1.ミトスの村。
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ミトスの村は、彼の言った通り山沿いにあった。
山から流れ込む水が豊かな土地の作物は、きっと美味しいに違いない。しかしながら、今に限ってはそれを楽しむ余裕はなかった。
足を踏み入れてすぐに気付く。
人の気配が、ちっとも感じられないのだ。
「それどころか……」
「クレオさん。……この臭いは」
思わず、眉間に皺を寄せてしまう。
腐った肉の臭い。日の昇らない時刻に着たのが幸いしたか、足元に転がっているそれを直視せずに済んだ。ただ、間違いないだろう。
この村に、ミトス以外の生き残りはもう……。
「う、うぅ……!」
「ミトス……」
肩を震わせ、涙を湛える少年を可哀想に思う。
彼にとってはきっと、青天の霹靂、というやつに違いなかった。
いきなり村が山賊に襲われたかと思えば、すべてを奪われ蹂躙され、辛うじて逃げたかと思えば何もかもが終わっていたのだから。
それを可哀想だ、と。
哀れだと、そう言わずになんと言うのか。
「ねぇ、クレオ……?」
「どうしたの、リリアナ」
「ここにあるご遺体に、少し違和感を覚えませんか」
「違和感……?」
そう考えていると、声をかけてきたのは幼馴染だった。
彼女は感情を抑えながら、程近くにあった村人の遺体を見ている。それを追ってボクも確認すると、そこには腐敗の進んだ肉塊があった。
これではもう、何者かさえ判別できないだろう。
しかし、たしかにリリアナの言う通りだ。
「変、だね……」
「そうでしょう? これは――」
そして、その核心を彼女が突こうとした時だった。
「あん……? 誰だァ、てめぇら!?」
「山賊!?」
薄暗い視界の先に、物音もなく一人の男が現れたのは。
見るからに賊だという彼は、ボクたちを認めるとすぐに得物を手にした。
そして、腰を低くして構える。
どうやら簡単に対話はできそうにないらしい。
「ミトスは下がってて!!」
「は、はい!」
ボクはとっさにそう叫んで、剣を引き抜くのだった。
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