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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第4章

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2.クレオの選択。







「そ、それで? どうして、マリンがここにいるのかな……」

「どうしたも、こうしたもありませんわ。ファーシード公爵の脳足りんのせいで廃嫡されたクレオを、連れ戻しにきたに他なりません」

「あ~、やっぱりそういうことなんだ……」


 ボクは談話室の椅子に足と腕を組んで座る少女を見て、思わず苦笑いした。

 なんとなくそんな気はしていたけど、どうやらマリンはボクをファーシードの家に連れて戻るつもり、らしい。というか、父が脳足りん扱いって。

 まぁ、それは今どうでも良いので、置いておこう。


「でも、どうしてマリンがボクを?」


 気持ちを切り替えて訊くと、彼女はこう答えた。


「それは、わたくしがクレオの婚約者だか――」

「うん。それは違うね?」


 ボクは食い気味に、笑顔で否定する。

 断っておくが、昔馴染みなだけで彼女との間にそんな取り決めはない。

 マリンに悪いが言っておくと、いつ頃からか、彼女の方から一方的にそう言い出したのだ。学園時代はそれで、何度となくネタにされた。


「むぅ……」


 こちらの言葉に、子供っぽく膨れ面になるマリン。

 普段は大人ぶっているのに、こういう時だけ妙に子供っぽいのだ。


「それで、戻りますの? どう致しますの?」

「それは――」


 そして、そのままの口調で彼女はそう言った。

 つまるところ、ボクがファーシードの家に帰るかどうか、という話。しかしながら、廃嫡を言い渡したのは紛れもない父――ダンであった。

 マリンが戻るように計らったとして、変わりはない。

 それに何よりも――。


「………………」


 ボクはちらり、後方に控える仲間たちを見た。

 三者三様。キーンは何かを考えており、エリオは少し怒っている。そしてもう一人、マキは不安げに瞳を潤ませていた。

 そんな彼らを見て、ボクは決心する。

 そもそも、好き勝手に生きる、って決めた時に戻る選択肢は捨てたのだ。


「マリン。申し訳ないけど、ボクは戻らないよ?」

「そんな……! どうしてですの!?」


 こっちの発言に、ハッとした表情になるマリン。

 目を丸くする彼女に、ボクは笑顔でこう答えるのだった。


「ここにいるのは、ボクの大切な仲間たちなんだ。そんな彼らを捨てていくなんてこと、出来やしないんだよ」

「…………クレオ」


 それを聞いて、マリンは息を呑む。

 そしてうつむき、なにかをボソボソと口にした。


「分かり、ましたわ……」


 それが終わると、小さくそう漏らす。

 分かってくれたのか、とボクは胸を撫で下ろした。マリンはふらりと立ち上がり、出入口の方へと歩いていく。

 その力ない後ろ姿を見送って、ふっと息をつくのだ。


「あの、クレオさん。良かったのです、か……?」

「マキ……」


 するとその時、ついに仲間の一人が声を発した。

 マキは心配そうにこちらを見て、そう問いかけてくる。ボクは――。


「良いんだよ。いまのボクは、ただのクレオだから」


 そんな少女の頭を優しく撫でるのだった。

 これで、ひとまずは一件落着。そう思って、改めて一日を始めるのだった。



◆◇◆



「納得いきませんわ……!」


 マリンは、自宅に戻ってそう口にした。

 思った通りに事が運ばなかったのもそうだが、クレオがあの冒険者たちを選んだのが気に食わなかったのだ。付き合い自体は、自分の方が長いのに。

 それを思うと、胸の奥が締め付けられるような感覚があった。


「……クレオ。わたくしは、どうすれば……!」


 ――傍にいたい。

 その気持ちが、大きくなっていく。

 そして、ついにそれは抑えきれなくなった。結果として、



「そうですわ……!」



 マリンは、こんな決断を下すのだった。




「わたくしも、冒険者になればいいのですわ!」




 何とも安直な思考。

 しかし、これが後に大きな火種の一つになること。

 それをこの時のマリンは、知る由もなかったのだった。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] うん! こういう直球の聖女様、結構好き。
[気になる点] 戻らないと言ったクレオの台詞に疑問符「?」は不適だと思います。きっぱりと宣言するのではなく、優柔不断な言い方に思えます。
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