにいつもの令嬢然とした風格などなく、ただ一人の人間として、生存本能のままに駆けていた。

 後方に迫りくる魔物の群れ。

 少女は両手を大きく振り、目を血走らせ、口から白い息を吐いていた。


 どうしてこうなったのかというと、それは数刻前にさかのぼる。





 ギルドへ冒険者登録に訪れたマリンは、そこでこんな話を耳にした。


「クレオは、もう最下層付近まで行っていますのね。それなら彼に認めてもらうには、わたくしも同じところまで到達しなくては……!」


 もはや当初の目的などどこへやら。

 新時代の聖女と呼ばれる彼女の頭の中には、あの少年に認めてもらうこと。それしかなくなっていた。そのために家を飛び出し、冒険者登録までして、この結論。

 支離滅裂ながらも、マリンの目にはクレオのことしか映っていなかった。

 そのため、受付の男性の忠告も受けずに飛び出したのである。


「大丈夫ですわ、わたくしなら。――新時代の聖女を舐めるんじゃないですわ!」


 必死に呼び止める人々にそう一喝して回った。

 そして、その結果が――。





「よく考えたら、わたくし攻撃魔法はからっきしでしたわぁぁぁぁぁっ!」


 ――これである。


 ろくな攻撃手段を持たずにダンジョンへと足を運べば、当然こうなる。上層の魔物ならいざ知らず、中層となるとそれなりの魔物が集っていた。

 初歩魔法で撃退できる相手も、限度というものがある。

 もっとも、それでも基礎魔力の高いマリン。初心者にしてはなかなかの戦闘を行えていたのだが、恐怖心がいよいよ勝り、この有様だった。


「死にたくない死にたくない死にたくない……っ!?」


 ちらりと後方を見ると、そこには大型のオークやワイバーン。

 そいつらが赤い眼を輝かせ、群れを成して迫ってくる様子は恐ろしいという他なかった。捕まればどんな目に遭わされるか、分かったものではない。

 それを考えて、マリンの身体は一気に冷えていく。


「クレオ、助けてください! お願い致しますわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 号泣しながら、あの少年に助けを求める聖女。

 その姿は、母親に玩具をねだるような子供にしか見えなかった。


「誰か、助け――――きゃっ!? ぐほぉ!!」


 そして、いよいよ脚にも限界が来たのだろう。

 マリンは道を曲がり切れずに前方へと、数回転してから壁に激突した。鼻血を垂らしながら起き上るものの、どうやら足を挫いたらしい。

 紫色に変色したそこに、力がまったく入らなかった。


「は、早く治癒魔法を――――って、追いつかれてしまいましたわ」


 すかさず治癒を試みるが、そうしている間に追いつかれてしまう。

 壁を背にした少女を取り囲む魔物たち。ジリ、ジリと距離を詰めてきていた。そんな人ならぬ者たちを見て、少女の脳裏によぎったのは……。



「あの頃を、思い出しますわね……」



 それは、クレオと出会う前の記憶だった。

 自らを蔑むように見てくる人々の目。それはたしかに、人ならぬ者のそれに似ていた。両親以外で、自分を人間として扱ってくれたのは、彼以外にいない。

 しかし、そんな少年も今はいなかった。

 助けてくれる者など、ここには――。


「わたくしは、なにをやっているのでしょうか……」


 少女は自嘲気味にそう笑った。

 自分勝手に行動、暴走して、その結果がこれである。

 こんな自分なんて、誰も手を差し伸べてはくれないだろう。


 それはそう、あの少年でも――。




「大丈夫? ――マリン」

「え…………?」




 そう思った瞬間だった。

 急に聞こえてきた断末魔の中に、ハッキリとそんな声がある。

 いつの間にか閉じていた目を開くと、そこにいたのは間違いなく――。



「クレ、オ……?」



 あの頃のように、手を差し伸べる少年だった。


 


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