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万年2位だからと勘当された少年、無自覚に無双する【WEB版】  作者: あざね
第32章

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180/211

1.それは秘匿された物語。

(*‘ω‘ *)新作の応援もよろしくね!!

あとがきから!!








 ――異世界から現れた英雄の物語。

 神によって導かれた彼の功績に、文句をつける者はいなかった。されど光強ければ、必ず影は深くなっていくものである。

 そして同時に、人間とは都合の悪い記憶を忘却する生き物だ。

 勝者にこそ歴史を語る権利が与えられ、敗者の主張は黙殺される。



 なにも、特別なことではない。

 なにも、変哲なことではない。



 それはどこにでもある出来事。

 人間が連綿と繋いできた歴史である、という証明だった。









「魔族の歴史……それを公爵家が、守っていた?」

「はい、そうです。公爵家は英雄の末裔であり、人魔戦争における真実の担い手。英傑たちの活躍を称賛する御伽噺ではなく、その裏で流れた血の記憶を繋ぐ役割があるのです」



 淡々とした口調でそう話すエスカリーテ。

 キーンはあまりに大人びた少女の様子に思わず息を呑み、しかしすぐに首を左右に振った。そして至って冷静に疑問を投げかける。



「……でも、クレオさんはどうして知らなかったんだ…………?」



 彼はそのような話を微塵も口にしなかった。

 それどころか、自身が英雄の末裔であることすら知らなかったのだ。

 いかに人々が忘却したとて、彼には跡継ぎとしての責務と責任がある。父であるダンもその話をしていないのは、違和感を覚えざるを得ない。


 だとしたら、この情報はいったいどこから出てきたのか。

 青年がそう考えていると、エスカリーテは一度深く息を吸い込んだ。そんな少女の仕草を確認して、キーンは意を決したように訊ねる。



「エスカリーテ。もしかしてだけど、キミは――」



 以前から感じ取っていた不自然。

 おそらくは、身内ではないからこそ察知できた違和感を。




「本当は、魔族なんじゃないか……?」――と。




 その言葉に、エスカリーテは一瞬だけ呼吸を止めた。

 キーンの予想はまさしく、リリアナの推察と同じ結論だったのだから。そして、その予想は紛うことなき真実を射抜いていた。

 だが、いったいどこで気付いたのか。

 エスカリーテの中に潜む魔族には、大きな疑問だった。



「どうして、だ……?」



 リリアナのように、以前の自分を知っているわけでない。そして、彼女のように徐々に変貌していったエスカリーテという少女を知っているわけでもない。

 だとすれば、完全なる部外者である青年は何をもって結論付けたのか。


 何故、バレたのか。

 エスカリーテが声を漏らし、眉をひそめているとキーンが言った。



「いいや、そう思ったのは今さっきだよ」

「な、に……?」



 それはあまりに軽い推論。

 思わず絶句する少女に対して、キーンは――。



「だって、いまのキミはとても――」




 そっと、彼女の髪を撫でながら。

 どこか心配そうな声色で、こう告げたのだった。





「とても、悲しそうだから……」――と。





 そこにあるのは、根拠や証拠ではない。

 キーンが示したのはただただ、彼女の機微を感じ取ったものに過ぎない。それにもかかわらず、この青年は真実を言い当ててみせたのだ。

 そして、その上で少女の皮を被る魔族を心配している。

 どこかの少年のお人好しが移ったかのような、そんな声色だった。



「……バカ、だな。エルフとは、これほど愚かな種族だったか?」



 それを受けて、エスカリーテの中にある魔族は声を震わせる。

 人間とはまた異なる存在であるキーンならば、御しやすいと踏んで接近した。それなのに、いつの間にか完全に内側に入られてしまっていたのだから。

 これほどまでに、馬鹿な話があるだろうか。



「良かったら、事情を話してくれないか……?」

「………………」



 ベッドに横並びに腰かけたキーンは、魔族にそう語り掛けた。

 どうして、エスカリーテという少女の中に入り込んでいるのか。そしてどうして、公爵家の中に潜入をしていたのか、を訊ねたのだ。

 とかく、優しく。

 青年は相手の苦労を労わるように、そう問いかけた。すると、



「あぁ、話そうか。でも、その前に――」

「え……?」



 魔族は小さくそう口にしてから。

 そっと、キーンの肩に身を預けるようにした。そして、言う。




「……すまない。少しだけ、こうしていて良いかな」――と。




 まるで、今までの『孤独』を埋めるかのように。

 泣き出しそうな声に、キーンは何も答えずにただ優しく頭を撫でた。




 これは彼ら二人だけの秘密の時間。

 異なる種族の間に、たしかな絆が生まれた瞬間だった。




 


下記のリンクから飛べる新作も、是非に!


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