10.戦いが終わって、少年はただ立ち尽くす。
意味深で草。
「え、どうして……?」
ボクは自分の目の前で起きていることが、まるで理解できなかった。
だって意識が途切れたような感覚があったと思ったら、次の瞬間には――。
「は、はは……やっぱ、お前は英雄の子孫で間違いねぇ……!」
――ボクの腕は、オドの胸を貫いていたのだから。
おびただしい量の返り血を浴びて、崩れ落ちる彼の身体をただ支えた。あれほどの力を誇った相手が今ではもう、呼吸をするのもままならなくなっている。
意味が分からない。
何も、状況がまるで掴めない。
ボクはどうやって、どうして彼に勝った……?
「そんな顔するな、クレオ。お前は強く、オレ様は弱かった。それだけだ」
「それ、だけ……?」
膝をつくオドから腕を引き抜き、こちらもまた腰を落とす。
困惑するボクとは対照的に、彼はとても満足げであるように思えた。
「これは、オレ様のワガママだった。もう一度、アイツと戦いたい、ってな」
「『アイツ』って……?」
ただ訊き返すしかできないボクに、オドは静かに語る。
魔力が解けていく光に包まれながらも、彼は最期にこう言い残した。
「クレオ、良く聞け。お前は英雄の子孫であり――」
ただただ、感謝に満ちた声色で。
「神の寵愛を受けた子だ」――と。
◆
「クレオさん! 大丈夫ですか!!」
キーンがぐらつく足場を警戒しつつ、クレオのもとにたどり着く。
するとそこにいたのは、少年ただ一人だった。
「クレオ、さん……?」
だが、様子がおかしい。
鮮血に染まったクレオは、ただそこに立ち尽くしていた。
キーンの呼びかけなど聞こえていない。呆然自失と、ただそこにいた。
「なにしているんですか、逃げましょう!」
「…………キーン……?」
その希薄な存在感に不安を覚えつつも、キーンは彼の方を掴んだ。
するとようやく、クレオは相手の存在に気付いたらしい。今まで見たことがないほどに呆けた表情で、キーンのことを見つめ返していた。
おかしい。
これは、いったい何があったのか。
キーンがそう考えていると、クレオは小さくこう口にした。
「ボクはいったい、何者なんだろう」――と。
誰にも分からない。
真相は闇の中、ただ少年は取り残されたのだった。
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