6.リリアナ VS 魔獣。
「キーンさんは防御魔法に集中して! 前線には私が出ます!」
「リ、リリアナ王女!? 何を言って――」
「いいから、貴方は貴方にできることを!」
「…………!」
迫りくる魔獣を前に、リリアナはどこからか取り出したナイフを手に構える。
キーンが防御魔法に専念を始めるのを確認すると、彼女も何かしらの魔法を唱えた。すると次の瞬間、リリアナの姿が目の前から掻き消える。
何事かと目を疑ったキーンだが、すぐに王女の策に気付いた。
「なるほど、身体強化魔法……!」
それというのは、リリアナが自身の身体にバフをかけたのだということ。
身体強化の魔法は簡単なものから、後に反動のくる強力なものまで、様々ある。おそらく彼女が使用したのは、最も簡単なそれに違いなかった。
しかし、分かってはいても驚かされるのは――。
「……本当に、才能の塊だ」
そのような簡単な魔法でも、リリアナの潜在魔力量に応じて効果は飛躍的に上がっていた。普通に戦えばまず、敵わない相手でも。
今のリリアナにとっては取るに足らない、とさえ思えるのだ。
その証拠に、彼女はナイフ一本で黒き獣の身体を切り裂いていく。靄となって消えゆくそれらを見て、思わずキーンは息を呑んだ。
やはり、この少女は規格外の存在なのだ、と。
「く、くくく……! 面白い女だ!」
「それはどうも。ただ、本当に悪趣味ですね」
だが、そんな彼女の表情は晴れなかった。
キーンは愉快そうに笑う敵の男と、王女を見やった後に原因を知る。
「あ、れは……人間!?」
魔獣が消え去り、黒い靄の中から現れたのは人間の死体だった。
しかも、死後どれだけ経過しているのか分からない。それほどまでに、至るところが腐り落ちていた。周囲には明らかな異臭が漂い、キーンは不快感に眉をひそめる。
だが、その中でもリリアナは冷静に男へ問いかけた。
「貴方は、誰に雇われているのですか?」――と。
すると男は、小さく笑んで応えた。
「なに、お前の予想は当たらずとも遠からずさ」
「………………」
対して彼女は黙り込む。
キーンは二人の会話が判然とせず、ただ唾を呑み込むしかできなかった。沈黙の最中に、彼はふとエスカリーテを見る。すると、彼女は――。
「エスカリーテ……?」
「え……」
「いや、とても険しい顔をしていたから……」
怒り、だろうか。
あるいは憤り、といっても良かったかもしれない。
エスカリーテは男を睨みながら、しかし別の何かを見据えていた。キーンにはそのように思え、尽きぬ疑問に気分の悪さを覚える。
だが、そう考えている暇すら与えられなかった。
「……さて。ではもう一度、踊ってもらいますか」
「く……!?」
男の言葉と同時。
生まれたのは、やはり黒い靄だった。
死体の数々はそれに包まれ、ゆらりと影のように立ち上がる。次第に形を作り出したそれらは、先ほど同様に魔獣となった。
しかし、どうやら先ほどよりも数が多い。
「どこからか、死体を調達したのですか……?」
「なに。どうせ山賊の命だ、安いものさ」
「…………!」
リリアナの言葉に、相手はあっさり種を明かした。
キーンはその外道なやり方に、なにかを言いかけて思いとどまる。
「では、まだまだ遊ぼう! 彼が満足するまで!!」
男――死霊術師の言葉と同じくして。
黒き魔獣たちは、一気呵成にリリアナへと躍りかかった。
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