9.少年、無自覚に無双する。
タイトル回収、なのかな。
「くそ、何が起きてるんだ!?」
「キーンさん、敵がまだいることを忘れないで!!」
尋常でない揺れに、さすがのキーンも動揺が隠せない。
しかし、そんな彼を叱責したのはリリアナだった。王女の言う通り、目の前には依然として死霊術師の存在がある。気を抜けば魔獣、あるいは死者を操り襲い掛かってくるだろう。
そう考えるのが普通だった。だが、
「いやいや。これで、目的は達せましたよ」
「なんですって……?」
彼は短くそう言うと、静かに一歩後退する。
逃げようとしているのか。
そう思われたが、死霊術師は三人に向かってこう提案した。
「あちらに行かれてはどうです? 少年の安否が心配でしょう」
「…………!」
つまり、この戦いは手打ちにしよう、ということ。
状況を鑑みれば、三対一の状況で逃がすのは間違いであるように思われた。しかしながら、これは異常事態だとリリアナも察知したのだろう。
そして、それは三人の総意でもあった。
「仕方ありません。まずは、クレオの無事を確認しないと……」
「分かりました」
「…………」
リリアナにキーン、そしてエスカリーテの三名はそう確認を取り合う。
その上で、死霊術師にこう言った。
「それでも、貴方とはいずれ決着をつけます。……必ず!」
逃がしておくわけにはいかない。
このような外道を野に放つということは、それだけ民へ危機が迫るということ。王族として、リリアナは承諾しかねる問題だった。
だからこそ念押すように言うと、相手は小さく笑って答える。
「えぇ、近いうちに。また、会うことになるでしょう」――と。
そして、彼は姿を消した。
気配が完全に失せたことを確認してから、リリアナは叫ぶ。
「キーンさん! 早く、クレオのもとへ!!」
「……はい!」
キーンは一目散に駆け出した。
◆
「ぐ、あ……! 面白れぇ、面白れぇじゃねぇかァ!!」
オドは歓喜していた。
一度終わった命であるにもかかわらず、またも強者と立ち会えたこと。そして終わりゆく命をもってして、自身の力がどこまで通用するのか確かめられることを。
相手はおそらく無自覚、という状態だが。
それは些事であり、ただ純粋に強者を求めるオドにとっては関係なかった。
「こいよォ! こいよォォォォォォ!!」
だから、オドは叫ぶ。
虚ろな眼差しで、おおよそ人間らしからぬ動きを見えるクレオに向かって。ただ純粋な力と力のぶつかり合いを演じようと、そう主張し続けた。
決して勝てないと分かっていても。
戦闘狂であるオドにとって、現在は生涯二度目の至極の時間だった。
「おらあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そして、その時間は――。
「が、かは……!!」
クレオの拳が、彼の心の臓を貫いた瞬間に終わりを迎えた。
「あ、れ……?」
オドの意識は遠退いていく。
少年の唖然とした表情を見ながら、彼は笑みを浮かべたのだった。
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