1.それは秘匿された物語。
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あとがきから!!
――異世界から現れた英雄の物語。
神によって導かれた彼の功績に、文句をつける者はいなかった。されど光強ければ、必ず影は深くなっていくものである。
そして同時に、人間とは都合の悪い記憶を忘却する生き物だ。
勝者にこそ歴史を語る権利が与えられ、敗者の主張は黙殺される。
なにも、特別なことではない。
なにも、変哲なことではない。
それはどこにでもある出来事。
人間が連綿と繋いできた歴史である、という証明だった。
◆
「魔族の歴史……それを公爵家が、守っていた?」
「はい、そうです。公爵家は英雄の末裔であり、人魔戦争における真実の担い手。英傑たちの活躍を称賛する御伽噺ではなく、その裏で流れた血の記憶を繋ぐ役割があるのです」
淡々とした口調でそう話すエスカリーテ。
キーンはあまりに大人びた少女の様子に思わず息を呑み、しかしすぐに首を左右に振った。そして至って冷静に疑問を投げかける。
「……でも、クレオさんはどうして知らなかったんだ…………?」
彼はそのような話を微塵も口にしなかった。
それどころか、自身が英雄の末裔であることすら知らなかったのだ。
いかに人々が忘却したとて、彼には跡継ぎとしての責務と責任がある。父であるダンもその話をしていないのは、違和感を覚えざるを得ない。
だとしたら、この情報はいったいどこから出てきたのか。
青年がそう考えていると、エスカリーテは一度深く息を吸い込んだ。そんな少女の仕草を確認して、キーンは意を決したように訊ねる。
「エスカリーテ。もしかしてだけど、キミは――」
以前から感じ取っていた不自然。
おそらくは、身内ではないからこそ察知できた違和感を。
「本当は、魔族なんじゃないか……?」――と。
その言葉に、エスカリーテは一瞬だけ呼吸を止めた。
キーンの予想はまさしく、リリアナの推察と同じ結論だったのだから。そして、その予想は紛うことなき真実を射抜いていた。
だが、いったいどこで気付いたのか。
エスカリーテの中に潜む魔族には、大きな疑問だった。
「どうして、だ……?」
リリアナのように、以前の自分を知っているわけでない。そして、彼女のように徐々に変貌していったエスカリーテという少女を知っているわけでもない。
だとすれば、完全なる部外者である青年は何をもって結論付けたのか。
何故、バレたのか。
エスカリーテが声を漏らし、眉をひそめているとキーンが言った。
「いいや、そう思ったのは今さっきだよ」
「な、に……?」
それはあまりに軽い推論。
思わず絶句する少女に対して、キーンは――。
「だって、いまのキミはとても――」
そっと、彼女の髪を撫でながら。
どこか心配そうな声色で、こう告げたのだった。
「とても、悲しそうだから……」――と。
そこにあるのは、根拠や証拠ではない。
キーンが示したのはただただ、彼女の機微を感じ取ったものに過ぎない。それにもかかわらず、この青年は真実を言い当ててみせたのだ。
そして、その上で少女の皮を被る魔族を心配している。
どこかの少年のお人好しが移ったかのような、そんな声色だった。
「……バカ、だな。エルフとは、これほど愚かな種族だったか?」
それを受けて、エスカリーテの中にある魔族は声を震わせる。
人間とはまた異なる存在であるキーンならば、御しやすいと踏んで接近した。それなのに、いつの間にか完全に内側に入られてしまっていたのだから。
これほどまでに、馬鹿な話があるだろうか。
「良かったら、事情を話してくれないか……?」
「………………」
ベッドに横並びに腰かけたキーンは、魔族にそう語り掛けた。
どうして、エスカリーテという少女の中に入り込んでいるのか。そしてどうして、公爵家の中に潜入をしていたのか、を訊ねたのだ。
とかく、優しく。
青年は相手の苦労を労わるように、そう問いかけた。すると、
「あぁ、話そうか。でも、その前に――」
「え……?」
魔族は小さくそう口にしてから。
そっと、キーンの肩に身を預けるようにした。そして、言う。
「……すまない。少しだけ、こうしていて良いかな」――と。
まるで、今までの『孤独』を埋めるかのように。
泣き出しそうな声に、キーンは何も答えずにただ優しく頭を撫でた。
これは彼ら二人だけの秘密の時間。
異なる種族の間に、たしかな絆が生まれた瞬間だった。
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