8.無自覚に。
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「ほう。さすがは王都の最大戦力と名高いお方だ!」
「……もう、終わりですか?」
魔獣の群れを一掃し、リリアナは死霊術師にそう訊ねた。
その戦闘はまさに圧巻の一言だろう。彼女が腕を薙いだとしたら、それに合わせて獣が両断された。魔法を詠唱するまでもなく、敵の用意した駒は消え失せる。
死霊術師も、魔獣を生み出そうとすればまだできたはずだ。
しかし、それさえも無意味であるかのように思えるほどの力。
「やはり、桁が違う……!」
それを後方から、防御魔法に専念しつつ見守ったキーンは感嘆の声を漏らした。
自身の才とは方向性こそ違う。クレオから教わったことがあるとしても、しかし憧れに似た感情を抱いてしまうのだ。
自分もこのように戦えたなら。
自分にも、もっと力があったなら。
そう考えて幾度も夜を数え、夢をみたことか。
「でも、良いんだ。私には、私の戦いがある……!」
だが、思い直して意識を集中させた。
その時である。
「な、なんだ……!?」
「これは……!」
――轟音が、地響きと共に鳴り響いたのは。
おそらく、それが発生したのはクレオが向かった先でのこと。
キーンが困惑に表情を歪める横で、しかし声を上げたのはエスカリーテだった。
「まさか、そんな……」
「エスカリーテ……?」
そんな彼女の様子に気付いて、彼は眉をひそめる。
そして、クレオの無事を祈るのだった。
◆
「いいじゃねぇか。やっぱり、こうじゃないとな……!」
「………………」
額から血を滴らせ、オドがそう言って見つめる先にはクレオがいた。
だが、様子がどうもおかしい。
まるで別人だ。
ゆらりと力なく立つ姿は、吹けば飛んでいきそうに思える。
しかし、肌で感じる威圧感は先ほどまでとは桁が違っていたのだ。
「ただ、意識は『無』になっちまう、か」
「………………」
クレオの瞳は虚ろだ。
もしかしたら、意識がないのかもしれない。
それでも少年はしっかりと、そこに立っていた。
「今さら話しても無駄かもしれねぇが、お前はあらゆる意味で『無自覚』なんだよ。自分の力に対しても、そして――」
オドはそんな相手に、こう語る。
「その戦い自体にも、な……!」――と。
直後、クレオの姿が掻き消えた。
零から百へと、一気に速度が上昇する。そして、
「け、やっぱり強いじゃねぇか!!」
「――――――!」
先ほどまでオドのいた場所に拳を叩きつけ、大きく陥没させたのだった。
凄まじい音が鳴り響き、周囲が瓦解し始める。
「いいぜ。ここからだ……!!」
常軌を逸した速度と力。
それを目の当たりにしてオドは、しかし笑みを浮かべて言った。
「さぁ、殺し合いを始めようや!!」
――『無自覚に無双』せんとする少年に向かって。
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