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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第3章

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2.マキから見たクレオ。






 ――ゴウンとの戦いからしばらくして。

 翌日、久しぶりに父である彼のもとへ帰るマキは、手料理の練習をしていた。

 今まで自分に親はいないのだと、そう思って生きてきた彼女にとって、すべてを語り合ったゴウンという存在はとても大きなもの。

 そんな父に対して、少しでも親孝行をと思っていたのだ。


「それに、いつかは必要になるかもです!」


 そう小さく言って、少女はエプロンの紐を結んだ。

 というのも、将来の夢は優しいお母さんになることと、そう豪語するマキ。今からでも料理を覚えていかないと間に合わないと考えていた。

 そして同時に、頭の中に浮かんだ相手は父ではなく――。


「…………ほみゅ」


 顔が熱くなるのを感じつつ、少女は準備に取り掛かった。

 まずは簡単なレシピに沿って、たまご料理から。そう思って、慣れない手つきで調理を行っていく。そうやって格闘すること十数分……。


 出来上がったのは、見事なまでの黒い塊だった。


「………………」


 酒場の一角。

 無理を言って借りたそこで、マキは大きくうな垂れた。

 こんなことでは、父はともかくとして『あの人』は落とせない。そう――。


「はぁ、こんなことでは――」

「あ、いたいた。マキ、お疲れ様」

「にゃうぅ!? ク、クレオさん……!?」


 その時だった。

 背後から、いま一番聞きたくない少年の声がしたのは。

 思わず失敗料理を隠すようにして、振り返るとそこにはやはりクレオ。彼は大慌てのマキを見て、小首を傾げながら歩み寄ってきた。

 そして、ひょいっと彼女が隠したものを確認してしまう。


「あ、もしかして練習してた?」

「あうぅ。見ないでくださいぃ」

「あはは! 大丈夫だよ、誰だって最初はこんなものさ」


 するとクレオは、何てことなしにそう言うのだった。


「そう、なのです?」

「そうだよ。ボクも、料理人を目指してた時は失敗ばかりさ」

「…………へ? クレオさん、料理人目指してたんです?」

「まぁ、ね。結局そこでも二番手だったけど……」


 その意外な過去に、マキはきょとんとする。

 すると少年は、何かを思い返すような表情を浮かべるのだった。


「まぁ、とりあえず見てて? 基本から教えるから」

「は、はい!」



 しかし、すぐに気持ちを切り替えたのか。

 自前のエプロンを取り出し、手慣れた様子で準備をした。そして――。



「ほわぁ……!?」



 マキは、目を疑うのだった。





「あれは、どこかの高級なレストランで出される、なにかでした……」


 経験不足、語彙不足な少女は大きくうな垂れてそう呟いた。

 キーンとエリオは顔を見合わせて、苦笑い。


「美味しかったんだ」

「はいです。ほっぺた落ちると思いましたです」


 複雑な表情で応えるマキ。

 しかし、不意にキーンには気になることが浮かんだ。


「そういえば、マキがゴウン以外に料理を作りたい相手って誰なんだ?」

「ふえぇ!?」


 ――ボンっ!

 瞬間、マキの顔が真っ赤になった。

 それを見たエルフの青年は、何事かと首を傾げる。そんな二人に助け舟を出したのは、もう一人の仲間であるエリオだった。

 彼女はくすり、少しだけ笑んでからこう口にする。


「あまり詮索してやるな。そこはそれ――乙女心、というやつだ」

「はぁ……。乙女心、か」


 それを受けて、キーンは無理矢理に納得した。

 そんな彼を見てから、今度はエリオが一つ咳払いしながらこう切り出す。



「それでは、次はアタシからの報告、だな」



 神妙な顔になり、彼女は語り始めるのだった。


 


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